テーマ:創作

小説『はるかなるインドシナ39』思い出エッセイ〔1-0-39〕

「浩司さーん」庭から呼ぶ声がした。 はーい、浩司も子供のように答えて、ポーチに走り出た。 「コーヒー、お願い」 「すぐ、行きます」 浩司は階段を軽やかに走り降りた。 やがて、大きなトレーにアイス・コーヒーの入ったピッチャーと少し小さめの紅茶のガラス容器、グラス、デザート・ナイフとフォーク、切り分けたチーズ・ケーキとバ…
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ショート・ストーリー「陽炎その2」思い出エッセイ〔0-2-2〕

ショート・ストーリー「陽炎」思い出エッセイ〔0-2-1〕続き 秀麗は措置が早かったので、暫くの療養で、確実に回復するという医師の診断で、入院もさせず、自宅で隠密裏に治療を続けることになりました。 二人は時間を合わせて、別々に自殺を図ったのです。明らかな心中です。 その時間とは、午前4時23分です。 神原知文は、コメカミを…
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ショート・ストーリー「陽炎(かげろう)」思い出エッセイ〔0-2-1〕

 (古めかしいと言うか、古臭いと言うか、ショート・ストーリーを一編作ってみました。梅干の種ほどのネタを林檎の大きさに膨らませたものです。お気が向かれたら、目をお通しいただければ幸いです)   「私の名前の読み方ですか。神の林と書いて、こうばやし、と申します。初対面の方は殆ど、かんばやし、と呼ばれますが。 今日は、四月二十二日。…
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小説『はるかなるインドシナ38』思い出エッセイ(0-1-38)

「夜明けまででもおしゃべりしたいけど、お疲れでしょうし、明日からハードな毎日が始まるし、今日は、早めにお休みになるなり、何だったら、海側の部屋に丁度いい風が吹いて来る頃だから、少し風に当たっても気持ちよくてよ。 少し経ってから、コーヒーと紅茶、アイスをお持ちするわ。ホットはキッチンのサーバーのを使ってちょうだい。お夜食もキッチンの…
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小説『はるかなるインドシナ37』思い出エッセイ〔0-1-37〕

 案外風が強いな、入ろうか、浩司はそう言って、庭の端の方へ行き、何か操作すると、重い扉がスルスルと出て、石垣の塀が閉じられた。 ああ、そうそう、国府田とご両親の写真を頂いた。僕は子供の頃の国府田の写真しか持っていないんだ。 錠をかけながら、蘭の方を見ないで言った。 中へ入ると、食卓のセッティングがしてあった。 大皿に今日…
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小説『はるかなるインドシナ36』思い出エッセイ〔0-1-36〕

外国人が一人写っている。アマリア夫人が邸内の主な部屋を案内してくれたが、そこに飾ってあった夫のゲルハルト・シュレール氏であることはすぐ分かった。 彼も昔はこんなにハンサムだったのよと、中年に差しかかった頃の写真が、最近の写真と並べてあったからだ。 ここに写っておられる方、皆ご存知ですか、浩司がマダムに聞いた。 いえ、河原先生と…
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小説『はるかなるインドシナ35』思い出エッセイ〔0-1-35〕

「先生は熱帯病を研究されていると伺いましたが」 浩司が話題を変えた。 「ええ、日本に帰って、ほっとするかと思ったら、何か全てが生温くて矮小な感じがして。日が経てば、治まるだろうと思ったんですが、一つは家庭を持っていない所為もあるんでしょうけど、あのフィールドに帰りたい、そういう気持ちばかりが強くなりましてね。 今考えると、一種…
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小説『はるかなるインドシナ34』思い出エッセイ〔0-1-34〕

帚木は、話しながら、ワインの追加を注文したり、浩司と蘭に素早く手際よくワインを注いでくれたりしていたが、デザートはコーヒーだけ先に、こちらから頼むまで待ってと、テーブルを片付けに来たウェイターに声をかけた。 「当時、タイ側とカンボジア駐留ベトナム軍とどっちが先に仕掛けたか、マスコミでも取り上げたし、双方が相手側と主張していたと言…
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小説『はるかなるインドシナ33』思い出エッセイ〔0-1-33〕

現地に着いて、我々を待っていたのは、意外な契約でした。 曰く、当任務は、戦時下の任務である。生命の保障はしない、生命が失われた時の補償金は別途定める通りである等々。これって日本国憲法違反じゃないの、聞いてないよ、なんていう話もしたんですけどね。 まあ、でも我々医師は、一応どういう状況でも結構すぐに順応する性みたいなのがあって、国…
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小説『はるかなるインドシナ32』思い出エッセイ〔0-1-32〕

この度はお忙しいところ、お時間をお割きいただいて、と浩司があらためて挨拶をした。 いや、とんでもありません。僕の方こそ色々お教えを請う立場です、麻耶さんには向こうで世話になりましたし、僕の方が年をくってますけど、フィールドに関しては完全に後輩です、帚木はキレのいい話し方をした。 自分は東京生まれだけど、父が神戸出身。父の仕事の関…
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小説『はるかなるインドシナ31』思い出エッセイ〔0-1-31〕

元町駅で降りて、元町通りに入る所で、反対側にあるデパートで夫人に頼まれた買物をすることにして、浩司と一旦別れた。 夫人から預かった封筒を空けてみると、メモの他に代金も入っていた。 タイム、セージ。サフランは銘柄と瓶の大きさの目安と、これがなければ、結構です、と書いてある。あと二種類は蘭の知らないものだった。 店員に揃えて…
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小説『はるかなるインドシナ30』思い出エッセイ〔0-1-30〕

急いで着替えて、下に降り、深々と頭を下げて、寝過ごしの非礼を詫びた。 まあ、何をおっしゃるの、それだけくつろいで頂けたっていうことでしょ。ほんとに嬉しいことよ、アマリア夫人はそう言って、微笑んだ。 白地に黒の粗いストライプ柄のシャツと薄いデニム地のチャコールグレーの膝下ズボンに、ほっそりとした身を包み、投げ釣りの準備をしていた。…
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小説『はるかなるインドシナ29』思い出エッセイ〔0-1-29〕

浩司が翌日の予定を話した。 「あ、それだったら、もう一晩お泊りになってよ。その方がゆっくりお話しなされるでしょ。そのドクター、お連れになっても歓迎よ。 ポート病院だったら、院長、存じ上げてますわ。ロータリー・クラブで。 一年後に私、ドイツに帰るつもりですけど、まだ迷ってるの。ゲルハルトは日本に骨を埋めてもいいって言ってるのよ。…
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小説『はるかなるインドシナ28』思い出エッセイ〔0-1-28〕

大佐は、太平洋戦争中、インドシナで、特殊工作に関わって、要人に太いパイプを持っている、ユウが情報を得たカンボジアの明号作戦後の首相とそのグループには、特に今でも大佐の指示は絶対と思われているほどだとか。 即座に動いて連絡をとってくれた。ユウのキャンプ周辺での身の安全は確保できるだろうっておっしゃってます、いい結果に繋がればいいけど…
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小説『はるかなるインドシナ27』思い出エッセイ〔0-1-27〕

「何年か前の、国境の難民キャンプを挟んだ、タイ側とカンボジア駐留のベトナム軍側の間の本格的な戦闘、何が原因だったのかしらね。いつも小競り合いはあったけど、あんな本格的な戦闘、それも、キャンプの中では、予想されていて、カンボジア側やタイ側に逃げた難民も結構いるらしいの」 浩司がちょっと考え込んで、日本のある機関が、キャンプへの救援物…
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小説『はるかなるインドシナ26』思い出エッセイ〔0-1-26〕

ポーチから芝生の庭に出て、石塀が低くなっている所まで行ってみると、浜に降りられる石段があった。 「ちょっと、波があるね」 私達は、石段の中ほどに腰をかけた。 潮の流れが目で捉えられるるほど早かった。 「ここはね、潮が早いから、泳いでいても、あっという間に流されちゃうんだよ。結構すぐに深くなるし、初心者向きじゃないんだよね…
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小説『はるかなるインドシナ25』〔0-1-25〕

ますます横道に行ってしまったけど、それに私が勝手にどんどん話してしまって、お分かりになるかしら」 「ええ、よく分かります」浩司はすぐ答えた。 「分からないところもありますけど、後で伺えれば」蘭はそう答えた。 「それで」 浩司が口を開こうとした時、 アマリアは、 「実は、ユウのお父さんの哲については、その後ジャングルで…
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小説『はるかなるインドシナ24』思い出エッセイ〔0-1-24〕

「何でもお話しして」蘭は小声で言った。 「蘭は、母親がベトナム人です。父親は語学が堪能でしたが、大戦中応召で、フランス領・インドシナで特殊工作に関わっていたそうなんですが、戦後帰国していず、しかし、生存が確実だった情報というより証拠があります」 「この話はあらためて詳しくお話しするかも知れませんが、我々は、国府田のことでこち…
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小説『はるかなるインドシナ23』思い出エッセイ〔0-1-23〕

夫人は、ユウの両親のことについて、どう聞いているかと尋ねた。 タイで自動車事故で亡くなったと聞いている、浩司が事実だけを答えた。 「自動車事故は事実ですけど、実はその場所、詳細は不明のままです。 日本に齎された通知は、タイ国境の近くで、事故。車両が燃えて、遺体も不明、ということだったそうだけど、当時、ユウのお父さんは国際機関で…
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小説『はるかなるインドシナ22』思い出エッセイ〔0-1-22〕

国鉄明石駅と同じ所から出ている私鉄で、舞子に引き返す形となる。 国道を海側に渡り、砂地を少し歩くと、旧国府田邸が松林の間に見え隠れしている。 「あ、あの石段もある。あの日、国府田がお母さんと、あそこから降りて来たんだ」 浩司が懐かしそうに言った。 そういう間もなく、石段の一番上に真紅のワンピース姿のシュレール夫人と思える…
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小説『はるかなるインドシナ21』思い出エッセイ〔0-1-21〕

まだ仕事残ってたんだけど蘭のためならと、いくらも経たないで、摩耶から電話がかかって来た。 王招については、実は、彼が教室をやめる直前、警察が来てね、あ、微妙なことだから、教室や関係者には、内緒だからと断った。 連中は、まず、王招をどうして、この教室に受け容れたのか、残留孤児でもないのに、と聞いてきた。実は、私も彼を入れた経緯…
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小説『はるかなるインドシナ20』思い出エッセイ〔0-1-20〕

「僕が、彼に何かの話の続きで、君が日本語を教えている話をしたら、その場でランがその教室に入れるか聞いてみてくれないかって言ったんだ。 すぐ君に電話したらOKということだった。新学期までは聴講生のような扱いでって、摩耶女史が取り計らってくれたっていうことだったね。 ランと国府田の関係は、確か彼女の家族と親しかったということだった。…
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小説『はるかなるインドシナ19』思い出エッセイ〔0-1-19〕

「浩司さんみたいに家事全般できる人、結婚相手が助かるのか困るのか」 「そうそう、それ。結婚に失敗した一番の理由は相手がその家事全般苦手、特に料理下手だったことじゃないかって思うこともある。 こんな美味しくないものをよくつくるって思うようになって、といって僕がつくるのもおもしろく思わない人だったんだ。 蘭ちゃんになら気兼ねなくつ…
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小説『はるかなるインドシナ18』思い出エッセイ〔0-1-18〕

少し沈黙してから、 「誰かがこういう筋書きを書いてる、つまり糸を引いているとも考えられるけど、ただ今日一日の一連のことは僕らが天婦羅屋を訪ねて始まっていることを考えれば、たまたま偶然が重なった可能性もある。 ここはある程度の糸を引かれてるのなら、のってみるというか、そのふりをしてみてもいいと思うよ。潜入感が入ってしまってもまずい…
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小説『はるかなるインドシナ17』思い出エッセイ〔0-1-17〕

「ランのことから始まったことだけど、その前に君のお父さん探しがあるね。 お父さんは、ベトナム戦争にもキーパーソン的な関わりを持っていたらしいし。とにかく一連のことは、君をまきこんで全く想像しなかった、大きな渦になっている。 しかも僕らは、その渦の存在を知らされただけで、実態は殆ど何も知らない。 ただ、渦に巻き込まれていると言っ…
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小説『はるかなるインドシナ16』思い出エッセイ〔0-1-16〕

がらがらに空いた電車の中で、浩司は低い声で意外な話をした。 「実はね、さっきフンが言ってた、国府田(こうだ)、結構親しいんだけど、君に話してなかったね。 優しい、の優一字で、まさるっていう名前。僕は、ユウって呼んでた。 僕のベトナム語は付け刃にもなっていない。まだ全く役に立たないし、誰か時々手伝ってくれるベトナム人のバイト…
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小説『はるかなるインドシナ15』思い出エッセイ〔0-1-15〕

「王は、あの日この店へ来たのはまさしく自分だと印象づけているっていう感じね」 蘭は、立ち木の日陰を選び、ゆっくりと歩きながら、言った。 「そう。いやというほどね。万年筆を忘れたのもわざとかも知れない。或いは店の人がもっと後で気がつく、つまり証拠品として残ることを期待していたのかも知れない。君がランにプレゼントしたのと同じとは限ら…
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小説『はるかなるインドシナ14』思い出エッセイ〔0-1-14〕

数日後、青梅の天婦羅屋に、電話をかけて、休業日とか営業時間、混んでいる時間帯、予約の必要があるか、などを聞いた。 二三伺いたいことがあるのだけどと言うと、夜より昼、一時を過ぎると、空いているし、二時頃までに入ってもらえば、ゆっくりしてもらえると愛想のいい声で返事があった。 じゃあ、今日の一時過ぎ位に行きますと、名前も告げた。 …
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小説『はるかなるインドシナ13』思い出エッセイ〔0-1-13〕

ちょっと躊躇するような調子で続けた。 「個人的に関心を持っています。父のメモに、彼の名前があったんですが、僕自身は、王について、断片的にしか情報を得ていないので・・・しかし、王とモローは接点があるようです」 「真田君は、何を聞いてくれてもいいそうだ。積極的に情報交換をして、お互い得るものは得ることを基本姿勢にする、そういうことで…
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小説『はるかなるインドシナ12』思い出エッセイ〔0-1-12〕

「さっきのランのケースはアメリカの木村さんにでも聞いてみるよ。日本もインドシナ難民を受け入れてから日が浅いし、ベトナム難民のことは知られていない。 この人ならと当たっても、全く知らない場合の方が多い。 大体難民と言えば、アフリカの飢餓難民しか知らないから。 インドシナ難民のような政治難民のことは日本のような平和な国では馴染まな…
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