時事雑記帳24「Nスペ:食品産地偽造」思い出エッセイ〔150〕

 「NHKスペシャル:食品産地偽造・悪質業者を追え!」(12月14日21時30分)。副題、“Gメンの追跡に密着”“偽造業者が語る実態”。NHKスペシャルのホームページでは、タイトルが「追跡!“国産食品”偽装」となっています(番組もこのタイトルが採用されていたようですが、新聞の番組紹介欄に従っておきます)。

1台のトラックを追跡するGメンの車という、こうしたテーマとしては、珍しい、動きのある、好奇心を駆られる場面から始まります。
トラックの積荷は国産に偽造した、中国産のアサリ。追う者は農水省の‘食品表示Gメン’。

九州の水産業者が中国産のアサリを国産と偽り、9億円を稼いだという情報が入る。
霞ヶ関の農水省、4階。‘食品表示Gメン’が4年前に(誕生した)。
外国産を国産と偽装するケースが一番多い。告発は月に500件を超える。全国に2000人のGメンが配置されている。

今年9月、アサリの偽装告発が相次ぐ。「九州水産」に対する告発が9月に3件。調査に乗り出す。

「九州水産」は、福岡の柳川市を本拠に、中国や韓国から大量にアサリを輸入している。
有明海の砂浜、蓄養場に生きたままのアサリを保有している。

M・GメンとF・G・メンが調査に向かう。どこ産をどこに売ったかを確認する。
蓄養場のすぐ傍に車を着け、気づかれないように様子を伺う。

蓄養場には高い金網の塀が張りめぐらされ、中では獰猛な表情のシェパードが放し飼いにされ、人が近づくと吠え立てながら、金網をよじ登らんばかりで、「敷地内で起きたことには責任を持ちません」という掲示が出ている。
(シェパード、ドーベルマン等には、「襲え」他過激な命令を出すことも可能で、「九州水産」の敷地内は日本離れした雰囲気さえ感じられます:筆者)。

アサリを出荷できるのは、潮が引いている4時間に限られる。
この日「九州水産」は姿を現さなかった。

翌日、M・Gメンは、釣り人を装って、出かける。
「九州水産」のトラックを見つける。後ろに廻って作業現場を見る。
中国産アサリをトラックに積み込んでいる。証拠写真を撮る。尾行するがトラックを見失う。

目の前に保冷車が止まり、ナンバーを確認。
燃料が切れ、赤字を示している(これはちょっと情ない。尾行、追跡するなら、ガソリンは充分には当たり前と言いたくなりますね←尾行追跡をするのはこの日が初めてだそうです)

追跡には失敗したが、中国産アサリ出荷の証拠は握る。
福岡のGメンが調査に乗り出す。
I特別Gメンは、広域調査の権限を与えられている。

四日目、「九州水産」の調査に入る。しかし、Gメンに、警察のような捜査権や書類押収の権限は与えられていない。
熊本で出荷したアサリ65トンについて、会社側は、‘死滅証明書’を見せる。写真も付いている。しかし疑いは拭えない。伝票を徹底的に調べる。

国内有数のアサリの水産地、熊本は、安い中国産が出回れば、大きな打撃を被る。

二週間経って、Gメンは、再び「九州水産」のトラックの追跡を始める。
国産として売られている証拠を掴むチャンスである。

トラックの周りに作業員が集まり始める。「九州水産」と書かれた別のトラックが現れる。アサリを載せている。追跡して来たアサリと混ぜ始める。

追跡だけで証拠を掴むのは予想以上に困難なことである。
2173トンのアサリが国産と偽装されたとすると、7割が(数字が合わない)。

「九州水産」に調査に入る。
また死滅したという答え。
アサリが死んだという主張を覆せないか。Gメンの新たな任務となる。
3時間、事情を聞く。その結果、中国から輸入していたアサリは売られていた、死んだというのは嘘と分かる。

「九州水産・伊万里出張所」の出荷伝票には、もう一つの疑わしい数字がある。
同じアサリが偽装工作に使われているのではないか。
会社の二階には事務が一人いるだけ。社員は、伝票に「出荷しました」と書くだけが仕事。アサリを見たことは一度もないと言う。
アサリはこうして偽装されたのだ。

今月一日に「九州水産」の社長が容疑を認めた。一年で3000トンのアサリを有明産と偽装した。
今年、Gメンの摘発は4千件を超えた。

この背景には輸入に頼らざるを得ない現状がある。日本産は三分の一に充たず、中国産を国産として売っている。

★ウナギの場合
国産は需要が多く、産地偽装が蔓延している。
流通のあらゆる段階に偽装が拡がっている。
スーパーの、安く卸せという要求に応えなければならない。他社の安い見積もりを突きつけられる。外国産を偽装しなければ、その値段にならない。

偽装のキッカケとなった、国産と外国産の価格の差は大きく拡がっている。
最近まで外国産と日本産は同じように扱われてきた。それが何故偽装が拡がったか。

ある社長から聞いたところによると、平静14年、蒲焼などの加工基準に産地を表示することになってから、大きく変わった。
台湾産のウナギは国内産と品質が変わらないが、台湾産と表示した途端に注文が途絶える。

台湾産の在庫を抱えた(社長の会社)「クボタ」に偽装を勧める者がいて、国産と表示するだけで、売れた。
行政処分の後、台湾産と表示すると売り上げは再び落ちた。
良心の問題だけと「クボタ」は考える。

年末年始用のスーパーの買い付けの場に行き、話しをするが、中味は同じでも台湾産と表示したら売れないと言われる。

表示が変わっただけで売れない、消費者の不信感を招く。中国産ギョーザ事件が発端となっている。
国産と外国産のウナギの価格は次第に差が生じていたが、ギョーザ事件以後、一挙に三分の一以下にまで開いた。

今、日本の食を取り巻く環境は大きく変わろうとしている。
兵庫県の主婦のグループが食品の産地を調べているが、冷凍食品などは殆ど分からない。

国は、産地表示の義務化を強める方向だが、業者からは消極的なことばかりが出る。

日本冷凍食品協会は表示に手間がかかると(主張する)。
例えば玉ねぎは季節ごとに世界中から取り寄せている。産地が変わる度に表示を変えることは困難である。
産地に中国産と書くと、お客が買わないための表示になるとも言える。
消費者と食品業界は、表示をめぐって、すれ違っている。

中国産のウナギについて、産地だけでなく、更に詳しく表示しようとする動きがあり、例えば、抗生物質の使用他300項目以上に合格しても(問題は残る)。
中国で仕事をするMさんは、消費者に対する説明が足りなかったのではないか、中国の物全てが駄目と言ったら、食べるものがなくなると述べる。

検査項目を大幅に増やす、考えられるだけの項目を検査する、工場の水にまで検査は及ぶ、農薬が混じっていないか。

安全であることを消費者に伝えようとするMさんの試みは、全て検査済みの青いシールを貼ると、消費者は中国産とみて、買わない。

日本のウナギの6割を生産する中国(福建省など)で、日本向けウナギ養殖、日本からの注文が減り、三分の一が廃業した。
今年四月、最新の設備を持つ工場が出来たが、日本ではなく、アメリカ、韓国、マレーシア等に輸出する。アジア地域への輸出をメインに考えている。国内でも、需要が急激に伸びている。

中国で今、日本離れが始まっている。
この問題の根底には、日本の食糧事情の危うい状況がある。
検査を増やしても報われない、中国の日本離れが始まっていることは、(どういう意味、結果があるか)。
日本が、輸入食品に頼らざるを得ないのであれば、自給率4割という背景で、どう対処して行くべきか・・・(以上、番組紹介)


今までの食問題を扱ったNHKスペシャルとひと味違ったアプローチ、構成で、テンポがよく番組としても楽しめました。
導き出された主な結論の一つは、自明の理であるのに、今まであまり指摘されてこなかったことです。

消費者、それを応援する?スーパーなどは、買う側、食べる側からのみ見た視点で、しかも自分はオールマイティであると考えている。
売る側の弱さは決定的で、常にチェックされる側、一つのミスで、全体が判断され、全てが排される。
気がついたら、徐々にではあるが、売り手にもうお宅には売らないと言われたら、自力で調達できない、明日から食べる物が手に入らないかも知れない、立場の逆転に繋がりかねない状況が見え出している。

中国ギョーザ事件は衝撃的で、もうダイジョウブです、と言われても、何しろ食べ物のことですから、疑心暗鬼の状態から抜け出せない中に、“チャイナ・フリー”の先頭に立っていた、アメリカは、この辺でいいだろうと決断したら、買いを復活する。

検査項目を300に増やしても、検査済みの青いシールを貼った途端に、中国産というただ一つのレッテルとして見て、買わない。
これまでは何を言われても、従っていたが、今や、中国は高いお金を出して、日本のコシヒカリを買い、一個2千円の林檎もポンと買う。

ドル保有高が日本を越して、世界第一位となり、格差や歪みは大きくても、事実上日本を追い越しつつある。もう日本に売らなくてもやって行ける日は近い。
そして、中国が日本と異なっているのは、また日本に売らざるを得ない状況になったら、すぐに方針を変えて日本に売る・・・変わり身の速さと言ったら、失礼かも知れませんけど、あくまで実をとる、筋金入りの商売根性です。

そう、今は未曾有の世界的な経済恐慌状況。こういう時代に食料自給率4割というのは、限りなくマイナス条件だと思います。
産地偽装は、あくまで詐欺行為であり、犯罪ですが、そうせざるを得ない(と業者が言っている)事情にも番組は触れています。消費者の味方のスーパーが弾き出す仕入れ値は、中国産でなければ調達できない。しかし、それを表示したら、全く売れない。
と言って、勿論それを偽装の言い訳に摺りかえることは許されません。

例えば、ウナギは昔から贅沢品です。国産では絶対量が賄えないものを、安くて、安全で美味しいものを一ヶ月に一度は食べたいと思えば、外国産を食せざるを得ない、消費者も考える点があるのではないかと、今まであまり言われなかった点を、結論の一つにいれている、結論を出すのではなく、消費者はどう考えて、どういう答えを出すかと問を投げかけている点も、この番組が扱って来た同じテーマの中での新味と言えます。  《清水町ハナ》


【追記】(再放送を見る機会があり、上記、数行追記しました。言い訳で恐縮ですが、メモを取りながらのテレビ番組紹介は、一瞬の映像を見逃すことがあり、特に今回は動きの速い構成で、見逃しがいつもより多かったように思います)-08/12/17-

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