時事雑記帳15「NHKスペシャル「沸騰都市ロンドン」」思い出エッセイ〔120〕

“沸騰都市”シリーズ、第二弾、ロンドンです。副題に、サッカーという言葉があったので、サッカー中心の内容かと思い、ちょっと引きましたが(私はサッカー・ファンとは言えないので)、サッカーは刺身のツマ扱いです。短い時間に、外国人富豪がロンドン沸騰の 担い手である現状と、それを全面的に取り入れ、容認しているようで、大英帝国の本音と方向性が見え隠れする様をうまくまとめています。

「沸騰都市ロンドン」(NHKスペシャル、5月19日、午後10時)。「世界の首都を奪還せよ。大富豪が集結・サッカービジネス」がサブ・タイトルです。

今、世界で、エネルギーが煮えたぎっているのは、国家ではなく都市である、という枕詞?から始まります。

場面はロンドンのオークション会場。
連日売上額を更新し、主な顧客は、中国、インド、ロシアなどの、外国人富豪である。
例えば、ピカソが12億円で落札され、3時間で200億円売り上げる。

ロンドンに嘗ての栄光を取り戻したのは、こうした新興国のマネーである。
新興国のエネルギーを貪欲に取り入れることによって、長くニューヨークに明け渡していた主役の座を取り戻し、復活を果たした。

一月、トラファルガー広場を6万人のロシア人が埋め尽くした。ロシア祭が開かれたのである。

ロンドンに移り住むロシア人が急増している。
このロシア祭には、リビングストン・ロンドン市長も出席し、‘ロシア人の力と富を歓迎する’‘我々は新興国に門戸を開いて発展する’と挨拶した。

外国人の税も優遇されており、今やロンドンの3人に一人は外国人である。
外国企業の株式上場はニューヨークに迫っている。ロンドンで株式を上場している60%がロシア企業である。

ロンドンの貴族達が舞踏会を開くホールを、ロシア人が借り切って、パーティーをする。
ロシア人富豪で、コンサルタント会社を経営する、セルゲイ・コルシェフ氏は、リビングストン市長とも昵懇である。

コルシェフは、ロシア企業のロンドン進出の全てに関わっており、1件につき、数千万円を得る。6万坪の大邸宅に住み、資産は45億円(450億円の間違いでは?)である。
彼は、23歳の時、ベルリンの壁崩壊の直後、僅か1万円の金を持って、ロンドンにやって来て、コンサルタント会社を開いた。
丁度ロンドンが、外国に門戸を開き始めた時期である。

今や、世界の金は、規制の厳しいニューヨークから、ロンドンに流れ、金融センターは、中心が、ニューヨークからロンドンに移りつつある。
資金調達をロンドンで行い、世界に打って出ることが(パターン化しつつある)。

サッカーはロンドン市民にとって、人生の一部である。
「チェルシー」のオーナーは、有名なロシア人大富豪、資産2兆円と言われる、アブラモビッチ氏である。

アブラモビッチは、庶民のスポーツ、サッカーを、莫大な収入を生む企業に変えた。
500億円のクラブ収入を得ている。

他のクラブも動き、株式を発行し、それを外国人富豪が買う。オーナーがどこの国籍であるかは関係ない。

タイの元首相、タクシン氏もクラブのオーナーである。
彼は、タイのメディア王で、数千億円の資産を持つと言われたが、ロンドンに亡命同然に移住した。

タクシンは、サッカー事業に手をつけた。
「マンチェスター・シティ」を200億円で買い、更に新しい選手の獲得に125億円を注ぎ込んだ。
関連商品の売れ行きも好調だった。

最初は、タイの政治家にオーナーが務まるかという見方もあったが、サポーターからも絶大な人気を得る。
テレビ放映権、他一挙に増収が見込める4位以内を目指した。
庶民のスポーツから巨万の富を得たわけだが、サポーターとして、クラブを支えて来た労働者は締め出される結果となった。

42歳の労働者、ボブ・ダフィンさんは、筋金入りのチェルシー・サポーターだったが、一番安い席が1万円もするので、スポーツ・パブで応援するしかなくなった。

ボブは、日雇い仕事をしており、ある日、二つの仕事が入ったので、6時に出勤するが、工事に必要なトラックが来ず、結局午後の仕事が出来ず、7千円の収入にしかならなかった。

ロンドンの建設土木工事の労働者には、ポーランド人が流入して来て、次々に仕事を取って行く。
ポーランドでは、月に4万円しか得られないが、ロンドンでは一週間に8万円得られる。イギリス人は、ポーランド人より月に3万円安い賃金である。

ロンドンで増えた人口の8割が外国人であり、ロンドンの総人口の4割が外国人である。

ロンドンは、ロシアに続いて、中国を取り込もうとしている。
チャイナ・フェスティバルにも、リビングストン市長は出席し、「ロンドンは、中国と共に発展したいと考えている」と述べる。

更に、インドもターゲットにする。市長は現地出張所を開設する。
ロンドンには、インド系ビジネスマンも集まって来て、160社を超えるインド企業が進出している。
「ロンドンに進出しないテはない」あるインド人実業家は言う。

高級物件の不動産の仲介の三分の一をロシア人が買い占めているとアンドレイ・フォーミッチ氏(38歳)は言う。
ロシアという祖国への愛憎がフォーミッチを支えている。

ロンドンのロシア人を震撼させたのは、(元KGB系の)エイジェント毒殺事件である。
実業家、セルゲイ・コルシェフ氏が企画したイベント、「ロシア経済フォーラム」には、ロシア側から強い横槍が入り、中止を迫られた。

ロンドンのロシア人は、本国の情勢に敏感であり、国家への忠誠を誓っている。

タクシン支持の政党が支持を拡げ、帰国の可能性が出て来た時、チームは6位に落ち、収入も減っていた。
タクシンは、投資を節約するために、無駄な選手の洗い出しを始める。
開幕時に比べて、後半は五分の一しか資金を使わなかった。

2月、チームは8位となった。
タクシンはタイに帰って、戦略を練る。
3月、英政府は、外国人富裕層の優遇税廃止を打ち出す。

4月、「マンチェスター」と「チェルシー」が激突。
労働者のボブはいつものパブで観戦する。
前半、「チェルシー」はオウン・ゴールで先制する。2位となる。
タクシンはタイでテレビ観戦。

コルシェフは、試合観戦どころではなく、経済フォーラムの開催について、粘り強く交渉していた。
試合が後半に入ってから、自宅に帰り、テレビ観戦をする。
フォーラムは、来年から、ロンドン以外で開催をするという約束と引替えで、開けそうである。

タクシンのチームは負け、来シーズン、テコ入れをすることにする。

コルシェフは言う。「今や間違いなく、ロンドンがホームタウンである」
しかし、労働者のボブは、「これ以上外国人を入れる必要はない」と言う。

ロンドンは、(外国人に)主役の座を奪われても、復活の道を選んだのである。

労働者の圧倒的な支持を得ている「アーセナル」にロシアの買収王が仕掛けてきている。

リビングストン市長は、三選を目指し、40万人のイスラム系市民にも支持を説いて廻るが、僅差で敗れる。保守系の候補が46%の支持率であるのに対して、36%の得票率だった。

前夜のドバイの場合は、ドバイ側が完全に主導権を握って、外国人を自分達の思うがままに動かしているケースでしたが、ロンドンは、殆ど全てを外国人富豪達の為せるに任せ、一切と言ってよく、干渉をせず、彼らの手腕を利用して、王座をニューヨークから取り戻します。

英国側の本音は、優遇税の廃止、一労働者をして、外国人の移入反対を言わせる、全面的に外国人をバックアップして来た市長の三選阻止という形でしか見えて来ません。と言うより積極的に取材もしていません。

英国の本音をもっと聞きたいところですが、その前に、私は、エイジェント毒殺事件や地下鉄テロのイメージがまだ残って、暗いロンドンのイメージが消えていず、ここまで変わっている、その事実に驚きました。

それに、上記の数字を見る限り、外国人の排除など思いも寄らず、今やロンドンは彼らによって動いているというのが、実情であるようにも思えます。

日本のどこかの大学の客員教授をしていたタクシン氏が、ロンドンでサッカークラブを所有しているなど、全く知りませんでした。

ここは感情的な、或いは、思いつきの感想など書かず、ただひと言、我が、石原慎太郎知事は、リビングストン・前ロンドン市長の方針をどう考えるか、白か黒か主義では、これからは、乗り切れないことは確かに思える、とだけ書いておきたいと思います。  《清水町ハナ》

この記事へのコメント

2008年05月20日 10:59
 大変興味深いエントリでしたので、番組内容をもう一度拝読させていただきました。
 日本にいて世界を知ることは大事ですし、また、その認識する力をつけるためにも自分なりに努力しなければと感じました。
2008年05月20日 13:23
パレット様、コメントありがとうございます。一応ポイントにしていることをおっしゃって頂いて、嬉しく存じました。「沸騰都市」というのも、なかなかのネーミングだと思いますが、昨日の都市の姿が明日は変貌している時代だということを、あらためて知らされたと思っています。

この記事へのトラックバック