時事雑記帳12「NHKスペシャル「認知症医療を問う」感想」思い出エッセイ〔102〕

 認知症医療問題をテーマとしたNHKスペシャルです(1月20日放送)。番組解説欄には、(認知症は)、‘何故見過ごされるのか’‘診断されないまま3年’‘誤った治療で症状悪化、医師が引き起こす悲劇’‘治療次第で劇的回復’などと、説明的な副題が付されています。認知症を病むご本人、ご家族が、実名で登場され、実情、実体験を話され、桝添厚労相はじめ、関係者が、認知症の現場、実情、諸問題について話し合う番組です。

認知症、誰もが無関心ではいられないテーマです。若年性認知症もあり、頭のいい人もそうでない人も、いつこの病にかかるか分かりません。
最近まで、痴呆症と呼ばれました。この呼び名が、症状だけでなく、周囲の者の見る目、姿勢を如実に語っています。この番組では、認知症の種類(例えば、アルツハイマー型など)については、殆ど触れていなかったので、認知症という呼び名で通すことにします。

最初に、「今は平成何年ですか」「何月何日ですか」という簡単な質問を、医師が患者に問いかける場面から始まります。このテストが重要であるのに、行われていないケースが多いということです。

この最初の画面で、ちょっと疑問に思ったのは、どの段階で、というか、最近もの忘れがひどいと訴える患者に最初から行うのか、画像診断で、疑わしいということになったら、行うのか、ということです。

認知症ではないのに、或いは、そう思っていない患者に、こうしたごく単純な質問をするのは、時として、患者を傷つけたり、怒らせたりすると思うからです。

自分の体験になりますが、以前、激しい眩暈に襲われ、病院に行ったところ、いきなり、検査技師(多分)から、「ゆっくりと1から10まで足して、いくつになるか言ってください」と言われ、55と即答しようかと思ったのですが、一応言われた通りにしました。
次に、100から7を引いて行ってください、と言われて、二人で順番にしませんか、というところでした。

認知症は、深刻な病気ですが、認知症ではない患者を認知症扱いするのは、患者は、バカにされたように感じる人も多いと思います。何故そのようなテストをするか、事前に説明するべきだと思います。

「今は平成何年ですか」という問いが適切なのか、私など、西暦はすぐ言えても、今、平成何年?という問いは、よく家族に聞くことがあります。

つまらないイチャモンをつけないで、認知機能テストと呼ばれるテストが大切だそうです、ということを、もう一度書いておきます。
以前は、手の施しようのない絶望の病と言われたが、今は、早期発見、そして、初期の治療により、症状が進まないようにし、普通の生活をすることも可能だということです。

以下、番組の内容を、箇条書き風に書いて行きます。

・ある患者は、2年8ヶ月、認知症を、統合失調症と診断されて、投薬され、家族の手助けなしには、暮らせなくなった。
・認知症と診断されるまでに5年、それ以上かかったケースもある。
・66.1%は、診断がついたが、33.6パーセントは診断がつかなかった。

☆スタジオに、認知症を病むご本人と、ご家族が出席され、本名で、実情を述べられました。お一人ずつ、紹介して、間違いがあってもいけませんので、皆さんのお話として、書きたいと思います。

印象的だったのは、無表情で、ひと言も発言されない方がおられ、一方で、認知症とは全く分からない方、人前で発言する時、誰でも緊張するとこういう感じになるという方、と、何人かの患者さんの印象が、全く違ったことです。

・大手企業に勤務していた方で、もの忘れや計算間違いが多くなって、会社の医師の診察を受けたところ、問診と、画像診断で、認知症は否定され、規則正しい生活をすれば、治ると言われた。
別の精神科の医師の診察を受けたところ、鬱病と診断された。
もの忘れは激しくなる一方で、大学病院を訪れ、問診、画像診断、認知機能判断テストの三つを受けて、画像診断で、血流の流れの異常が発見され、認知症と診断される。

・三つの検査を受けても、認知症と診断されず、統合失調症と診断された女性は、東京の医師により、画像診断で、脳の一部が縮んでいることが判明。認知症と診断されるが、最初に診察した医師は、認知症について学んでいなかった。

・認知症という診断が出るまで、6~8年かかった方もおられます。

・「認知症を悪化させているのは、医者ではないか」という発言もありました。
・また、認知症と分かっても、治療が間違っている場合がある。
・ある男性は、深夜徘徊がひどく、普通に話もできない。
睡眠剤の過剰投与で、意識障害が出て、意識モウロウとなって、徘徊する。妻は、治らないと思って、我慢しているが、薬を中止して、様子を見たところ、2週間で、意識回復。徘徊、手足の震えも治まる。

☆介護施設の責任者の発言:認知症の患者が、介護施設に送られ、介護施設で、間違った治療をされ、悪化して、元の医師に戻したところ、どうしてそんな医師にかかったのかと言われた。

☆専門医の発言:老年精神医学専門医は、800人しかいない。専門医になってもメリットがない。長時間の診察等、の発言に対して、患者の側の会の出席者から、お金が入って来ないからだろうという発言あり。

・医学部の中で、認知症の教育が少ない(桝添厚労相の発言?)。

☆医師会関係者の発言:‘かかりつけ医’(普段かかっている病院や医師)が(認知症に)視線を向けて行こうということを話し合っている。

☆広島県の尾道市では、全国に先駆けて、認知症の治療と取り組んできた。
因島では、3人に1人が高齢者、または認知症である(この表現は、高齢者であり、認知症患者である人が3人に1人という意味か、高齢者でなくても、認知症患者を含めて、という意味か、私が聞き逃したのかも知れません)。

・時計の針を、性格に描けるかどうかで、兆しが分かる。一見全く問題がないと見える人が、とんでもない図をかいたりする。

・かかりつけ医が困った時、‘サポート医’(専門機関と、かかりつけ医の中間的存在)に相談するが、広島県では、サポート医は、16人しかいない。

・O医師は、認知症の勉強を始めるが、ある患者に「アリセプト」という、進行を抑える薬を投与したところ、徘徊や暴力がひどくなる。アリセプトのためか、他の薬との組み合わせによるのか、病気の進行によるのか、分からないため、専門機関に相談する。
投薬の状況、病状の変化を説明し、アリセプトの蓄積が原因と知る。

・サポート医は、かかりつけ医に、6時間の研修を行っているが、研修を受けた医師は、10%未満。
・O医師は、この研修は、回を重ね、続けないと意味がないと考える。

・しかし、サポート医も、二日しか研修を受けていず、(かかりつけ医への研修は)専門医が行う必要がある。

☆ここで、家族の会の側から発言あり:医師側の、二日の研修や6時間の勉強がどうのこうの、という話がまどろっこしい。研修がどうのこうのなどと言ってないで、こっちに顔を向けて欲しい。
(確かに、患者と家族の深刻な実情からかけ離れた話の遣り取りに聞こえました)。

☆杏林大学病院では、一年前に「もの忘れセンター」をつくった。しかし、予約は一ヶ月待ちである。
症状が安定した患者は、地元のかかりつけ医に任せたいが、患者を引き受けてくれる、かかりつけ医が、どこにいるか、分からない状態。
病院と診療所の連携がうまくいっていない。
現在の忙しさは限界であるという意味の発言が、責任者の教授から、ありました。

☆砂川市立病院(聞き漏らしたのですが、北海道のようです)では、「地域医療連携室」を設け、地域のかかりつけ医との間をとりもっている。

・かかりつけ医に、認知症の詳しい、見やすい、検査結果を提示している。

・連携先の診療所に通っている、87歳の認知症の女性について、詳細な資料が、専門医から送られ、進行は抑えられている。病状が急変したら、専門機関に送る。

・かかりつけ医と‘介護スタッフ’との連携も強め、介護スタッフは、認知症状況シートを持って、各家庭を訪問している。
・患者の症状が進むと、医師に送られ、治療が見直される。

☆上記のような、整った施設や緊密な連携の例を聞いて、若年認知症患者の会の代表から、「私の町のどこに、(そんな施設や対応が)ありますか」という、当然のクレーム、問いかけがなされる。

・ネットワーク作りが難しいという、これも、当然の問題点も出される。

☆老人介護施設では、別の問題がある。
・介護優先なので、治療を受けたくても受けられない。
・1人の医師が多くの患者を診ている。

・アリセプトは、1錠、500円と、高額である。認知症の患者がいても、投与できない。
老人保健施設では、原則として、医療保険を受けられない。医療費は、3パーセントまでしか認められず、高価な薬は使えない。家族は、薬代を負担してでも使って欲しいと希望している。

・医師が、薬の購入を施設側に希望しても、その必要性は認めても、現実には、買えない。
・介護施設では、介護のみ。在宅だと、両方(介護と医療)受けられる。

・介護施設で働いている、Mさんの発言:自分が勤務している施設は、ベッド稼働率は、100パーセントだが、赤字である。

・独居者、(言葉は悪いが)見捨てられた人は、ケア・スタッフの努力だけが頼りである。
・在宅介護にも限界があるが、受け入れ先がない。

上記のような話し合いの間に、桝添厚労相の意見が入ります。前向きに取り組むという趣旨が多かったのですが、一方で、地方自治体が動いてくれないと、という趣旨の発言や、いささか、シラケタのは、(有効な対策を実現するためには)消費税率のアップが必要という場違いな発言が出たことです。

NHK側は、一年前から、認知症問題に取り組んでいる、今後も取り上げて行くという姿勢を打ち出していました。

余談になりますが、こういう話し合いは、司会者の柔軟な資質というか、一貫した姿勢、病む人への、真のシンパシー、真摯な対応が必要です。

この日の司会は、森本、黒崎、両アナウンサーです。あまり熱心なテレビ・ウォッチャーではない私は、初めて見るコンビです。
こうした深刻な問題に、司会者のことを詳しく書くのは、適切ではないかも知れませんが、このコンビに期待する者として、ひと言つけ加えたいと思います。

私は、特に贔屓のアナウンサーはいなかったのですが、この二人のアナウンサーには、好感と期待を持っています。
黒崎アナは、他の女性のアナウンサーには、見られない、しなやかで、大人の女性の風格があり、相手のどんな突っ込みやカラカイにも、全く動じず、しかも一歩引いた態度で、受け流す、余裕のある姿勢が、真にプロという感じがします。東大出のステレオタイプではありません。

森本アナは、かなり前の、敦煌紹介のライブ番組で、足場が悪いというか、厳しい現地のリポートをタフにこなしている時から注目していました。北海道に転勤になった時は、ちょっとガッカリしましたが(テコ入れとか。事実かどうか分かりませんが)、帰って来て、ほっとしました。気象予報士の資格も持っているそうですが、少なくともテレビの画面では、さり気ない自然体が売りのようです。

感じがいい、受け容れやすい、ミスがない・・・裏を返すと、個性を出していないということにも繋がるようにも思います。
特に黒埼アナは、引き過ぎのように感じました。
深刻なテーマを、深刻な表情で、司会をする必要はないと思いますが、場違いの感じが出ることのないように、今後に、期待します。

認知症、誰もが無関心ではいられないテーマです。しかし、わが家は、今のところ、近い将来、明日にでも、襲われる、この病気の心配をしている余裕はありません。
長年健康だった家族が、難しい病気を病んで、漸く治癒が見えて来た時点で、次の更に難しい病を得、ちょっと考えるだけで、問題は山積です。

例えば、費用だけの問題を考えても、やっと1割負担の恩恵に浴していますが、治療費が高いことに驚いています。プライバシーの問題なので、詳しくは書けませんが、一日で、病院の数箇所で、治療、検査を受けると、5,000円を超える払いも少なくありません。
待ち時間を入れると、朝から夕方までかかることもあります。バスの始発が遅いので、タクシーを利用しなければなりません。休日を除いて、毎日です。

入院は、大部屋は満杯。差額ベッドは、二日で5万円かかります。今まで働きづめだったので、病気の時は、個室でと考えていたのですが、年金に、貯金を一定額、取り崩す生活設計は、大きく乱れます。並みの出費ではありません。ある時点で、方針を変えなければならないと思います。

病気は、数え切れないほど種類があり、認知症も、一つの病気の名前に過ぎないこと、我が家は別の問題を抱えていることを考えると、少なくとも、私は、自分や家族だけでなく、日本がこれからどうなるか、どうして行けばいいのかという、大きな課題に自然と考えが行ってしまいます。  《清水町ハナ》

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