時事雑記帳14「NHKスペシャル「沸騰都市ドバイ」」思い出エッセイ〔119〕

 “沸騰都市ドバイ”、威勢のいいタイトルに惹かれました。最近、守備範囲のテーマがないと言うのは、おこがましいのですが、要するにあまり見たいと思うものがなかった、「NHKスペシャル」の番組です。ドバイと言うと、中年以上の方は、すぐ日本赤軍のハイジャック事件を思い出されるでしょう。そんな名前の国があったのかという存在でした。それが今や世界一がいくつもある‘沸騰都市’だそうです。

「沸騰都市ドバイ」(NHKスペシャル、5月18日、夜9時)。
「砂漠に出現した黄金の街、地上800メートルの超高層ビル、人口島」などというサブ・タイトルがつけられています。
雪国の思い出に沈み込んで、なかなか抜け出せない私に、言いがたい種類の刺激となりました。

数年前まで、年に二三回、学生時代の友人と国内旅行をするようになって、恒例になりかけていた時、私の個人的な事情で、無期延期となっていました。
その直前、彼女が「ドバイに行ってみようと思うんだけど」と言ったので、驚きました。

海外旅行は一緒に行かないということにしていたので、私を誘ったということではなく、彼女自身にも迷いがあったのだと思います。
止めた方がいいんじゃない、すぐに言いました。

私は、ひとの行動に口を出さない方ですが、イラク戦争も始まって、どの段階の時だったか、間違って飛行機が撃墜されてしまったり、とかは、まあ、口に出しては言いませんでしたけど、その前にバリバリのイスラム教国に女性が観光に行くなんて、という思いの方が強かったと思います。

結局彼女は、家族と行って、とてもよかったと言いました。その時点でもドバイに行くなんてという思いが強かったので、どうよかったかとも聞きませんでした。

ドバイは、イラク戦争のため、行き場を失ったオイル・マネーを吸い込んで、特に、ここ数年、国ごと変わったようです。
ナレーションも、沸々と煮えたぎる調子で凄まじいスピードで変わって行くドバイという国を紹介しています。

地上160階、高さ800メートル、世界一高いビルを、世界中から労働力を集めて、建築中なのだそうです。
人、もの、金が世界中から吸い寄せられ、世界の富が集まって、スーパーシティ・ドバイが出現した、そのドキュメントです。

新築物件の売り出しには、早朝から長蛇の列ができ、不動産物件は年20%の割りで高騰を続けている。
4年前、4千万円だったものが、今は2億円。世界中から買いに来る。
経済成長は年15%を超える。所得税もない。

人口は僅か140万人なのに、不動産開発により、一千万人が住めるそうです。
世界地図を模した形のショッピング・モールは、世界最大級である。
10年前まで砂漠だった地に突如出現した都市で、陸、海を仕切るトップ、更にドバイを仕切る優れた首長がいる。

世界最大の人口島となるパーム・ジュベルマリは、96%まで埋め立てが進んでいる。土台は、海底に岩を積み上げて造っている。
プロジェクトの規模は6兆円を超えている。

「我々の辞書にはナンバーワン以外ない。エベレストでも、二番目に登った人間の名前は誰も知らない」とトップは豪語する。
間もなく出来る人口島に何を造るか、設計会社13社を競わせて案を出させる。

プレゼンの最中に、トップのマキュアリ氏が突然立ち上がって、出て行ってしまう時は、提案が気に入らない、もっと創造性に富んだ発想を望んでいる時である。

朝、6時には、インド人、バングラデッシュ人を主とする出稼ぎ労働者を乗せたバスが走っているが、人口の半数は、この労働者である。
超高層ビル‘ブルジェ・ドバイ’の建設には、6千人の労働者が働き、24時間の突貫工事をしている。工事人は、世界の高層ビル工事現場を渡り歩いている高層ビル専門の者ばかりである。

パワー・プロジェクトは、韓国のサムソン建設が担当し、内部の空調設備は日立プラントが請け負っている。
ガラスの総面積はサッカー場17個分。

日立プラントは、度々の(仕様?)変更で、工事に大幅な遅れが出、工事人も足りない。残業を増やしても限界。
インドの労働者が望ましいが、人材派遣会社が条件をつり上げて来るため、人件費が上がり、直接インドまで、人集めに行くが、今は本国の賃金も上昇しているので、月給3万円では、なかなか人が集まらない。

20世紀の末まで、ドバイは、アラビア半島の一港町に過ぎなかった。遊牧民の暮らしの特色も色濃く残っている。
それを砂漠の持ち主である、ムハンマド首長が変えた。外国人相手に、砂漠を切り売りし、イラク戦争で行き場を失ったオイル・マネーを吸い上げた。

海と陸を競わせる方向、手段も、あらゆる面で的中した。
世界的な株価下げの翌日、ドバイでは大きく値上がりした。砂漠でオアシスを求めるように、世界のマネーがドバイに投入されたわけである。

イラン人のラミン氏は、ドバイに2千万円を投資して、20億円にしたが、不動産が完成する前に転売を繰り返し、価格をつり上げた。
「ビジネスはハンティング。準備をして、いい獲物を狙う」と言う。
しかし、労働力を海外に頼るやり方がいつまでもつか。産業がない。そうした見方をする人もいる。

「ドバイ・ランド」は、世界最大のアミューズメント施設となるはずだが、まだ砂漠のまま。
大成建設の会長が乗り込んで、交渉をするが、トップを招いてのスシ・パーティーが、最高のネタを氷漬けにして、持ち込み、社員の妻達が接待する。

私の感想として、こういう言わば、家庭的なもてなしが通用するところなのか、何かこの場面だけ、浮いて見えました。

会長自身も、今までの日本的な仕事のやり方では通用しないと考えている。
ドバイ側は、世界中で新たな投資家を探しており、ウクライナ人の建設王とも接触して、ロシア、ウクライナ、カザフスタンの富裕層を呼び込むことを画策する。

ドバイは投機のみが目的、誰かが売りに出れば、下がるから、その時は転売で自分の財産を守ると語るイラン人もいる。

今、ドバイの若者の間で、四輪駆動で二つの砂漠を走り回ることが、遊びとして流行しているが、これは駱駝の代わりではないか。
陸を仕切るトップも、週末には、息子と砂漠のドライブを楽しむ。

「砂漠にいると、落ち着く。自分のルーツは、砂漠にある。今建設中の街では決して得られない。何も持たず、何も遺さず、何も作らないというのが、砂漠の考え方である。全てを失ったら、砂漠に帰る」と語る。

しかし、ドバイは今後も成長を続けなければならない、という重圧を抱えている。
世界初のドーナツ型の都市は、海に宇宙を作るという(意図)ことである。
ドバイは、21世紀に砂漠に出現した蜃気楼である。

しかし、ドバイのトップの真の目的は、ドバイを通して、イスラム銀行に金を流し込み、それをヨーロッパに向けることである。

(以上、メモに間違いがありましたら、お許しください)

新聞のテレビ紹介欄に、「楽園か、砂上の楼閣か」とありました。両方でしょう。ドバイにとって、大きな利益を齎している間は、砂上の楼閣が楽園と化しているわけです。

既に石油が枯渇してしまった国の新たなる活路として、これ以上画期的なモデルはないと思えます。
他国、特にイスラム教国以外にとって、こうした人口の島、街を本当に楽園と思う人がいたら、或いは、投資の対象と考える人がいるとしたら、ドバイの人々のように、いつでも帰れる砂漠を持っていることが必要でしょう。

ドバイがこういう方向を目指し、表面的に成功を収めて行っている源は、イラク戦争により行き場を失ったオイル・マネーの吸収にあり、更に遡れば、9・11テロに行き着きます。
しかも、人工都市によって得た莫大な利益は、ヨーロッパに向ける、と明言しています。

スシ・パーティーで、会社の奥さん連中がもてなす相変わらずの場面には、恥ずかしささえ感じました。そんなものは通用しないということが分かっていない。どうでもいいことですけど。

どっちみち、ドバイの市民とか、暮らしぶりとか、その他一切、ドバイの素顔は見えて来ません。いずれにしても、人口の半分が外国人労働者ということは、実人口は70万人ということになり、ドバイという国の存在感は希薄です。イスラム銀行に金を送り込む一つの巨大な機関と言えないこともありません。

アジアが、サイクロンや大地震で大被害が進行中に、あまりに落差のある番組、映像に、まあ、やはり、砂漠の蜃気楼という表現が合っているようにも思えます。  《清水町ハナ》

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