時事雑記帳26「Nスペ「沸騰都市:ヨハネスブルク“黒いダイヤ”たちの闘い」思い出エッセイ〔159〕

 「NHKスペシャル:沸騰都市ヨハネスブルク」(1月25日21時)。上記のタイトルは、NHKスペシャル・ホームページに紹介されているタイトルです。新聞の番組紹介欄は、「南アフリカ 黒人富豪が続々誕生!生き残れるか宝の山の経営者」とあります。

久しぶりの沸騰都市シリーズの再開です。
当然ながら、随所に‘金融危機’という言葉が挟まれ、ひたすら上に向かって沸騰していた都市も思わぬ荒波に襲われていると冒頭に語られます。

放送順序とは違いますが、番組後半で、韓国の投資家が、「韓国の殆どの人は南アフリカがどこにあるかも知らない」と言う場面があり、ごく簡単に南アフリカ事情について記しておきたいと思います。

〔長い間、南アフリカ共和国は、「悪名高き人種差別の国」と呼ばれ、白人以外の有色人種をアパルトヘイトと呼ばれる政策によって差別し、国際的に制裁を受けてきた。1994年の総選挙で、黒人勢力が勝利して、ネルソン・マンデラ大統領の誕生と共に、アパルトヘイト政策は廃止された。(筆者)〕

ヨハネスブルク(南アの首都)の地下4000メートルには金の鉱脈があり、金の延べ棒一本が3000万円である。
金、プラチナ、ダイヤモンドも産出し、富が黒人層に降り注いでいる。

“黒いダイヤモンド”とは、黒人富裕層が自分達につけた呼び名である。
しかし彼らも金融危機という初めての試練に見舞われている。
“黒いダイヤモンド”が金融危機の困難に立ち向かっている、ヨハネスブルクが(テーマである)。

アパルトヘイトの時代には、黒人達は仕事や住む場所を与えられなかったが、今は勤務先に向かうサラリーマンが長い列を作っている。

Black Economic Empowerment と呼ばれる政策によって、黒人経営者の優遇が義務づけられた。
中間層や富裕層が‘黒いダイヤモンド’と呼ばれ、全体の8%、300万人を占めている。
ナイトクラブなどは、今も金融危機などどこ吹く風、という客で溢れている。

豊富な鉱物資源が、経済成長の源である。
特にマンガン生産量は世界の8割を占め、嘗て白人層が独占していた権利が、黒人層に移っている。

黒人女性のDさんは、マンガン鉱の採掘権を与えられている。
インドのミタルなどと提携して、順調だった事業が、(金融危機の影響で)正念場を迎えている。開発コストが大きくのしかかる。

マンガンの企業は、生産を減らしているし、需要も減っている。

Dさんは、アパルトヘイトの闘士であり、一年近く投獄されたこともある。
夫も闘士だったが、去年亡くなった。

Dさんの名前を一躍有名にしたのは、同じグループの同志に巨額の配当金を分配したことである。

ソウェト(アパルトヘイト時代黒人は居住区に住まわされたが、その最大の地区、(筆者))にも豊かさは及んでいる。
ひと際目立つショッピング・モールには、高級ブランド店が200、出店している。
この一年で20%以上、売り上げが伸びた。
M氏は、モーターシティの建設を考えている。

モールの入り口には、抗議行動の最中に射殺された少年の銅像が置かれている。
経営者のM氏は、白人専用の高級住宅地に移り住み、3000㎡の敷地にテニスコートやプールもある。

M氏はマンデラ(初代黒人大統領)と、40年来の、アパルトヘイトと闘った同志である。
開店以来マンデラが支えてくれたことが成功の(要因)である。

白人客が殆どの、最も格式の高いレストランに、金融危機を乗り切った、最優秀事業家として選ばれたM氏は、一人招かれる。

今も大手企業の多くのトップが白人である。
しかし、台頭する黒人勢力を無視できない。

現在建設中のオーランド・スタジアムは、経済成長の起爆剤として期待されている。
来年、サッカーのワールドカップが開催され、経済効果は2千億円とされている。
44歳のm氏は、ホテル開発のディベロッパーで、スタジアムの近くの農地を買収して、五つ星の最高級ホテルを建設しようとしている。

m氏は、貧しい家の生まれである。
ゴルフはいまだに白人のスポーツだが、m氏はゴルフ場に向かう。
ゴルファーに、ホテルを共同経営するディベロッパーを探していると声をかけるが、金融危機の影響で、交渉は難航する。

成功しても、一度失敗すると、また貧しい頃に逆戻りである。
サッカースタジアムの傍にはスラムが点在している。
雨漏りがし、水道も電気もない。
(成功者が現れる一方)貧困層は二倍になっている。
今迄は貧困を分け合っていたのに、大きな格差が生まれている。

アパルトヘイトの時代は、一つの敵に向かって、一丸となっていた。
貧困層の不満が政府与党に向かって、沸点に達しようとしている。

金融危機を逃れようと、人員削減を始めた黒人経営者も現れ、亀裂は更に広がっている。
希望が大きかった分、怒りが膨らんでいるのだ。

ヨハネスブルク国際空港に朝、中国人が降り立つ。
5千人から2万人の中国人がいると言われ、要塞のようなチャイナタウンを(基地として)、激しい値引き交渉を行う。

黒いダイヤモンドを狙うのは中国人だけではない。インド人も小型車などを売り込んでいる。

金融危機の影響が、次第に南アの実体経済に及んでいる。

マンガン鉱山の経営者、D女史は、銀行に融資を頼む。
大手銀行は白人が経営しており、預金を投資に廻すなら融資するという条件を出す。
銀行破綻の場合に補償はできないと言われ、Dさんは、強気の姿勢を崩さない。

ホテル建設を計画しているMさんは、まだ資金が集まっていず、韓国人の投資家の所に行く。そこで、韓国の金融危機が想像していたより深刻であることを知らされる。
また、韓国人の南アへの無関心さも知る。

ヨハネスブルクの治安は悪く、犯罪発生率は日本の50倍である。
最近では、黒人同士の犯罪が目立つ。貧しい者が金持を襲う。

黒人富裕層の住宅街では、ショットガンで武装した警備員が24時間警護している。

モーターシティの予定地は更地のまま。M氏は、最後の一日まで頑張ると言う。
マンガン鉱山のD女史は、銀行の条件を呑んで、融資を受けた。

ホテル建設を考えていたmさんは、故郷の農村に戻り、暫く休んで、巻き返しを図ると言う。

ヨハネスブルクでは、新しい娯楽、カジノが生まれ、週末、台は埋め尽くされる。

解き放たれ、ひとたび走り出した欲望は、留まることはない。
来年、6月11日午後4時、ワールドカップ、キックオフ。(以上、番組紹介。メモのとり間違いがありましたら、お許しください)


スピード感のある映像の流れと、「金融危機」を問題意識としてしっかり織り込んだ構成で、ヨハネスブルクの現在がよく分かる番組だと思いました。
ただ、私の世代の者には、一つの重要な時期が飛ばされているような観があります。

南アは、上に書いたように、「悪名高き人種差別の国」と誰憚ることなく公然と指弾されて来た長い歴史を持ちます。
インドの独立運動家、マハトマ・ガンジーが、最初に独立運動意識に目覚めたのは、南アで、黒人専用車に乗るように命令されたことと言われています。

差別されたのは、黒人だけでなく、ノンホワイト全てを有色人種として差別したのです。
日本人は、経済的に発展した国であったためか、「名誉白人」などという身分で、白人専用車に居心地悪く乗ることを許可されていたそうです。

マンデラ大統領の出現とアパルトヘイト廃止から、まだ十数年しか経っていません。
黒人優遇政策がとられても、黒人富裕層が生まれるまでに多くの経過があったと思われますし、マンデラ夫人や大統領自身にも並みでないスキャンダルが報じられた時もあります。

「黒いダイヤモンド」とは、彼らの自称ということですが、昔、日本で黒いダイヤと言えば、石炭を指しました。ですから、最初、このタイトルを目にした時、差別語ではないかとびっくりしました。

何とないチグハグ感を抱いているのは、私だけの事情で、こうした映像を貴重な情報として、目まぐるしく移り変わる世のスピードに慣れることを心がけるべきなのでしょう。  《清水町ハナ》

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