思い出エッセイ〔426〕映画雑記帳182「【砂漠でサーモン・フィッシング】感想」

 【砂漠でサーモン・フィッシング】(ユアン・マクレガー、エミリー・ブラント、クリスティン・スコット・トーマス、アマール・ワケド、トム・マイソン、監督:ラッセル・ハルストレム)。原作のタイトルは、『イェメンで鮭釣りを』だそうです。一瞬たりとも退屈しませんでした。

などと書いてしまいましたが、冒頭は、それほど若くもない女性が、友達同士で、今の軍人のボーイフレンドはどうなの、まだ知り合って間もないのに、そんなこと言われても(実際のセリフではありません)、という感じのごく普通の場面と会話で始まります。

ハリエット(エミリー・ブラント)は投資会社のコンサルタントをしている。
彼女の交際相手、ロバート(トム・マイソン)が現れ、二人はハリエッとの家に行くが、夜中に電話。ロバートのアフガニスタン派遣が告げられる。不安に駆られるハリエット。

一方、水産学の研究者、アルフレッド・ジョーンズ(イアン・マクレガー)の元にハリエッとから、イェメンの砂漠で鮭釣りをしたいと言う大富豪の依頼の話がメールで持ち込まれる。
ジョーンズは、直ちにそんなことは不可能と返事を打つ。

ところがこの話は、中東でいくつもの問題を抱えている、英国政府筋、外務省、首相も支持する国家プロジェクトとなっていた。
広報担当官のパトリシア(クリスティン・スコット・トーマス)も口角泡を飛ばして計画を実現するようにとまくしたてる。
役所の上司も受けざるを得ない、そうしなければ、ジョーンズはクビ、とにかくハリエットに会えと言う。

ジョーンズは、ハリエットに会って、鮭の生態や習性を説明し、水のない所で鮭を飼うなど如何に不可能か、もし実現させようとしたら、莫大な費用がかかると話すが、ハリエットは、会社の一番の顧客である、大富豪シャイフ・ムハンマド氏(アマール・ワケド)にとっては(何でも)可能、話を進めると言う。
ジョーンズは、馬鹿げた事態にウンザリして、家に帰って、そろそろ(落ち着いて)子供が欲しいと妻に言うと、彼女は耳も貸さず、スイスに単身赴任すると言う。
収入も増えるし、個人的にもプロジェクトを受けざるを得なくなる。

ここまでの登場人物の殆どが、所謂、キャリア、エリートなどと呼ばれる人々で、言わば頭が切れる、会話は、ポンポン、必要なことだけ、早いスピードで交わされ、ムダ口などきこうものなら・・・それでいて、自分の意に沿わないことを言う相手に「ナチ」などと返す。態度もえらそう、モタモタしていると、相手にされない、当方などはソコノケ、ソコノケ、で、口もきいてもらえない感じ。そういう人達の話と言うのが、ちょっとシャクに触る(関係ないのに)。
それと、いくら中東で問題を抱えていると言っても、素人が聞いても、そんなこと絶対できないでしょう、という難題を実現させろと言う政府や役所と言うのも独裁者ではあるまいし、と思ってしまう。

そこでこっちも斜に構えると言うか、マトモに受けないと言うか、ムダ話など織り込みながら適当に書いてみたいと思います。丁度ごく最近、何故か鮭の生態や、イギリス料理の不味さを語ったテレビ番組を二三、見たりしたので。
(実は映画は、会話のやりとりの速さも、いかにも全てに処理能力が優れていそうな様子も、一種のテンポとしている、そして超難題を実現させようとすること自体、コメディ・タッチでもあるのですが)
私が書くことも半分以上、ジョークと言うか本気でなく、とにかくオシャベリ・スタイルで、気楽に書き流す、そうさせて頂くということです。

プロジェクトは実行されることになり、まずはダムをと言うことで、中国の三峡ダムの関係者が招かれる。
(ダムと言えば、ある時期までは日本のお家芸だったのですが、今や三峡ダムを完成させた中国がトップと言うことなのかと初めて知りました)
この時点で現地に既にダムが建設されていることが分かるのか、大富豪に会って、話を聞くのか覚えていませんが。

ジョーンズとハリエッとは、大富豪ムハンマド氏に会うべく、彼の所有不動産の一つである、スコットランドの大きな城に行く。
ジョーンズはムハンマド(呼び捨てにするのが気が引けるような、気品と貫禄がある。でも王族と言う説明はなかったと思いますが)と、近くの川で釣りを楽しむ。ジョーンズの唯一の趣味でもある。
ムハンマドに反対する勢力の暗殺者に撃たれそうになるところを間一髪、ジョーンズは釣り糸を操って防ぎ、彼の信頼を得る。

ダムと言う一番大きな課題はクリアされたが、一万匹の鮭を用意しなければならない、他、問題は山積。
国内の釣果から生きた鮭を調達しようとするが、釣り人協会(正式の名称があったと思いますが)のようなところから猛烈な反対が起きて、不可能になる(後で分かったことですが、環境関係の役所からも反対が表明されたと言う設定だったようです)。

養殖を使ってはという提案に対しては、ジョーンズは、養殖鮭は溯上などしない、と言下に斥ける。

ここのところテレビ番組であまり興味をひくものがないので(私にとってですが)、動物や自然テーマの番組を見るともなく見ることが多いのですが、最近鮭の溯上のシーンを二三回見ました。再放送が結構多いですね。関係ないことでしたが。
雌が産卵を終えるまで、雄が周囲を警戒したり、世話をやく場面は初めて見ました。
雄も雌も、産卵を終えると生を終えると聞いていたのですが、生まれた稚魚を食べようとする魚を追い払ったりするシーンもあり、調べてみると、数日は生きているようです。

舌鋒鋭く、即座に言い返したりするのに、ジョーンズは、根はマジメ。ハリエットだったか、ランチにワイン(だったかな)を飲もうとしたら、驚いて、昼間からお酒?僕なんか週に一回、土曜か日曜の七時以後と言うので、驚きました。ジョークかと思ったら、そうでもないようなので。

シティの中心部で、証券マンと思しき人達が結構な人数、昼休み、外に出て、ビールを、立ち飲みしているシーンを、これも再放送だったのか、二回以上見たことがあって、取材の、昼間から(大っぴらに)ビール?と言う問いかけに、(この国では)何でも自己責任でやるから、何の問題もないのさ、という答えを引き出していたのを記憶していましたから。

家族が昔オーストラリアでホームステイしていた時、昼休み、皆?盛大にビールを飲んでいたそうですが。学生も(何の関係もありませんでしたが)。

ハリエットのボーイフレンドが戦地で行方不明と伝えられ、更に特殊任務に就いていた者、全員、生存者はいないという情報が入り、彼女は激しく落ち込み、仕事も手につかず、ジョーンズも近づけない。

ジョーンズは、何とか慰めようと手作りのサンドイッチを持って行き、ハリエットも次第に心を開くのですが、この、心温まるシーンに、私は思わず笑いそうになってしまいました。

少し前ですが、続けて、イギリス料理が如何に不味いかという番組を二三、見たので、ジョーンズがどんなサンドイッチを作ったのか、気になってしまったのです。

特にサンドイッチに関しては、大分前になりますが、日本の俳優が、サンドイッチ伯爵の城を訪ねて、出されたサンドイッチの粗末さに呆れ果て、執事風の人がいる前で、ホラ、これですよ、と中を見せた場面がありました。
胡瓜二三片だったか、葉っぱのようなものが一枚だったか、忘れてしまいましたが、日本だったら、小さな子供でも、サンドイッチを作ってと言われたら、もう少しマシなものを作ると思える代物でした。
勿論サンドイッチ発祥当時のを再現しているのかも知れないし、今は向上しているかも知れませんが。

いずれにしても、イギリス料理の不味さと言うのは、昔から言われていて、今はそんなことはない、こんな美味しいレストランもありますよ、という紹介も見たことがありますが、割りに最近では、バラエティ番組風の取材で、例のどこでも誰でも、フィッシュ・アンド・チップス、に加えて、家庭料理の不味さ、そして私が絶対に食べたくないと思う、鰻の筒切りのゼリー寄せなどを紹介していましたが、これはオーバーな表現もあるかなと思っていたら、それから、間もなく別の番組で、やっぱり、と言うシーンがありました。

マジメな番組と言うと、ヘンな言い方ですが、結論を言うと、大学の、(おそらく)医学部の研究成果の紹介とも言える内容で、ダイエットするには、だったか、体重を増やさないためには、だったか、肝心な点を忘れてしまったのですが、とにかく週に一回、3分間、激しい運動(例えばバイシクル・タイプの器具を目いっぱい漕ぐなど)をすればいいというもので、丁寧に取材された結果を紹介した番組です。

被験者も大学のスタッフだと思いましたが、普段はいつも通りの食生活でいいということで、自身の確かランチをレストランでとる場面がありました。
非常に大きなお皿に全部一緒に盛られていて、まずそのセンスのなさ、どころか、見ただけで食欲を失う盛り付けに驚きました。

放射状に何かはっきり分からないものが何種類か並べられているのですが、一つはトウモロコシの恐らく茹でただけのもの、(メモを取っていたのですが、見当たらない)、黒っぽいものは何だったか、中心にトマトの薄切り2枚、それも大きな種だらけ、果肉がないも同然。黒い固そうな小さなソーセージ2本、ごく小さい薄っぺらな三角形のトースト2枚、バターも塗られていないし、冷えている。量だけは、いっぱいある。
そして、見ただけでウンザリする、この皿盛り料理?が次の日も全く同じ、内容が。おそらく次の日も、被験中ずっと?

勿論、何を食べようと、その人の勝手、その国や民族の文化や習慣もあるし、よその国の人間があれこれ言うことではないかも知れません。ただ例えば、薄いカチカチのトーストでなく、やはり暖かい焼きたてを食するのが普通の食文化ではないか、トマトももう少し美味しいのを栽培の段階で考えるべきでは、と思ってしまいます。

かく言う私も食料難を長年経験して、いつか美味しいものを食べられる日を夢見て来たので、食に対する考え方が違うのかも知れませんが。食は、空腹を充たすだけのものにあらず、ということを心(お腹?)の底から認識させられたのです。
フランスの某大統領が、こんな不味いものを食べる国民(人々?)は信用できないと言ったそうですが、これは逆に、食ではころばない、手強いという意味かも知れません。

大脱線してしまいましたが、ジョーンズの心遣いにほだされて、ハリエッとは仕事に戻る。二人の間に愛情が芽生える。

ジョーンズが帰宅すると、思いがけず、妻が休日を取ったと、帰って来ていた。
ハリエットを愛し始めたことに気付かれる。謝っても許してくれない。
家を出るジョーンズに、妻が浴びせる言葉。
半年もすると、やり直そうと言いに来る、それがあなたのDNAよ。強烈です。
食事に期待など持たないと、美味しいものに幻想すらないと、人間関係が希薄にならないだろうか。特に家族の間が。

ジョーンズは、養殖鮭でも溯上をするのではないか、という確信に近い思いを持つようになる。
ムハンマドに根拠は、と聞かれ、はっきりは言えない(分からない)と答える。
「それが信心と言うものだ」と言う、ムハンマドの言葉が印象的です。

そして、鮭の溯上。圧巻だし、見る者も感激します。

しかし、大事件が起きる。
更に追い撃ちをかけるように??ロバートが生きて帰って来る。ハリエットは狂喜して迎える。これはネタバレの一つとも言えますが、話はまだ続き、最後の感動的な場面へのキッカケの一つでもあります。


ダラダラと関係のないことも書きましたが、この映画は本当にテンポよく、大き過ぎるテーマが、山椒は小粒でもピリリと辛いタイプで、ストーリー的にも、セリフも、全くムダがない、固く見えるセリフや場面も多いのに、実はおかしい、コメディ・タッチでもあり、意表をつくシーンも用意して、ドラマ的にも起伏に富んだ仕上がりと言えると思います。あら筋を紹介することではこの映画の味やテンポは分かりません。つまり見ないと分からないということですが。
大きな声で笑う場面は少ないのですが、ずっとおかしい、時々シュンとする、気持ちのいい佳作でした。  《清水町ハナ》

この記事へのコメント

2013年01月16日 20:09
いいですね~。
観てみたいです。
2013年01月17日 07:37
「砂漠でサーモン・フィッシング」と言うタイトルを、面白そうと思うかどうか、がこの映画の評価につながるように思います。

この記事へのトラックバック

  • 『砂漠でサーモン・フィッシング』お薦め映画

    Excerpt: 今まで会ったことのないタイプの人間に親近感を覚え、アルフレッドは堅実な人生を投げ捨てて、荒唐無稽な砂漠の夢に賭けることになる。最初から最後までユーモアたっぷりで、仕事にも恋にも今一つ押しの弱いアルフレ.. Weblog: 名機ALPS(アルプス)MDプリンタ racked: 2013-02-01 00:26