時事雑記帳10「NHKスペシャル「ワーキングプア」紹介」思い出エッセイ〔95〕

 NHKスペシャル「ワーキングプア」、12月10日午後10時。去年、放送された番組の再放送です。7月と12月放送の、二回分を一回にまとめたということです。「新聞協会賞」「放送文化基金賞」「ギャラクシー大賞」受賞。‘ワーキングプア’という言葉は、この番組から生まれ、定着したと言える、フルに、或いは、限界まで働いても、生活保護受給者より、低い生活レベルしか維持できない人々、層を意味するということです。

初回放送時、ワーキングプアを、自分の問題として捉える、3000通の手紙が寄せられたそうです。
体がこわれるほど働いても、ギリギリの生活。どんなに頑張っても、報われない。こんな社会に誰がしたのか。こうした現状が書かれ、一部の、マネー・ゲームに熱中する人はいても、暮らしが楽にならないと多くの人が考えている。
全世帯の十分の一が、ワーキングプアであると言われる。そして、一度ワーキングプアになると、抜け出せない。

番組では、何人かの例が紹介されます。
☆福島在住のSさん。31歳の女性。
二人の子供を抱えて、夜は、弁当会社で働き、時給910円。真夜中2時に帰宅。昼は別の所で働き、週末も働く。夜、出かける前に、二人の子供を寝かしつける。朝食は前の晩のカレーライス。

Sさんは、高校卒業後、ホテルで働き、その後結婚したが、3年で離婚。すぐ働かなければならなくなる。時給650円の、スーパーのパートなど、職を転々。月収、手取り7万円の時もあった。

現在は、昼間は建設会社の事務をやり、昼と夜の仕事を併せて、月収、18万5千円。食費他には、2万円しか当てられない。

国は、支援の代わりに、自助努力を求める。しかし、資格を取るには、昼間の学校で学ばなければならない。夜の仕事に出かけるまでの3時間ほどが、親子3人で過ごせる時間。
一人で、父親役と母親役を兼ねている。

☆北海道内陸部の街に住むOさん。23歳、女性。
病院の給食の仕事を、朝5時半からしている。時給670円、ひと月、8万円。
街の人口は、約2000人で、主に農業に従事しており、若い女性の働き口は、年々、減少している。

Oさんは、絵が好きで、都会に出て、特技を活かしたいと思っていました。高校卒業後、専門学校に入って、ゲーム会社の、コンピューター・グラフィックスの仕事をしたいというのが、Oさんの望みでした。
父親が病気になって、120万円の授業料が払えなくなった。
Oさんは、妹と二人で、同じ調理場で働き、16万円の月収を得ていますが、どちらかが欠けても、一家の生活は成り立たない。

父は、10年前の離婚をきっかけに鬱病となる。
収入を増やすために、半年間勉強して、調理師の資格を取ったが、会社が上げた時給は、10円である。

・地方の疲弊が、ワーキングプアを生む要因に挙げられる。
秋田県内陸部のある農村は、今は誰も住んでいない。故郷を無念の思いで棄てざるを得ない。米の価格が下落して、生活は厳しくなる一方だった。景気回復から、地方は取り残された。

☆角館町に住む、Sさん、(年齢を聞き漏らしました。70歳前後?)男性。
仕立て屋を営んでいたが、現在の年収は、必要経費を引くと、248,000円である。
注文は、裾上げ(500円)やサイズ直し(1,000円)ばかりである。
角館に嘗ての繁栄はなく、住民は、秋田市や東京に出てしまう。

Sさんが、昭和61年に開業した時は、月に100着以上の注文があり、二人雇い、街一番の仕立て屋だった。
それが今は、四月までの売り上げが、1万円に届かなかった。食費には、一回、100円~200円しかかけられない。

角館は、武家屋敷で有名な観光地で、特に5月の桜の時期は観光客で賑わう。

☆Tさんは、農家で、漬物屋を兼業している。売り上げは300万円だが、経費を引くと、30万円である。
1ヘクタールの田んぼを持ち、朝早くから、田植えに出ているが、米の価格の値下がりで、収入はない。こんなに米の値が下がるとは思わなかった。米作農家の生活は、厳しくなる一方である。

Sさんは、自分で仕立てた上着を着て、病院へ行く。アルツハイマー(認知症)で入院している妻を見舞うためである。
40年間、共に働いて来た。医者の呼びかけには応えないが、Sさんには、微かに反応する。

市役所から、介護保険料が倍に上がると通知が来る。妻の入院費も6万円かかり、それで、年金が消える。市役所に行って、介護保険料の減額を求める。調査の上、審査という返答。
50年間仕立てをして来て、職人の技術の誇りを表す、表彰状も何枚も飾られている。

生活保護を受けるには、妻の葬式代に貯めてある100万円の貯金を取り崩さなければならない。
将来の見通しは立たず、「貧乏人は、早く死ね、ということか」とSさんは呟く。

☆岐阜の柳ケ瀬、Mさん夫妻
地場産業の繊維が衰退して、夜は、シャッターが下りている店が多い。
この10年、海外との競走、新たなるグローバル化に曝されている。
中国から、研修生が、技術を学ぶために来るが、月、5万円、時給、200円という、不当に安いケースもある。
こうした、安い労働力の出現で、末端の零細企業が影響を受けている。
中国人を使って、安く早く仕事をする企業に負けてしまう。

Mさん夫妻は、プレス(アイロン)の仕事をしているが、昨年の収入は、300万円で、経費を引くと、生活ができない。

夫が脳出血で倒れ、妻は、高齢者施設で働くことにするが、同僚も、繊維関係の人が多い。
娘は、資格を取って、管理栄養士になるつもりで、奨学金を申請し、アルバイトもするつもりでいるが、進学が決まり、妻は、三つ目の仕事を決める。中国の研修生、200人の食事を3人で作る、賄いの仕事である。

この仕事が、一家を支えるが、娘の授業料には足りない。中国人の食事の余りを持ち帰って、食卓にのせる。

☆上のビデオを三人の専門家に見せて、意見を聞く(二人の女性教授と経済評論家)。
・全てを棄てなければならない、生活保護制度の欠点と言うべきものに対して、一部援助、やって行けるようになったら、止めるというやり方を考えるべき。
・母子家庭のSさんのケースは珍しくない。
・就労支援は、努力に労働条件がついてこない。
・景気回復だけでは、ワーキングプア問題は解決できない。
・中国人の進出により、「どん底への競走」とでも言うべき事態が出現している。
・人々の勤労意欲がなくなっている。働くことにどう報いるか。
・貧困層は、少数派ではない。マジョリティである。こんな国がどうして豊かな国と言えるのか。

☆老いて、尚働き続けなければならないケース
京都のKさん夫妻は、夫、80歳、妻75歳です。
空き缶を集めて、潰し、1キロ130円で売り、月に5万円を得て、生活している。
年金がない。親や兄弟を養っていたために、(未払いで)5年の不足が出てしまった。

いざという時のために70万円の貯金を持っているため、生活保護を受けられない。
二人の息子がいて、孫は、高校、大学に行っているが、時々、1万円ほど送って来る。
子供からもらわずに死にたいと、妻は話す。

・高齢者、40万人は、年金がない。

3年前まで、公園の掃除の仕事をしていたが、年齢が高いために、外される。
年金だけでは暮らせず、パンを拾う年寄りが増えている。

一週間分のアルミ缶を、回収業者に売ると、3回で、18,000円になる。
突然夫は、胸の痛みを訴える。回収業がいつまで続けられるか分からない。

・「奪われて行く子供達の未来」というタイトルで、以下の実例が挙げられます。
ワーキングプアは、生まれた環境によって、左右され、次の世代に引き継がれて行くのではないか。

☆東京のYさん、男性、50歳。
妻を病気で亡くしてから、男手で、二人の子供を育てて来たが、5年前に会社を解雇され、今は三つのガソリンスタンドで働いている。600万円あった年収は、今では200万円、月に20万円がやっとである。

(自分も私立大学を出ているので)、息子達を大学に行かせたいと思っている。週に三日は時給の高い深夜、働いている。
子供達は、朝食を作り、父のことを心配しているが、長男は、他の友達が行っているから、塾に通いたいと言い出す。また、お父さんが行ってもいいと言ったら、大学に行きたいとも言う。

子供達のために、昼間の仕事をしたいが、50歳では、正社員の仕事は見つからない。
600万円の貯金は、生活のために使い果たし、子供の進学資金も取り崩している。
Yさんは、子供のことを思って、涙を流す。二人の子供の将来のために、もう一つアルバイト先を探したいと思っている。

☆経済的な理由で親に見捨てられる子供
ある養護施設で、父親の死後、一人で家計を支えられなくなった母親が、家を出てしまった。
「普通の家に育って、普通の家がよかった」と望みを語る子がいます。
七夕の短冊に書かれた、子供達の願いは、
「将来、保育士になりたい」「素敵な家族」「ただ、普通の暮らしがしたい」、

☆Iさん、35歳、男性。
ゴミ箱から、雑誌を拾って、古本屋に1冊、50円で売っている。
小学校の時は、スポーツ選手を夢みていたが、中学の時、父の借金で、両親が離婚。

母親が働き始め、Iさんに一日500円の生活費を渡す。高校の時、母は帰らなくなった。
アルバイトを始めるが、30歳の時、雑誌を拾い始める。生まれ変わって、別の暮らしがしたいと思っている。母が、どこで、どうしているか知らない。

☆再び、識者の意見
・ワーキングプアは、世代を超えて、引き継がれて行く。
・人口の10~20%が、這い上がれない社会、一代で終わらない、沈澱する社会となっている。
・社会から排除された状態も、世代から世代へ受け継がれる。
・すぐれた労働力を再生産できない。
・若い人が、働き甲斐のある社会にしないといけない。
・働いているのに、貧しいと言うのは、日本の生産水準から見て、おかしい。
・賃金は下げさせない。
・一人親世帯をどこまで援助するか。

☆放送一年後の後日譚
母子家庭のSさんは、体力的にもたなくなって、家賃の安い市営住宅に越した(それまでは家賃、4万5千円)。
Mさんは、プレスの仕事を廃業、建築関係の仕事をしている。

(長時間番組、登場する人も状況も多い、二回分を一回にしているが、あまりまとまっているとは言えない、等、メモに間違いがあったら、お許しください)

ワーキングプアと言っても、上記の例は、タイプも、原因も異なります。
母子家庭のSさんは、識者も指摘している通り、最も多い例と思えます。夫婦共稼ぎで、家計を維持している家庭が、何らかの理由で破綻したら、即、このケースになると思えます。前夫や関係者からの援助がどうして得られないのか。収入に比して、家賃が5万円近いのは、無理と思え、市営住宅に入居することが、ある種の解決になったという後日譚は、ちょっと肩すかしの観がないでもありません。

北海道のOさんのケースは、ワーキングプアと言えるのかどうか。ゲーム会社のコンピューター・グラフィックスの仕事も、そう簡単に得られるものではない、という声も聞こえてきそうです。

角館のMさん。仕立て屋、テーラーという仕事が、失礼ながら、都会でも成り立ちにくい職業となっているのでは。全国的にも有名な観光地である角館の、典型的な例とは言えないようにも思います。

今回は、単純な既述のみに留めたいと思います。  《清水町ハナ》

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