時事雑記帳30「Nスペ「プーチンのロシア1:プーチンのリスト」思い出エッセイ〔169〕

 「NHKスペシャル:揺れる大国 プーチンのロシア1:プーチンのリスト~強まる国家資本主義~」(3月1日21時)。タイトルがあまりに長くなってしまったので、表題は短くしました。しかしこの長いタイトル(「NHKスペシャル・ホームページ」より)の、どの言葉も内容のキーワードです。新聞の番組紹介の副題は、“ロシア大富豪密着半年:天国から地獄へ”“50兆円争奪戦”。

去年9月、ロシアの大富豪、ミハイル・スリペンチェク氏(S氏)は、自家用ジェットの中で「キャビアは食べ飽きた」と大粒、山盛りのキャビアを前にして言う。
リーマン・ブラザーズ破綻の三日後である。

新興財閥S氏に危機の予感はない。
「世の中には、楽観主義者と悲観主義者がいる。私は楽観主義者だ」と言って憚らない。

その直後、彼は(金融)危機に見舞われる。

ロシアの新興財閥が頼ったのは国家である。
メドベージェフ大統領のロシアは50兆円のオイル・マネーを握っている。

国益に叶う企業はどこか、外貨を稼ぎ出す企業はどこか、選別が始まった。295社が選別される。

危機に陥った新興財閥は、ナリフリ構わず資金獲得に走った。
国家との関係を保とうとする。

国家資本主義への動きが加速する。

傷だらけの大国は、プーチンという指導者とオイル・マネーによって甦った。
「ロシアは、大国である(あり続ける)ことが唯一の道だ」とプーチンは言う。
国家資本主義の危うい姿が見えて来る。

リーマン・ショックから3週間。
モスクワでは、銀行が資金繰りに行き詰ったというニュースが流れていた。

3年で6倍になった株価が3週間で30%下落した。
(ロシアの金融投資グループ)メトローポルは、株式部門が壊滅的な打撃を受け、都市開発部門も窮地に陥っている。

開業したビルも、テナントが一軒も入らず、赤字の垂れ流し状態である。

新興財閥が陥った突然の危機。ほんの一ヶ月前まで誰も予想しなかった。
去年9月、S氏は、モンテネグロで、50億ドルをかけて、富裕層へのリゾート開発をする予定だった。

彼は、株の売買、都市開発、資源開発で儲けていた。
日本も度々訪れ、「この時計は1260万円だ」と見せびらかす。

大手投資家グループ(北尾CEOの)に100億円の投資話を持ちかける。

個人資産は1000億円に迫る勢いである。

S氏は、1965年シベリアの地方都市に生まれ、モスクワ大学在学中にソ連が崩壊した。
学生時代に衝撃を受けた映画は、ハリウッド映画「ウォール街」である。

14年前会社を設立した時、決して国の金には頼らないと自分に誓った。

フランス、カンヌにあるロシア皇帝の別荘を買い戻した。
別荘の最上階に住むのは、長くシベリアに住んでいた両親である。両親へのプレゼントである。

数週間後、海外からのマネーが消える。マネーの逆回転が始まる。総崩れ状態となる。

ビル・ゲイツと肩を並べる(と言ってもいい)大富豪、オレグ・デリパスカス(D氏)の企業が危機に陥った。1兆6千億円の債務を抱える。

莫大な資金を持っているところは国である。50兆円を蓄えている。
(この資金があるから)、危機は乗り越えられるとプーチンは言う。 

プーチンは資料のリスト作りを命じる。
選ばれた企業は、(資金を得られる代わりに)、経営権を国に握られる。

S氏は、国に資金を頼るべきではないという信条から、自力で危機を脱出しようともがいていた。
4年前に鉱山事業にとりかかり、一年以内に事業が始まる予定だった。
100億円の開発費用をカナダの会社と分け合う予定だった。

生産が本格化すれば、莫大な利益を挙げられる。
900億円の資金が必要だった。

10月下旬、S氏はロンドンに飛んだ。カナダの会社から資源開発を打ち切りたいという申し出があったからである。
説得は失敗した。撤退する条件の、代わりのパートナーを紹介するという話しもナシとなった。
「でもこれがビジネスというもの」(自分に言い聞かせる)

自力で生き残るのは無理かも知れない。八方ふさがりである。

エリツィンが国営企業の民営化を推進し、新興財閥が国を凌ぐ勢いを持つようになった。
民間に行った資源の取戻しを、プーチンは始めたのである。

ロシア最大の石油会社社長は収監された。
(ロシア最大のガス企業)ガスプロムをメドベージェフをつかって押収。
アルミ会社は国の方針に従ったので、民間企業のまま残した。

そして生まれたのがプーチン・リストである。プーチン流の国家資本主義は更に徹底する。
リーマン破綻から三日後、プーチンは、国家にとって主要な企業の(絞り込み)を始める。

国営の対外経済銀行(プーチンがトップ)で、リストの作成を始めた。
国家戦略上重要な資源やエネルギーか、外貨を稼ぎ出すか、(その観点から)絞り込む。
(資金援助が決まれば)国から人を送り込む。

D氏のアルミ会社も審査される。
南米ペルーの国際会議にメドベージェフとD氏が現れた。
D氏は国に縋ったと告げる。

シベリアの亜鉛鉱山を国にアピールすれば、資金を得られるかも知れないが、そうすれば、国に全てを奪われるかも知れない。

「国とやって行ける者が生き残れる」

12月亜鉛鉱山は更に存続が危うくなっていた。
削れる経費がないかと更に暖房費に到るまで検討。

経費削減のため、プライベート・ジェットに乗るのを止める。
アフリカのコンゴに向かう。コンゴの大統領と直談判するつもりである。
まず大使館に向かう。

大使は、中国が資源の採掘権を握っていると伝える。
大統領に会いたいと橋渡しを頼む。
四日間、コンゴで大統領からの連絡を待つ。

帰国する日、15分だけの時間を与えられた。
階段は一時間半に及んだ。
ある(聞き逃しました)会社が窓口になるという約束をとりつけた。
「人間同志の繋がりができた」
灼熱のアフリカで漸く一つの成果を掴んだ。

12月25日、295社の「プーチンのリスト」が完成。
S氏の会社はリストから漏れた。
D氏は4500億円の資金を得た。

スイスのダボスで開催された世界経済フォーラムは今年の基調演説者にプーチンを選んだ。
プーチンは、ロシアは巨額な外貨を持っている(ことをアピールした)。

地方の有力企業の選別、つまり「二次リスト」の作成が始まる。
S氏は「二次リスト」入りを目指して、ブリヤート共和国大統領に亜鉛事業の重要性を説く。

それまでの主義を曲げてまで(リスト入りを目指さなければならない)。
「ロシアの歴史を知る者に国家に背く者はいない。今迄もこれからも」
(以上、番組紹介。メモの取り違いが分かりましたら、訂正します)


殆どプーチンの独裁体制のロシアという国に、最近あまり興味が持てなくて、進んで情報を得るということもして来ませんでした。

この番組を見てみようと思ったのは、やはり、金融危機がロシアにどういう影響を及ぼしているか知りたいと思ったからです。
内容が流動的というか、取材の最中に刻々と変化して行くことが印象に残りました。
番組として面白かったし、改めてロシアの事情もその他の国の事情も、もっと頻度多く、知りたいと思いました。

こんな場面がありました。リスト入りの審査に関係することだったか、順番を待つところ、係りの人が、「これを優先的に」という意味のことを言って、順番を早くさせたことです。おそらく取材対象になっている人についての順番でしょう。
この番組について、ロシアの関係者は(プーチンも?)関心を持っていると思われます。

もう既に自分が危機の渦中に取り込まれていることに全く気づかないで、国の資金に頼らない、楽観主義者である、と言っていた、その発言自体も評価基準として、チェックされているかも知れません。

「沸騰都市シリーズ」などで取り上げられた、例えばロンドンを動かしている(いた)ロシア人大富豪はどうしているか、大豆栽培などで潤ったはずなのに、国全体不況に陥ったウクライナは・・・
数ヶ月どころか、先月と今月で全く事情が変わる、それも予測できない。
情報は、どんな形のものでも、いつのものか常にチェックする必要があるようです。

折しもアメリカにはオバマ大統領が現れ、ロシアとは対照的な民主主義下での危機対処が始まりました。
我が日本はどうなっているのか、大局的な見解も具体策も見えて来ない中、漢字が少々読めなくてもいいのではないかという気にもなって・・・

国の恥というより、世界がこの金融危機に対処しようとする重大な国際会議で、最初から薬の相乗効果を期待していたとしか思えない、信じられないシーンまで見せられて、逆に、妙にメゲナイ総理に感心。バッチリ、ブレーンで囲んで、威勢のよさを保ってやってもらってもいいかななどと思ってしまうこの頃です。  《清水町ハナ》


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