映画雑記帳130「映画:気儘に、思い出すままに8」思い出エッセイ〔337〕

 今年の3月23日エリザベス・テイラーが亡くなりました。世紀の大女優と呼んでもいい存在でしたが、東日本大震災から10日余しか経っていないためか地味な報道でした。

一方、netでちょっと見かけ、その時検索もしたのですが、見当たらなかった、ファーリー・グレンジャー。今回もう一度調べてみたら、テイラー死去の数日後に亡くなっていたと分かりました。既にnet百科事典に項目が設けられていたので驚きました。
数十年前、トップスターの座に躍り出て、割に短い期間で去ったという感じのある二枚目俳優です。今でもよく覚えているのは、それなりのオーラがあったということでしょう。

現在活躍している俳優で、似たようなタイプがちょっと思い当たらないのですが、長身で、アン・ブライスという可愛い感じの女優と共演した作品(タイトルを忘れてしまいましたが)のポスターが当時評判になったのを覚えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
水着姿でアン・ブライスが思いっきり背伸びをしている、当時としては大胆な感じのポスターでした。

【夏の嵐】というアリダ・ヴァリ(【第三の男】の)と共演した、ルキノ・ヴィスコンティ作品を見て、何とも寂しい気分になったことを覚えています。
ヴァリが伯爵夫人を演じて、青年将校役のグレンジャーと道ならぬ恋(などと言う言葉がありましたが)に溺れて、最後には(最初からだったかも)裏切られ、罵倒され・・・我を忘れて、彼のことを密告し、哀れグレンジャーは銃殺刑に処せられてしまう。
ヴァリは心神喪失状態で彷徨う、そんなストーリーでした。

アリダ・ヴァリは非常に好きな女優でしたし、どちらかと言えば、顔を上げてキリッとしたタイプの女性を演じて来たのに、こんな役、と思ったし、グレンジャーも少し落ち目とは思っていたけど、こんな風に銃殺されてしまうのでは、もう終わりかしらと思ったりしたものです。

昭和20年代後半から30年代にかけてだと思いますが、この時期は、戦中、戦後すぐ、アメリカで制作された映画が、順不同に、つまり制作年次順ではなく、公開されたので、私の記憶では、「夏の嵐」より後に見たために、記憶していないのではと思うのですが、ヒッチコックの【見知らぬ乗客】もグレンジャーが主演だったようです。三年前に制作されています。

この作品は、交換殺人という斬新な?殺人方法で驚かされた、ヒッチコック作品としても名作とされていると思うのですが、これも言わば嵌められてしまう役ですから、そろそろ翳りが出ていたのかも知れません。
それより十年前、17歳の時に映画界に入ったそうですから(Wikipedia)。

【夏の嵐】もルキノ・ヴィスコンティという錚々たる監督ですから、主役としてはそろそろ衰えが見え出した二人をうまく使ったということかも知れません。
ヴァリはその後も【かくも長き不在】などの名作に出ていますが、中年或いは中年を過ぎた役でしたね。
グレンジャーはその後テレビなどに出ていたようです。
とにかく30歳頃には映画界を去ったも同然、出演しても、配役に名前がのらないということになってしまったわけです。

蛇足ですが、グレンジャーは晩年自伝を出して、有名女優達と関係があり、バイセクシュアルであったとも書いているそうですが(Wikipedia)、だとすると、ヴィスコンティは・・・
かのヘルムート・バーガーやアラン・ドロン、ラフ・バローネ・・・これはこの辺で止めておきましょう。 

グレンジャーと似た感じと考えてみて、ジョン・ギャビンを思い出しました。
でも少なくともゲイリー・クーパーやブラッド・ピットよりは似ている、位しか言えないかも知れませんが。
長身で、二枚目だけど、端整という顔つきではなく、どちらかと言えば大作りでそれが魅力みたいなところがある、苦しいですね。グレンジャーは不良っぽい印象ですが、ギャヴィンは品がある。何本か主演作があって、レマルクの『凱旋門』を映画化したものなど印象に残っています。

ちょっと調べてみて意外な転身ぶりに驚いたのですが(Wikipedia)、ジョン・ギャビンはスタンフォード大学の出身で、レーガン大統領時代、駐メキシコ米大使を5年務めたそうです。
映画会社はロック・ハドソン二世として売り出すつもりだったとか、またショーン・コネリーが007を引退すると言った時、その後継として契約書まで交わしたが、コネリーが翻意したためになかった話になったそうです。

ロック・ハドソン。どの位前でしょうか。NHKの海外テレビ・ドラマで、アメリカの自動車業界の重鎮という役どころだったと思いますが、中年の穏やかな二枚目で、こんな感じで今後やって行くのもいいんじゃないかしらと思っていたら、突然エイズ患者であることを明らかにしました。まだエイズが知られるようになっていくらも経っていない頃です。
エリザベス・テイラーは彼と親友で、すぐお見舞いに行って、抱き合ったと言った記事を読んだことがありますが、間もなく亡くなったハドソンにしても、テイラーにしても、ハリウッド全盛期の大スターで、今とは比べものにならない高みに立っていた人達です。

特にエリザベス・テイラーは、絶世の美女であり、子役で映画界に入り、ハリウッドに君臨していた人ですから、私はリズ・テイラーのファン、と言える感じではないんですね。今、日本にやって来て、気軽にファンと接するスターと時代が違うということかも知れません。

エリザベス・テイラーがえらいと思うのは、年をとると、姿を消すに等しい大女優が多い中、最後まで自分の今の姿で堂々と語っていたことでしょうか。

一度書いたことですが、私が、エリザベス・テイラーが普段の華麗な美しさと違って、内面からの美しさを滲ませたと感じたのは、【陽のあたる場所】で、モンゴメリー・クリフト演じる、死刑が決まった恋人に会って、変らない愛を誓う場面です。
本当に美しいと思いました。

このようにテイラーと演じる人物が一瞬同化したと感じる時初めて彼女にシンパシーを持つのですが、大体クレオパトラがテイラーに歩み寄るような感じがあり、大女優ではあるけれど、親近感を感じたことがあるかというと、殆どなかったと答えざるを得ません。

それがモンゴメリー・クリフトとなると、作品について、演技について、一つ一つ語ることができます。
この俳優は好きとか贔屓とかいうことはあっても、所謂熱狂的なファンとか追っかけなどと言う心境は分からないのですが、モンゴメリー・クリフトは結構好きで、映画が来れば見に行きました。

【地上より永遠に】【陽のあたる場所】が特によかったと思います。
【終着駅】なども、あの、人を捉えて離さない目で訴えられれば、誰でもyesと言ってしまいそうですが、相手役のジェニファー・ジョーンズは、思わせぶりな態度で、はっきりしないまま去って行ってしまうんですねえ。

大体ジェニファー・ジョーンズ(【タワリング・インフェルノ】でフレッド・アステアと親しくなったものの、形見の猫を残して命を落とす役)は、美人と思ったことはなく、どうしてこの人が度々ヒロインの座を得るのかと不思議でしたが、思わせぶりな演技で、男性を迷わせ、しかし去ってしまう(現実とドラマを混同しているわけではありません)。【黄昏】では、かのローレンス・オリビエを棄て去るし、【慕情】の舞台、香港では、ウィリアム・ホールデンから死別という形で去る。
残された男性は連綿と思いを断ち切れないわけです。

汽車に乗る彼女を、モンゴメリー・クリフトは、必死の縋る目で、思い留まらせようとするのですが、未練タップリの様子を見せながら、決して降りたりはしないんですね。
今だったら、汽車に乗り込んでしまうかも知れない。当時とモラルの違いがあったかも知れません。

ウィリアム・ホールデンは、【クワイ河マーチ】とか、出演作品も多いし、日本でもお馴染みの俳優でしたが、家の中で転んで怪我をして、出血多量で亡くなり、何日も気づかれなかったとか(Wikipedia)。寂しい話です。

男性で目が大きいと(俳優の話しですが)、感情が生のまま出るか、逆に緊張に欠けるような感じがあるように思えるのですが、モンゴメリー・クリフトの目は大きいけど、目の表情で感情を巧みに表し、じかに訴える力を備えているように思いました。目で語り過ぎのようなところもなくはなかったのですけど。

今ここでフランス映画、俳優に飛ぶつもりはありませんが、目が大きいと言うと、すぐジェラール・フィリップを思い出します。出演作品に恵まれたという点でも、人気の面でも一時期を劃した俳優でしたが、私は目が大き過ぎて、キリッとしていないという不満?を当時は持っていて、今頃になって、素晴らしい、演技も完璧な俳優だったと思い出して、もっとキチンとファンやっておくんだったと後悔しています。36歳で亡くなってしまいました。

クリフトに戻ると、あれだけ人気のある俳優だったのに、若くで亡くなってしまったという思いしかなかったのですが(当時は)、事故で顔に怪我をして、整形もうまくいかないで、自暴自棄になり、薬物に手を出したりして、俳優としてはジリ貧状態と言うか、映画も来なくなって、45歳で亡くなりました。
本来ならいよいよ俳優として成熟する前の早過ぎる死でした。

それから昔会話学校の先生が、日本人はどうしてモンゴメリー・クリフトというのだろう、モントゴメリーなのに、と何回か言っていましたっけ。

エリザベス・テイラーにちょっと話を戻すと、子役の頃の【若草物語】など、まだ輝ける美人女優ではなく、四人姉妹の一人で、映画そのものが懐かしい思い出として記憶に残っています。
何度も映画化(テレビ映画を含めて)された作品ですが、1949年版にエイミー役で出演しています。
メグがジャネット・リー、ジョー、ジューン・アリスン、エイミー、エリザベス・テイラー、べス、マーガレット・オブライエン。

マーガレット・オブライエンは、子役として既に非常に有名で、私も、終戦直後、小学生の時【迷える天使】というのを見に行きました。
私はこの【若草物語】以後、彼女を映画で見たことはなく、子役のまま引退して、その後国連関係の仕事をしていたような記憶があるのですが、関連した出典を見つけることができず、勘違いかも知れません。

長女メグのジャネット・リーは、【サイコ】の、シャワーを浴びている時殺されてしまう女性ですが、トニー・カーティスと結婚したことでも有名です。
名前は知られていた人ですが・・・

ジョー役のジューン・アリスンは、当時かなり人気がありました。
美人とは言えず、声もガラガラで、庶民的な雰囲気が受けたんでしょうか、主演映画も来ていて、見たと思うのですが、記憶していず、大分後で、【三銃士】(ジーン・ケリーの)にも適役とは言えない、王妃のおつきの役で出ていたことを思い出したのですが、驚いたことに、ジーン・ケリーがダルタニアンを演じる【三銃士】が探し出せませんでした。
ジューンは、ダルタニアンと愛し合うけど、殺されてしまう、悲劇の女性役でした。

ジーン・ケリーと言えば、フレッド・アステアの後継者と言われた程、ダンサーとしても有名な人でしたが、【三銃士】に出ていたことは書いてあるのですが、その作品については全然出て来ません。
旧いからと言って、出ていないというわけではないけど、こうやって、忘れられてしまう作品もあるんですね。因みにアトスはヴァン・へフリン、その、悪女の奥さんは、ラナ・ターナーという、当時セクシー女優などという古めかしい呼び方をされていました。美人女優でしたが。
チャーリー・シーンなどが出ている【三銃士】が1990年代に制作されていたことは全く知りませんでした。

【三銃士】は、有楽町の映画館に家族で見に行って、当時は立ち見の場合も結構あって、少し高い料金で二階の指定席をとったのですが、横に漫画家のサトウ・サンペイさんがお子さんを連れて、見えていたことを記憶しています。

我が家の歴史をツラツラ振り返ると、あれは昭和30年代後半、つまり1960年代前半。【三銃士】の制作は1948年ですから、十数年も経って、ロードショーで来たのかしら・・・
1973年にマイケル・ヨーク主演のがありますが、これは日本で公開されたかどうか。
いずれにしても1973年版でないことは確かです。

などと断定的に書いたのに、これが全くの勘違いでした。こういうこともあるという自戒のために上の記述を残したままにしようと思いますが、何故絶対1973年のではないと思ったかと言うと、ウチの子は結構早くから親と一緒に映画になど行かなくなっていた、それが理由ですが、念のために聞いてみました。

あっさりサンペイさんと会った時は、マイケル・ヨーク主演のだ、チャールトン・へストンがリシュリュー枢機卿だったのは覚えているけど、他の配役は覚えていないとのこと。親と一緒に映画を見たのと聞くと、あの時は何故か、食事もしたし、と言います。
更にジーン・ケリーのなんか見てるはずないでしょ、と言われました。

古い記憶はよほど裏づけを取らないと、と反省した次第です。
実は私も【三銃士】、マイケル・ヨークと最初思って、調べたのですが、まずマイケル・ヨークの名前が思い出せず、【オリエント急行】に出ていたのを思い出して、そこから名前を引っ張り出したのですが、うっすら覚えている容貌と別人のような写真で、【三銃士】には確かに出演しているけど、作品について全く情報を得られませんでした(オクスフォード大学出身で、英国人であることは分かりましたが)。

そこでジーン・ケリーに飛んでしまったのだと思います。これは内容やシーンも結構覚えていて、ダルタニアンが初めて三銃士と出会う場面とか、王妃がビロードのカーテンのような仕切りから、華奢な白い手だけ出すシーンとか、他にも思い出せます。
実際に見たのは、おそらく学生時代で、記憶が飛ぶと言っても限度があるという思いです。

子供の頃、少年少女世界名作全集の中でも『三銃士』は大好きで、何回か読み直したものです。
アニメも含めて、何度も映画化されているようで、いまだにファンが多いようですね。
フランスのフィギュア・スケーターで、名前を忘れてしまいましたが、剣を持って、衣装も三銃士のノリで、チャチャチャチャチャっと剣の捌きを見せる人がいましたね、結構人気があったと思いますが。

今回みたいに昔の人達のことを書いていると、確かに日本で上映されたのに、作品紹介が上がって来ず、私も思い出せないままに忘却の彼方ということになってしまうようで、寂しいことです。

大脱線してしまいました。ジューン・アリスンので、もう一つ思い出しました。【グレン・ミラー物語】です。
とにかく当時はエイミー役のエリザベス・テイラーが、知名度が一番ないということで、その分、初々しい感じがあったわけですが、覚えているのは、毎晩寝る時に、洗濯挟みで鼻をつまむことで、あれは何のためだったんでしょうか。鼻をあれ以上高くする必要はないし、鼻の穴が少し上を向いているのを直すためだったのかしら

ジャネット・リーで【サイコ】が出て来たので、アンソニー・パーキンスなども思い浮かびましたが、当時は相当人気があったのに、私は全く関心がなく、主演作品を殆ど見ていません。
チャールトン・へストンあたりがいいかしら、と思ってみていますが、いずれにしても長くなったので、一旦休みます。


日本では田中好子さんが亡くなられました。テレビなどにもよく登場して、可愛いし、本当に感じがいい、姿を見るだけでホッとして、癒される気分になれる女優さんと思っていましたが、一番印象に残っている映画は、女優になって間もない頃に主演した、【土佐の一本釣り】です。ご実家も釣具店だそうですが(Wikipedia)。
20年も前に発病されていたそうで、肉声の感動的なメッセージを映画のワンシーンとしたことと言い、眞のプロで、真に強い、真に自己を完璧に律することができる方だったようにお見受けし、感銘を受けました。ご冥福をお祈りします。  《清水町ハナ》

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