思い出エッセイ〔450〕映画雑記帳198「【真夏の方程式】感想」

 【真夏の方程式】(福山雅治、杏、風吹ジュン、前田吟、吉高由里子、北村一輝、塩見三省、白竜、田中哲司、西田尚美、山崎光、監督:西谷弘)。

日本映画を二ヶ月半も見ていない。近場で始まったばかりの、5年ぶりの「ガリレオ」を見てみました。


冒頭、汽車の中。子供(恭平:山崎光)が携帯で話している。迷惑そうな乗客。
湯川学(福山雅治)が注意すると、行き先の親戚からかかって来るということだったと思うのですが、湯川は、恭平が食べたばかりのおむすびのアルミ箔で携帯を包んで、ホラ、こうすれば繋がらなくなる、と言う。
理科嫌いの恭平には、湯川の印象がはっきり刻み付けられる。

場面が変わって、海底の資源開発を巡って、地元住民と開発機構側で激しい意見の交換が行われている。
特に活発に反対意見を発言している川畑成実(杏)。
成実が両親(重治:前田吟、節子:風吹ジュン)と旅館を経営している、玻璃ヶ浦は、彼女が愛してやまない、環境保護に力を入れている、美しい海である。

会場に湯川が遅れて姿を現す。開発機構側のアドバイザーとして招かれていた。
偶然、湯川の宿泊先は、川畑親子の宿、緑岩莊だった。
緑岩莊には、汽車で会った男の子、恭平もいた。夏休み、家の事情で、伯母の節子の所で過ごすために来たのだった。

もう一人の宿泊客、塚原(塩見三省)が、翌朝、海岸でうつ伏せで死んでいる姿が発見された。地元警察は、堤防から落ちたと見て、事故死で片付けようとしていた。
しかし、塚原は、元警視庁捜査一課の刑事であることが分かり、湯川と大学同期の捜査一課、草彅(北村一輝)は、岸谷美砂刑事(吉高由里子)を現地に派遣し、湯川の協力を要請する。

塚原の死因は、一酸化炭素中毒であることが判明する。
塚原は、15年前に自分が逮捕した殺人犯、仙波(白竜)が、服役後、出所してから行方が分からないのを追って、この瑠璃ヶ浦に来たらしいことが分かる。

仙波は、15年前に、三宅伸子という女性を殺し、有罪となって、服役していた。
東京に住んでいたが、瑠璃ヶ浦の出身である。
実は、川畑節子も結婚前、東京で働いていた。

少しずつ真相に迫る、湯川と、岸谷美砂。
恭平は無邪気に花火などを楽しんでいる。
湯川は、子供嫌いだが、恭平の真面目な質問、疑問にはきちんと答えてやる。

夕食の紙鍋料理を見て、何故紙が燃えないのか、恭平は関心を示す。
紙が燃える温度は300度、紙鍋には、出汁と言う水分が入っていて、常に沸点の100度以下に保たれているから、火がつくことはない、湯川は丁寧に説明し、恭平も聞き入っている。

塚原が、一酸化炭素中毒死、と言うことになると、現場も犯行時間も限られて来る。
湯川は推理を働かせる。犯行の手順がほぼ解明できたと思った時、一つ、重要なことが説明がつかない。犯人と考えられる人間は、足が悪く、鍵となる手順の一つが実行不可能なのだ。
湯川が別の可能性に思い当たった時、恭平も、何故紙鍋が燃えないか、教わったことが、不可解なことをやるように言われた、そのことの意味に繋がることに気づき、湯川のところに確認に来た。

ミステリー仕立てですが、ストーリーと同時進行して行く事件というわけではなく、登場人物の秘めた過去、それも、ずっと一緒に暮らしていながら、話していないこともある、非常に仲のいい家族なのに、それぞれが秘密を抱えている、そんな事情が、次第に明るみに出て来る、そういう感じの展開なので、湯川が手際よく次々と問題を解決して、真相を暴く、結論に至る、と言う感じはなく、のんびり感さえ漂います。結構深刻な事情の積み重ねなのに。

成実、こと杏が、美しい海に潜り、自由に泳ぎ廻る姿は、パリ・コレのモデルでもあった、細身の完璧なスタイルが調和して、この姿が一番似合うのではなどとも思ってしまいます。そして、海を守るために先頭に立って、反対運動をする。海を破壊するようなことはしないと言っているし、開発が始まっても、旅館は賑わう・・・などとちょっと書きたくなりました。
何の問題もないと思える成実が、一番大きな秘密を抱いている。どうしてあんなに天真爛漫でいられるのか、と思ってしまう。

たった三人の親子が、それぞれ秘密を抱いている。父親達が家族を守ろうとする姿が印象的です。
ただ、この映画は、あくまでガリレオこと湯川が絶対的な主人公であり、事件やその経緯も、彼が解決する対象に過ぎません。
その点は充分に考慮されていて、あくまで湯川が出向いた先で起きた事件、それも知り合った少年が巻き込まれているらしいと気づいて、積極的になる、という形をとっています。

そのためか、ちょっと気になる点が少々ありました。
塚原を殺す、と言う短絡的な行為。警視庁捜査一課の刑事だった人間です。仙波事件の担当者であり、実刑が確定した後も、刑期を終えた後も、この事件そのものに関心を持っていたことは、当然警察の同僚も知っていたこと、仙波の失踪も知られていたし、彼を追って故郷へ行くことも予想できるし、更には、三宅伸子を殺した時、現場に誰がいたかも分かっていたかも知れない、少なくとも仙波や伸子を巡る人間関係は調べ上げられていたはず。

ただ一人、秘密を知っていたのであればともかく、事件を担当した、捜査一課の刑事を・・・不自然さ、と言うか、彼を除いても、寧ろ秘密をこじ開ける結果に繋がりそうに思えました。
元刑事だったら、丁寧に調べるということでもないでしょうけど、地元警察が、当初事故死で片付けようとするのも不自然に思えました。
まあ、家族を思う、逸る気持ちが先に立ったというところでしょうか。

関係者達が淡々と生活していて、後悔とか罪の意識とかまるでないように見える。
まあ、事件についてはこの位にしておきます。
繰り返しになりますけど、自身や身内の犯したことや、そのために生まれた状況、にケロッとし過ぎている。
恭平を迎えに来て、ケロッと帰る父親も、自分の姉の家で一家が関わっている事件が起きているのに。

湯川は、嫌いなはずの子供、恭平を、言わば、巻き込んだ、犯罪に加担させた(しかも偽りの理由を言って)とも言えることに心底憤慨したと言えると思います。
子供が嫌いと言って、大人が子供のレベルを装って、心にもないことを言ったり、態度をとったりすることが嫌いなので、子供の真剣な問いには、常に真剣に事実を答える。
無邪気だった子供が、大人に騙されたと知って、急に大人っぽい表情を見せる、その辺りを子役は巧みに演じていたと思います。湯川が、事実、と言うか、真理を語る、それをしっかり受け留めているわけです。

映画でも湯川と恭平の関係は納得のいく形で描かれていました。
子供・・・大人の言うことにも真剣に耳を傾ける、周囲のこともよく見ている、その時意味が分からなくても、見た、聞いた事実は確実に覚えていて、大人になって、その意味を知る、そういう可能性について、知らない、無神経な大人が多過ぎる。
子供と大人を問わず、真実と真理しか語らない湯川の方が、本質的に子供を理解していると言えるのではないか。

5年前の「ガリレオ」を殆ど覚えていないのですが、もっと騒々しい、と言うと言い過ぎで、賑やかだった、と言う感じがあります。
この映画は静謐、湯川の個性が一層際立って、圧倒的な存在感がある。
爽やかですが、若干一本調子でもあります。結構な犯罪も描かれるのに、映画全体が。
美しい海に潜っている場面で、ふと眠気を誘われ、一瞬コックリとしたのは、あまりに静かだったからかも知れません。
それにしても福山雅治氏は、大スターの地位を不動のものにした感じですね。
いい映画だったと思います。大人、子供、万人向けです。  《清水町ハナ》

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