時事雑記帳28「Nスペ「沸騰都市:シンガポール“世界の頭脳を呼び寄せろ”」思い出エッセイ〔165〕

 「NHKスペシャル:沸騰都市シンガポール」(2月15日21時)。新聞の番組紹介の副題は、“科学者・投資家・美女 あらゆる分野の才能大集合”。

フォーミュラーワン世界選手権の、世界初の夜間レースがシンガポールで開催された。
シンガポールのリー・シェンロン首相の狙いは、世界から人材を集めることである。

シンガポールは、この金融危機を一番早く乗り越えると思うと、あるアメリカ人投資家は言う。
一方外国人工事関係者は容赦なく切り捨てられる。

高級車から降り立った外国人セレブが向かったのは現代絵画のオークション会場である。
あるインド人投資家は買いたいものは何でも買うと言い、(シンガポールは)この世の楽園というベルギー人投資家もいる。
「(この絵)たった3000ドルよ。子ども部屋にどうかしら」

シンガポールに1億円以上の投資をしているアメリカ人は、アメリカはダメと言う。
シンガポールは世界の優秀な人材を集めている。

去年の12月、コンピューター・グラフィックの会合が開催され、世界の名だたるクリエーターが集まった。
シンガポールには50以上のアニメ・スタジオがあると勧誘される。

シンガポールの一人当たりの外貨準備高は世界一である。
危機の今こそ人材を獲得するチャンスであると(彼らは)考える。

1965年(マレーシアから分離独立して)建国したシンガポールは、人口480万人。面積は東京23区とほぼ同じ。天然資源は殆どない。
7%の成長率を保っていたが、今年はマイナスに転落する。

リー・シェンロン首相は、リー・クアンユー首相 (初代首相、国父と呼ばれる)の息子であり、ケンブリッジ大学卒業。
(Wikipedia他によると、軍人出身。米陸軍大学留学。ハーバード大学院留学(筆者))

「バイオポリス研究所」では、バイオテクノロジーの科学者を、最大の人材獲得のターゲットにし、2千人の科学者が集まっている。
世界の有能な科学者を軒並みリクルートしている。

日本からも優秀な科学者を続々と集めている。
京都大学のI教授は、現在70歳だが、定年間近に引き抜かれ、20人のスタッフと共に研究所に入った。
大腸癌の治療に繋がる画期的な研究をしている。

バイオ科学者を集めるのは、シンガポールを医療大国とするためである。

白血病の研究をしているO准教授も、京大からシンガポールに移った。
研究環境は日本とは比べものにならないと述べる。
高価な実験用の必要品は彼の意向通りに購入できる。

研究室の予算がいくらなのか、O准教授も知らない。

契約期間は3年。実績を挙げられないと、契約は更新されない。
ボストン、他の所に比べても、いい待遇。向こう10年は帰る気はない。

大型の浚渫工事が各所で行われ、外国人労働者が約15万人働いているが、母国の10倍の収入である。

バングラデッシュから来たHさんは、教師だったが、故郷に小学校を作るため、やって来たが、まだ仕事を得られないでいる。

倉庫にベッドを並べただけの所に400人以上が住んでいるが、雨漏りがひどく、エアコンもない。病人がしばしば出る。
仕事場にはトラックの荷台に乗って行く。

Hさんは、故郷に病気の妻と4人の家族を残して来ている。
60万円を払って、シンガポールに来たが、仕事がなく、家族を呼び寄せられないまま2年が過ぎた。

女性も、フィリピン人が多く来ているが、メイドの仕事が殆どである。
セブ島から1年前に来たMさんは、半年に一度、妊娠検査を受ける。
陽性だったら、退去である。「シンガポールも住めば都」というが。

外国人労働者を徹底的に管理し、「不法労働者」(という言葉とは)無縁である。

シンガポールも金融危機の深刻な打撃を受けた。株価が50%下がった。
首相は、危機を乗り越えるためにも、世界の優秀な人材を集めることが必要と記者達に述べる。

I教授は更なる人材を呼べと言われ、人材獲得を任される。
IPS研究の山中教授を呼べ(とさえ)言われる。

200億円をかけた癌研究所を建設している。
30代を中心に、世界の研究者をリストアップ、獲得を目指す。
I教授はまず、女性のインド人研究者を呼ぶ。

もう一人のO准教授は焦っている。
中間研究者が次々と解雇されている。評価基準は論文発表一人8本(年?)。
発表対象として認められる研究誌は、御三家、“NATURE”、“CELL”、“SCIENCE“の三誌である。

一流研究誌に論文が載らない研究者が随分追い出されたとO准教授は言う。

‘造血幹細胞’(というもの)が生まれる瞬間を撮影しようと試みられる。今までに成功例がない。
成功した。早速“NATURE”の編集部に送る。
「興味あり」と返事が来れば、掲載率は7.8%である。(このセンテンスについて、聞き間違いがあるかも知れません(筆者))

労働者が集まる‘リトル・インディア’では、失業者が急増している。

バングラから来たHさんは、まだ仕事が見つからない。
病気の妻にお金を送ったために、手持ちの金がない。
お金を借りようと、バングラ人の知人を訪ねるが(露骨に嫌な顔をされる)。
漸く1300円借り、あと一ヶ月暮らせる。

労働者を支えるNGOに大勢が集まる。
お金を払って、ここへ来たのに、仕事がない、帰れない。
労働省に向かい、担当者と話そうとするが、言葉が通じない。

「外国人はバッファー(調整弁)である」とは、首相の、外国人記者に対する言葉である。

「バイオポリス」には次々と新しい人材が集まる。
34歳のフランス人研究者は、‘一卵性双生児が生まれるメカニズム’を研究しているが、4人のスタッフを与えられる。
最終目標は、双子を作るメカニズムがクローン研究に大きな(示唆?成果?)を与えることである。

O准教授は落ち着かない。NATUREから返事が届く。不採用。
「研究の信用性は認めるが、インパクト不足」と回答。
シンガポールでは、並みの研究者はいること(自体が)まかりならぬということだ、とO准教授。

アジアで最も豊かな国、世界に冠たる人材大国を打ちたてようとしている。
「日本では、ネマワシに時間がかかる。シンガポールでは一斉に一つの方向に邁進する」と首相の言。

Hさんは、契約を打ち切られ、一年七ヶ月の期間を残して、失意の帰国。
自分の子ども達は、(自分が味わったような考え方をする人間には)育てないと言う。

250億円を投じて、環境重視の開発を目指す施設を設立する(予定)。
一千億円を用意して、日本の皇居の周辺、渋谷、虎ノ門、他を絶好の投資対象と考えている。
(以上、番組紹介。メモの取り違いはお許しください)


番組を見終わって、何とも言えない気分になりました。到底付いて行けない考え方というか、人間を何の躊躇もなく峻別している。
特に外国人女性労働者に対する妊娠検査の非人間性には唖然としました。
「外国人は調整弁である」とはっきり言われているのです。
こういう国が日本を狙い出していることへの警戒感も強く感じました。

優秀な人材獲得ということでは、例えば米国も同じような方法をとってきたわけですが、シンガポールのように、国というより都市のレベルの規模の国が、ここまでの手段を選ばない方法で、自国優先というより、華人絶対優先の政策をとるなら、対抗策をとる必要がある。ネマワシなど後回しにして。

シンガポールの医療が優れていることは、知られていることで、中東の金持が行くという記事を目にしたことがありますし、知人で、シンガポールの病院を利用している人もいます。

マレーシアでは、マレー人優先、中国系は二番手。
シンガポールでは、まず中華系、次にマレー系、インド人が最後と言われましたが、超のつく人材であれば、人種を問わず、受け容れられるということでしょう。しかし、最終的にはシンガポールと華人の利益のためだけに。

20年も前になりますが、当時のリー・クアンユー首相は、中国人であれば、マレーシア国籍でも、パーティに招き、特にマレーシアの最高学府を卒業した女性は、優秀な人と結婚して、頭のいい子どもをたくさん産むようにと言われたそうです。

実際に参加した女子学生から聞いたことですが、首相の子息もその夫人もケンブリッジだかハーバードだか、トップクラスの成績で卒業した秀才、ただ、夫人は赤ちゃんを出産後亡くなった、それにはある話しが囁かれている、そんなことを聞きました。

国レベルの話しなど、一個人の私には関係ないこと、そう思っても、やはり人にしゃべるべき話しではない、そう思い直して、黙って来ましたが、ある日、“TIME”だったか、“NEWSWEEK”だったか、リー・クアンユー首相と家族の写真が掲載されていました。
それを見て、なるほど、国父たる首相は、自分個人のことなど考えていない、と理解しました。只管、シンガポールと、華人の将来だけを考えているのです。

それにしても、今日の「沸騰都市」は、沸騰しているのは、他に対してではない、醒めかけている沸騰状態を自国のためだけに何とでも元通りにして、更にグズグズしている国など出し抜いて、沸騰の火種を頂こうとしている国と人々の話しでした。  《清水町ハナ》


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