時事雑記帳31「Nスペ「プーチンのロシア2:失われし人々の祈り」思い出エッセイ〔170〕

 「NHKスペシャル:揺れる大国 プーチンのロシア2失われし人々の祈り~膨張するロシア正教~」(3月2日22時)。NHKスペシャル・ホームページのタイトルです。新聞の番組紹介の副題は“厳寒モスクワ・超格差の実態”“膨張する教会”“涙の再出発”

前夜の「プーチンのリスト」に続く「プーチンのロシア2」です。

ロシア正教独特の洗礼場面と共に、「今世紀ロシア正教は甦った」とナレーション。
キリル総主教は、プーチン、メドベージェフを始めとする1億6千万人の信者のトップに立つ。

ソビエト連邦崩壊で生じた人々の心の崩壊をロシア正教が埋めた。国民の7割が信徒である。
「あらゆる困難からロシアを救うのはロシア正教」と一人の老婦人は語る。

世界の中で異質の存在感を持つロシア。
軍事、外交、経済、何れの面でもロシアは欧米と一線を劃して突き進んでいる。

ロシア正教は新たな時代の救いとなった。

氷点下20℃のモスクワ。
ホームレスへの食事サービスに男達が集まる。超格差社会が生み出した(光景である)。
ロシアでは6人に一人が最低水準以下の生活をしている。

食事の合間に古着や薬が配られる。
年金生活者も来ている。

Aさん(男性、67歳)は、年金1万5千円で、薬や食事も事欠く。
モスクワ南の狭い共同アパートに住む。
役所に勤めていたが、退職後ここに住む。

具合が悪いが、手術代、7万7千円が払えない。
「昔は平等だったが、今、人は狼のように咬みつく」Aさんは言う。
一人娘は寄り付かず、訪ねて来る者もいない。部屋は(散らかり放題)。

教会は24時間受付の電話相談をしている。一日50件の訴えがある。
必要に応じて、病院や施設を紹介する。

物乞いをする老婆の姿も映し出される。

歴代のロシア皇帝にとって、ロシア正教は国家の基盤だった。
革命後、教会は破壊された。
ソ連崩壊後、価値観の転換を迫られる。
2000年のプーチン大統領就任以後、政権の庇護を受け、正教は拡張して行った。

深夜のモスクワ、教会がパトロール・カーを走らせる。
凍死寸前のアル中患者を収容する。
ロシア全土には、220万人の中毒患者がいて、男性の平均寿命を59歳に(押し下げている)。

アルコール依存症と家族の崩壊を多くの人が語る。
Bさん(44歳、男性)はアル中で刑務所入り。その後修道院に入り、6年の空白の後、家族のところへ帰る。
今はトラックの運転手をしているが、90年代事業を起こして成功。金を手にして、酒に溺れ、暴力行為で警察沙汰となる。

刑期を終えて、家族の元で償いの日々を送っている。
しかし、トラックの運転手では、妻と4人の子供の生活は難しい。
家族と距離ができ、救いを求めたのがロシア正教教会である。

(Bさんの家庭風景の取材場面がありますが、ごく表面的で掘り下げ不足。やむを得ないかもしれませんが)。

モスクワ郊外のロマシコワ教会には信者でない者も参加している。
著名な物理学者だったCさんは、研究機関を失ってアル中になった。

科学予算は四分の一になって、多くの科学者は他の職業にはしった。
ソビエト時代に誇りを持つCさんはまだ神を信じていない。
妻とも議論になる(聞く者にはいささか退屈)。

教会は、新たな信者を求めて、毎日TVで宣伝をしている。

ロシア正教者会議など、プーチンが正教の重要な行事に出席する機会が増える。
「国家から少しずつ歴史的な借りを返して行く」(プーチンの言)

ロシア正教は、子供達の愛国心を育てるという目的で、少年達に軍事訓練を行っている。
チェチェンやグルジア紛争では、司祭も戦場に行く。

ロシア正教のクリスマス行事には、メドベージェフ大統領も出席する。
司祭は、メドベージェフに、「尊敬する大統領」と呼びかけ、メドベージェフは十字を切って、応える。

教会の電話はクリスマスの夜にも鳴り続ける。
助けを求める彼らに手を差しのべることで、ロシア正教は、プーチン政権の要になろうとしている。
(以上、番組紹介)


前夜の「プーチンのリスト」に比べて、見ていて、いささかテンションが下がり、退屈になる場面もありました。
折角家庭での取材をしながら、ごく表面的な会話程度しか捉えていず、見る方としては、問題意識を持つというか、感じるまでには到りませんでした。

アルコール依存者は深刻な問題なのでしょうけど、お金を得たと言ってはアル中になり、職を失ったと言っては、アル中になる、ではいずこも同じという感じです。

ロシア正教が、現政権に食い込んでいるという事実は分かりましたが、“超格差社会”に深く取り組んでいるという印象があまり感じられません。

ソビエト連邦時代の長い長い抑圧を経ている、ロシア正教そのものの歴史や紹介がもっと詳しく取り上げられるとよかったと思います。

「失われし人々の祈り」というタイトルもどういう意味か、首をかしげます。
ただ、ロシアについては、情報そのもの、特に一般家庭に入り込んだ映像も見る機会は少ないので、その意味で、意義があったと思います。

元KGBのプーチン首相の、国家が借りを少しずつ返して行くという言葉は名言です。  《清水町ハナ》  

この記事へのコメント

マツイ
2009年03月18日 02:07
昨年8月8日にロシアがグルジアへ侵攻しましたが、このグルジアはいまもアメリカが介入しています。そしてグルジアという国を宗教的な面から見てみればこの国はアメリカとロシアの両方につながりをもった国でキリスト教を通してはアメリカのジョージア州アトランタと深い関係にあり、正教を通してはギリシャ正教やロシア正教と教義が同じで本来ロシアよりの国家です。ロシアはいま正教会の協力を得て本格的な強いロシア国家の再建へ取り掛かりはじめましたが、グルジア地域の権益を獲得してく上でもロシア政府とロシア正教の一体性はこれからますます深まっていくと考えられます。
2009年03月18日 10:41
マツイ様、ご高見ありがとうございました。グルジアについての私の貧弱な知識は、非常に旧いキリスト教国、スターリンの出身地、ソ連邦最後の外相(崩壊後のグルジア第二代大統領)シュワルナゼの出身地+少々です。ですから紛争が起きても、その原因や経緯がマスコミで報じられる程度しか分かりません。ソ連邦という巨大な傘が全てを包み込んでいたからでもあると思いますが。その意味で今回のNHKスペシャルのシリーズを興味深く見ております。

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