時事雑記帳34「Nスペ「沸騰都市のそれから」」思い出エッセイ〔176〕

 「NHKスペシャル:沸騰都市のそれから」(3月30日21時~22時)。新聞番組紹介欄には、‘バブル崩壊後のドバイ’‘富豪が消えたロンドン’‘出稼ぎ者大量帰国・怒りのダッカ’という副題がつけられています。

去年、2008年の5月から始まった、NHKスペシャルの「沸騰都市シリーズ」のその後を報告する番組(4都市について)。
100年に一度と言われる“金融危機”の影響を、どの都市も人も、大きく受けており、その現況が取り上げられています。

個人的に、全ての“沸騰都市”をブログで取り上げた者として、紹介する義務?があるように感じました。

まず結論をひと言で書くと、どの都市もアメリカ発の金融危機の影響から逃れられなかった。

ドバイでは、バブルはあらゆる面で崩壊した。
7億円の家は4億円になり、土地価格の下落率は4割。

ロンドンでは、オークションにかけられる美術品等は次々に売買不成立。

ダッカでは、海外の出稼ぎ先から送り返された労働者で溢れ返っている。

イスタンブールは、トルコの経済は大きく失速。人々の怒りはアメリカに向かっている。デモ行進も行われている。

(私のブログでは、上記4都市の放送分を、〔119〕〔120〕〔124〕〔125〕で取り上げました。その際取り上げた、沸騰都市が沸騰していた頃の記述については省略します)

ドバイの大富豪M氏は当時、得意の絶頂にあり、6兆円を超えるプロジェクトを動かし、「人はナンバー・ワンだけ覚えている。ナンバー・トゥー・スリーは忘れられる」といきまいていた。

世界から流れ込んだマネーは引き上げ、株の値下げは71%。
流れ込んだ金は流れ去って行く。

上記M氏の表情は硬い。全ての開発計画は見直し、15%の従業員500人を解雇した。
会社存続のため、解雇やプロジェクトの見直しを行っていると言う。

どれ位の開発やプロジェクトが中止されたか分からない。
(但し、中止を伝える記事もあった(筆者)ブルジェドバイは、建設を続行し、世界一の高さを確保する)
工事中断のため必要なくなった工事機械が売りに出されている。

一年以上前に投資で儲けたイラン人投資家がブルジェドバイのワンフロアを買ったが、当時26億円だったものが半分になった。
不動産の資産価値が半分に減り、70の物件を塩漬けにしている。
「一週間で何もかもが売れたのに、毎日全てがダウン、ダウン」

一年半前、ロンドンは好景気に沸き、世界の金融都市一位をアメリカから奪う勢いだった。
ここ数年、ロンドンに移り住むロシア人が25万人に急増していた。
リビングストン市長は、外国人優遇政策を推し進めた。

そのロンドンは今、外国頼みの景気対策の脆さを感じている。
嘗ては、広場を埋め尽くしたロシア人が集まらない。
ロシア企業のロンドン進出はピタリと止んだ。ロシア企業は全て消え去った。
ロシアの経済成長率は、今年0.7パーセントである。

外国人富豪の中で、行方が分からなくなった者にタイのタクシン氏がいる。
一年でサッカーチームを売却。イギリス政府からビザ取り消しの措置を受け、行方をくらましたままである。

ロンドンはマネーの動きが止まると、一たまりもない。
失業した金融関係者は3万人に上ると言われる。

消費も冷え込み、大手チェーン店、ウールワース破綻。

しかしリビングストン市長の考えは全く変わっていない。

トルコのイスタンブール。女性の経団連会長の考えは、大企業を引っ張って来て、EUと共に歩むという考え方で、実質的にもEU経済圏の一員となっていた。
今や、EU加盟より、IMFに救済を求める立場である。

ボスポラス海峡を見渡す海辺には釣り人が溢れている。釣った魚を売って暮らしているのだと言う。

イスラム・ファッションで急成長したKさんも、今年のショーは中止。売り上げも落ち込む。
しかし、イスラム派はヨーロッパ派に比べて、深刻ではない。余裕がある。
「イスラム金融は強欲な資本主義とは違う」

バングラデッシュでは、海外マネーが本格的に入り込んでいないので、影響が及んでいない。
金融危機など知らない、何の影響もないという商店主もいる。

80万円を借りて、縫製工場を営むIさんは、大成功し、この一年で工場を更に2倍に拡大していた。
しかし、今抱えている注文は、金融危機の前のアメリカからの注文である。

元請けの工場は、注文が半減。棚は空っぽ。従業員も暇である。
Iさんが次の注文を取りにやって来る。事態を理解していない。
10%の縫製工場が破綻。

ドバイのプロジェクトには、日本企業も深く関わっている。
大成建設は900億円の受注を持っている。

ドバイに乗り込んだ日本企業にも大きな痛手。モノレールの受注について、今年になって、大きな見直しを言われる。高層タワーは中断して、低層部分のみなど。来年の受注はいまだにない。

バングラデッシュは、アジア、中東に100万人の労働者を派遣していた。
毎日帰って来る。特にドバイからの帰国者が目立つ。
翌朝の飛行機に乗るから用意しろと言われたと訴える。

(シリーズで取り上げられていた、バングラに小学校を建てたいと思っていた)Hさんは、全く仕事に就けないまま帰国させられた。
妻と二人、両親の所に身を寄せている。
60万円の渡航費用は借金である。田んぼを売っても20万円が残る。
「いっそ、死体で帰って来た方がよかった」

ロンドンでも、外国人労働者が追い立てられるように帰国している。
空港までのバスの順番がなかなか廻ってこない。

ロンドンにやって来たポーランド人は70万人。20万人は帰国した。

繁栄の時は安価な労働力として呼び寄せられ、不況の時は、調整弁として解雇される。

ドバイに、ロンドンで莫大な富を築き、(金融危機の影響を蒙った)ロシア人、コルシェフ氏が現れる。
彼は、UAE海外貿易省を訪れ、モスクワで開催される国際投資フォーラムにドバイの大臣を招待した。

この日、モノレールの工事現場を、シンガポールの総領事が訪れる。

イスタンブールのイスラム・ファッションに、ある国の注文が増えて来た。イランからの注文である。
スンニ派とシーア派と言っても、同じアラーを信じる者として、強い連帯感を持ち、特にイランは、アメリカの経済制裁を長く受けているから、金融危機に巻き込まれていない。

ボスポラス海峡のトンネルが漸く完成に近づいている。
イスタンブールは、中東の巨大なイスラム・パワーとヨーロッパを結ぶ接点である。

アフリカの富豪が、ドバイの(建設途中の高層ビルを←だと思いましたが、違うかも知れません(筆者))買いに出て来る。6億ドルが3億ドルである。

ダッカの縫製工場主は、直接取引を試みる。

小学校の先生は補修塾の教師の仕事を得た。

21世紀は、都市の世紀。欲望と矛盾が沸々と煮えたぎる、沸騰都市が世界に出現している。
(以上、番組紹介。シリーズとして放送分で既にブログで書いた部分はカットしました)


「沸騰都市のそれから」をシリーズ終了からいくらも経っていない時に放送する必要がある。今回の金融危機は様々なところに大きな影響を及ぼしているとあらためて感じさせられました。
ドラマのシナリオを8割書き換えたという記事も見たことがあります。
沸騰都市をほんの僅かな期間で、微温都市或いは冷凍都市に換えてしまう場合もあり得るようです。

今後もどういう状況になるか分からないという意味でも、特に今書きたい感想はありません。
このシリーズに登場した人々が、様々なスタイルで今を生きていることに感慨を持ちました。

特にダッカの、縫製工場主。金融危機も、今自分の仕事が危機に瀕していることも知らないで、元請けから呆れられる、しかし、しっかり直接取引に切り替える。実直一途のようで、進むべき道を勘で見分ける。

ドバイの海外貿易省に現れた、ロンドンの大富豪は、恐らくプーチン首相と直接のコネを持っているのでしょう。別のシリーズ、「プーチンのロシア」で得た情報で、考えついたことです。

大幅な計画縮小を迫られている、ドバイのモノレールの現場に現れたシンガポールの総領事。あくまで素早く、あくまで賢しく、ということでしょうか。
不定期雇用労働者は「調整弁」であるという言葉を使ったのも、この国の首相でした。
スンニ派とシーア派でもいざという時にはすぐに手を組むということも学びました。

感想の最初の部分を繰り返せば、今回の金融危機は、どこに、どんな形で、どんな影響を及ぼすか分からない、それが感想というより、勘、感じというところです。  《清水町ハナ》


【訂正】上記、絵画等のオークションで売買が成立しない事実を、ドバイのように記述していましたが、ロンドンです。訂正いたします-09/04/16

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