時事雑記帳11「NHKスペシャル「ワーキングプアⅢ」紹介」思い出エッセイ〔96〕

 NHKスペシャル、「ワーキングプア」三部作、最終回です(12月16日夜9時)。Ⅰ、Ⅱは、去年2回に分けて、放送したものを一回にまとめたもので、前回、紹介済みです(実質的には二部作)。Ⅲは、ワーキングプア海外版で、日本より事態が深刻な、韓国とアメリカの状況、そして、この問題に本格的に取り組んでいるイギリスの例を紹介しています。グローバル化している、ワーキングプア現象の解決策も模索しています。

日本のワーキングプアの代表者のような形で、Ⅰ、Ⅱにも登場した、Iさん(男性、35歳)が冒頭から出演?することに、少々違和感を持ちました。

‘ワーキングプア’とは、努力して、めいっぱい働いても、収入が少なく、生活保護受給者より低い生活レベルで暮らさざるを得ない人達を、指すということです。
若い、元気そうな男性であるのに、Iさんは、雑誌をゴミ箱から拾って、それを売ってお金を得ている、ホームレスです。どういう事情があるにしても、日本の典型的なワーキングプアとは言えないと思います。

まあ、でも今回のポイントは、海外のワーキングプアを紹介し、それぞれの国の施策に焦点を当てる、そこから、日本が学べるものはということのようですので、とりあえず、先に進むことにします。

・ワーキングプアは、日本だけの問題ではない。貧困層は、アメリカ17%、日本15.3%、韓国13%、イギリス11.4%である。

☆韓国では、非正規雇用を抑制しようとする政府の施策が、正社員になれると信じていた契約社員、パートの一斉解雇、外部の業者にへの委託、特に女性を正規社員にすることを避けることに繋がり、結果、ワーキングプアの急増という事態を招いている。

・大学を出ても、正社員になれない人が増えている。
名門大学の工学部を出た、31歳の男性は、月収11万円の生活をしている。
元、受験生用の、家賃3万円のアパートに、ワーキングプア層が住んでいる。

☆イさん(41歳、女性)は、解雇され、収入が途絶え、夫は大腸癌を病む。
直接、国に訴えようと、国の機関に行くが、話しを聞いてもらえない。国は、労使間の問題として、介入に慎重な姿勢をとっている。

・非正規雇用の、49歳の人が、焼身自殺をした。他に二人、自殺を図っている。

上述、イさんは、夫の、癌の病状が悪化。新薬に保険が適用されないので、月10数万円、支払わなければならず、解雇は間違っていると思っているが、生活のためには、考えを変えなければならない、もはや、非正規の仕事を得るしかない。

☆アメリカ
日本より、更に、ワーキングプアの状況は、多様化している。
IT技術者が、会社の、海外への移転などで、職を奪われている。
会社としても、国内に残って、倒産するか、海外に出るか、という選択を迫られている。

テキサス州、ダラスのキャンプ場では、ワーキングプアと無縁と思われていたコンピューター・プログラマーなどが、キャンピング・カー暮らしをしている。

☆Bさん(男性)は、高校を出て、働いたが、29歳の時、銀行から借金をして、大学に進学。コンピューターを学んで、就職するが、会社はインドへ移転。ファストフード店で働くことにした。

店長だが、月給は15万円。アルバイト一人を雇い、一日10時間働き、週末も働く。
10万円で、中国製のスクーターを買った。
100社以上に応募したが、面接まで行ったところは、4社。全部不採用。

失業するまでは、高血圧症で、病院に通っていたが、医療保険がないので、薬も買えない。
ITへの就職を諦め、保険のついた仕事を探そうと思っている。

・アメリカでは、虫歯の治療にメキシコに行く。ダラスでは、総入れ歯が2000ドルだが、メキシコでは、300ドルである。

銀行からは、大学進学の際のローンの残り、500万円の、督促状が来る。

アメリカン・ドリームはどこへ行ってしまったのか。今や、籤に当たるか、裕福な家庭に生まれるしか、道はない。

・韓国とアメリカの実情は、日本の将来像を見せられているようなものである。

☆専門家の意見
・経営陣は、莫大な富を築きながら、社員の待遇を向上させようという姿勢が見られない。
・社会保障が進んでいる日本でも、同じ状況になる。
・貧しい人は、底辺の、更に底へ向かって落ちて行く。貯金もない。
・市場原理主義のグローバルな競争が、下へ、下へと向かっている。
・市場の失敗である。市場に任せていたら、絶対に解決できない。

☆アメリカ南部、ノースカロライナ州の取り組み
家具工業が主要産業だったが、中国に(拠点が)移る。
州政府は、バイオテクノロジーを、新たな、この地の産業にすることを決める。

どのような産業がグローバル化が避けられるかを、考え、国の厳しい規制がある、バイオテクノロジーが適当という結論を得、まず、バイオテクノロジーの人材を育てるために、州政府が資金を投じる。

☆Kさん(女性、離婚して、子供二人を育てている)は、2年前から、このプログラムに参加している。年間数百万円の授業料が、(州の)援助を受けて、15万円の負担で済む。中学レベルから、イベントのプログラミングができるまで、学べる。

Kさんは、授業が終わった後、ウエイトレスのパートに出て、月に13万円を得ている。
夜の10時に、両親の所で預かってもらっている子供達を引き取りに。6歳と4歳。子供と一緒に過ごす時間は殆どない。もう少し子供と過ごす時間が欲しいと思っている。

・企業に入って、すぐ役立つ技術を身につけ、企業が求める人材を育てれば、雇用にも結びつく。
・いつか出て行く人間より、地元に住む人間を歓迎する。州政府の収入も増える。

Kさんは、地元の遺伝子研究機関に就職した。最初の年収は、270万円である。

☆英国
日本より早くから、ワーキングプアが問題化していたイギリスでは、国として、この問題に取り組んでいる。

リバプールでは、3人に一人が、ライン以下の貧困層で、イギリスで最も貧しい地域である。
政府の‘支援員’が、全国で9千人いて、特に、ワーキングプアの多い所で、若者に仕事や職業訓練所の紹介をしている。

☆ポール(ハイティーンの男子)は、13歳から、仕事につけないでいる。
支援員の紹介で、訓練所で、リサイクルの訓練を受ける。

低所得者用のアパートに住んでいるが、家族5人。父は失業している。子供達にちょっとしたことで当たり、子供は、父は、以前と変わったと感じている。
子供達に直接手を差しのべなければ、貧困から抜け出せない。

ポールの弟(今年中学生)には、専門の指導員がついて、読み書きを教えている。5歳の妹も支援を受けている。

・国は、15兆円の予算を組んでいる。
2002年から生まれた制度では、毎年、6万円から12万円が振り込まれ、そのまま置いておくと、2008年には、最高で、100万円になる、高い利息がつく。

ポールは、電気工事の安全点検資格の試験を受ける。この資格がとれれば、より高い賃金が得られる。合格する。

日本は、国としての取り組みは、はるかに遅れている。今ある制度を利用している、という状況。

☆北海道、釧路市、
Sさん(女性、27歳、離婚して、子供一人)。
障害者の施設で働いているが、月給は12万円。3万円の援助を得ている。
体をこわして、働けなくなり、ヒキコモリとなる。

生活保護受給者に自立支援制度があり、釧路市は、自立までのステップを、ボランティアから始め、次にパートを経て、(正規雇用)という段階を踏むことを考えている。
生活保護も段階的に支給する。

☆‘自立支援員’の新田さん(女性、仮名)は、自らも、3人の子供を持つ母子家庭だが、上記Sさんを担当している。

Sさんに、先ず、保育所(?記憶が曖昧です)のボランティアを紹介する。しかし、次のステップのパートの仕事を断られてしまう。
新田さんは、落ち込むSさんに、励ましの手紙を書き、その手紙には、新たな求人票もついている。Sさんは、障害者施設で、働けるようになる。

支援の費用は、国からの補助、900万円でまかなっている。
しかし、最終的に自立にたどり着ける人は、一割に過ぎない。

新田さんは、仕事が終わってから、学習塾の教師をしている。自立支援員の手当ては、月10万円である。

Sさんは、新田さんに会って、少しずつ努力している様子を報告する。今の職場で、パートから、正規の職員になることを目指している。

☆日本は今、何をすべきか。
評論家の意見として、介護や医療のような人が足りない職場もある。食える社会、生き甲斐のある社会を目指すべき、善意や犠牲だけでは、続かない、ノースカロライナのような試みが必要、等々、述べますが、誰でも考えつくことです。
ワーキングプアの最大の問題は、働く場だけでなく、人間としてのプライドも失わせることにある、という意見も、当然のようでいて、外からの見方ということになります。

そして、また雑誌拾い青年にカメラが向けられるのですが、この人が、道路掃除の仕事を得て、十日で7万円を得て、店で食事をし、2日に1度、銭湯に行け、洗濯もするが、帰る所はやはり、ガード下という生活。

上記の、人間としてのプライド、という指摘は、外側から見て、言われている言葉で、新品同様の雑誌を得て、これなら400円(だったと思いますが)で売れる、今日はこれで充分と、インスタントの焼きそばに喜色満面でパクつく姿が、最初の方に出ていましたが、ホームレスになる人は、好きでなったのではないにしても、ホームレスが、人間としてのプライドを失った姿であるとは、思っていないのでは、という気もします。

Iさんの道路掃除の仕事は、80日間で終わり、先輩の推薦を得て、更にもう一期続けることができるようになり、彼自身も、仲間の炊き出しの仕事を手伝うなど、少しずつ変わり始めている、と報告されます。
人間としての感情が戻った、人間の尊厳が戻った、とコメントされますが、それを決めるのは、Iさん自身でしょう。

番組は、海外を取材している中に、日本の深刻な事情が浮き彫りになった、国レベルでの取り組みが、決定的に遅れている、と、取材者のコメントで締めくくられるのですが。


(このようなテーマは、ヘタな意見を書くより、内容の紹介が一番と、メモにより、書きましたが、間違いがあったら、お許しください)

ワーキングプアという言葉自体が、まだ馴染みの薄い日本ですが、番組で紹介された以外のケース、パターンも、既に発生し、近い将来、或いは、今現在、問題化していると思われます。

例えば、同じNHKスペシャルで取り上げられた、「人事も経理も中国へ」(拙ログ〔76〕)のケースです。会社の1部門、数部門から始まって、事実上の、会社丸ごと中国移転となったら、今更他に就職口を求められない人は、人生計画が全て破綻することになります。

同じく海外の、安い、しかも美味しい、米を中心とする生産品が入って来て、農家をはじめとする生産者は、生活が成り立たなくなる〔85〕。
安い人手も、従来の日本人の雇用者を席捲する。いずれも、外国、特に中国がらみです。最近では、インドという新顔も加わりました。
北朝鮮と国交が回復すれば、いずれ、強烈に多くの場面で、食い込んで来るのではないでしょうか。

構造的な問題で、一人ひとりへの対応で解決できることではありません。

経営陣が、コストを低く抑えるためには、何でもする、という姿勢を、雇用している日本人にとり始めた場合、結果は分かりきっています。
それは、生産の場では既に起きていることですが、まだあまり気づかれていない所に、教育機関があります。

大学教員になるために、修士号をとり、博士をとり、業績を挙げても、大学側が、三年契約制(一年契約の所もある)をとる所も出てきて、三年で解雇する。業績がないという理由ならともかく、学内の派閥や、ひどい所では、中傷、讒言の類いで追い落とされる。

語学の専門学校や、日本語学校の給料が、ワーキングプアにも満たないことをご存知でしょうか。時給は一見ましに見えても、例えば、大学の非常勤講師は、一日一コマが原則です。いつ正規雇用になるか、当てもないままに、親とか、連れ合いとかの援助を受けて雌伏?していて、やっと専任になれたと思っても、また、いつワーキングプア暮らしになるか、分かりません。
「学べども学べども、我が暮らし楽にならず」というわけです。

ワーキングプアのことを論じている中に、火種は、自分自身の所にも、いつの間にか置かれているということにならないように、という言い方は、ひとの所ならいいと、聞こえますが、日本も早く対策をとらないとなどと、言っていられるような現状ではないと思います。

つまり、ワーキングプアという言葉、状態には、既に、一くくりにできない、従って、対応も異なって来る、多様なパターン、ケースが生じていると言えるのではないでしょうか。
グローバル化という言葉は、ある時期まで、ポジティブな意味で使われたと思うのですが。
「人はパンのみにて生きるに非ず」という言葉も、もう死語なのでしょうか。 《清水町ハナ》

(メモの書き流しなので、☆印は、一つのテーマ、項目。・印は、当該項目と関係のない事柄、事情、地のナレーション、他です)


【訂正】上記、「☆英国」の項目中、イギリスの‘国家予算が15兆円である’という記述は、同番組の字幕及びナレーションから紹介したものですが、公開後、いくらなんでもあり得ない数字、更に何の予算かはっきりしないため、NHKスペシャル係に問い合わせたところ、次のような回答を頂きました。そのままご紹介して、訂正とさせていただきます。-07・12・21-

「お問い合わせの件ですが、
「15兆円」は「ワーキングプア対策費」ではなく、
子どもや若い世代への一連の支援と、義務教育予算の総額です。

主な内訳は以下の通りです。

●義務教育・学校支援等  415億ポンド

●職業訓練・生涯学習等  100億ポンド

●高等教育・学校支援等   94億ポンド

●家族サポート等      33億ポンド ほか

数字の根拠は2006年のイギリス教育技能省が出した報告書で、
総額「680億ポンド」(1ポンド≒230円)になります。
人口もシステムも違うため、一概には比較できませんが、
日本よりもかなり多い額を注ぎ込んでいることがわかります。」

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