時事雑記帳8「NHKスペシャル「ライス・ショック1・2」」思い出エッセイ〔85〕

 NHKスペシャル「ライス・ショック」(10月14日、15日放送)。二夜に分けての放送です。共通の副題は「あなたの主食は誰が作る」で、10月14日の第一回には、「世界がコシヒカリを作り始めた」、翌15日の第二回には、「危機に立つ米農家」という見出しがつけられています。つい最近のことです。上海で、コシヒカリが店頭販売され、日本の数倍の価格にも拘らず、売れ行きがよく、味も好評だったというニュースを聞いたのは。

上海で、コシヒカリを試食した人が、「今まで食べたことがない(美味しさ)」などと褒めてくれるのを聞いて、いささかの優越感と満足を感じたのも束の間、日本のコシヒカリより味のいいコシヒカリが既に中国で作られ、輸入されていると、番組の冒頭で聞かされます。とすると、まるで、中国の人が、コシヒカリの存在を初めて知ったような、しかもどんなに高くても構わない、買うと期待させた、このニュースは、どういう狙いがあったのでしょう。

台湾では、富裕層が、お昼の食事に3万円もかけるそうで、それこそ、単にブランド志向というか、金に糸目をつけず、超高級寿司店などで、コシヒカリを使った、握りを食べるという話に過ぎず、日本の先を行く台湾の現状に覆いをかけるような、つまりこれから、台湾も、日本のコシヒカリを買ってくれるかもしれないと、実はどっちに転ぶか分からない期待をさせるだけのニュースと言われても仕方がないと思います。
或いは、現状を知らなかった者の、不勉強ということかも知れませんが。

中国の東北部で、コシヒカリを改良した種類が作られ、既に輸入されているなどとは、全く知りませんでした。更に、いつの間にか(私には)、食料自給率が39%と、40%を切り、先進国では最低ということも知らされます。

自給率を維持するための要となる、米が、日本人が米を食べなくなった、世界中から安い食材が入って来るなどの事情で、今後も自給率は、下がり続ける様相と実例が紹介されます。

例えば、会社などにお弁当を入れている、ある業者の実情として、ご飯がたくさん残されて戻って来る、全く手をつけていないのもある。ご飯を二割減らしてみても、結果は同じとのこと。

コストを下げるために、中国の米を取り寄せて、試食してみると、モチモチして、粘りがある、光沢もいい、今まで使っていた日本産のお米より美味しい、中国産に切り替えれば、6千万円、コストが安くなる、切り替えの方向で考えているということです。

WTOが発足して、1995年以後、外国産米の輸入が、アメリカ、中国、タイなどから、始まり、大手外食チェーンなどは、いち早くアメリカ産米を使い始めている。
特に米菓には多くの輸入米が使われている。大手では、4年前から、お煎餅に輸入米を使っているそうです。冷凍弁当にも使われ、10年余で、外国産米は、40パーセント増。

アメリカ産米を使った、アメリカ産日本酒も各国に輸出されている。

緊急用に大量に保管されている、国の倉庫の米も新潟産、コシヒカリである(1993年の凶作の時、まずい外米を食べざるを得ませんでしたが、今後は、いつでもコシヒカリを食べられると期待していいわけですね)。

想像を超えたグローバル化が、日本の食糧事情を大きく変えている。
米は今や、世界で取引される食品となったと言える。
アメリカは生産高の50%を輸出しているが、最大の輸出基地、カリフォルニアのサクラメント・バレーでは、300軒の農家が集まって、実験農場を作り、自分のところに最も適した米作りを見出そうとしている。

アメリカの米農場主の話として、日本産のコシヒカリと全く変わらない味のものを作っている、価格は10キロ、1500円と、日本よりはるかに安い(三分の一という数字も挙げられていました。小売価格だと思いますが、日本の現状の価格と違うので、発言だけ紹介します)、自由貿易を望んでいる、ということです。

米の輸出入に関わっている、中国系アメリカ人のリン社長は、コシヒカリを作っている中国の黒龍江省を視察し、大手商社と提携して、日本への輸出を考えている。
この黒龍江省の米は、既に日本に大量に輸出されていて、日本のコシヒカリを改良したものである。耕作機械は日本製。

上海では、中国産のコシヒカリは、六分の一の価格で売られている。
一方日本産は高値である。

新潟は、日本で最も高い価格で、コシヒカリが取引されている所ですが、農協が買い取り価格を、これまでの60キロ、1万5千円を、1万円と、三分の二に下げて来て、農家の怒りをかっているとリポートされますが、消費者としては、そんなに安い卸値だったのかと驚かされます。農家から直接、買っていたこともありますが(新潟から、とは限りません)、随分、儲けがあったのだなとつい考えてしまいます。

上記、リン社長は、日本の米余りに目をつけ、新潟のコシヒカリ農家を直接訪問して、化学肥料や農薬を使わない米として、アジアの富裕層、特に、リン社長が広い人脈を持つ、台湾への輸出の商談を持ちかけます。

リン社長の交渉相手のTさんは、一緒に台湾に行ってみて、色々な国の、コシヒカリが売られている現状を見て、日本が同じ状況になったら、米農家は、窮地に陥ると考えます。

現に、台湾でも、ある集落を訪問すると、空き家が目立ち、あちこちに、‘金貸し’の広告がある。安い外国産の米が入って来て、やって行けなくなった農家の現状です。

台湾中部の農家は、会社と契約して、その管理下で、米を作ることになるが、チェックは厳しく、品質が落ちたりすると、場合によっては、契約を打ち切られる。

外国産との競争に敗れ、米作りを諦めた農家もある。

Tさんの米を売ることになった会社は、交換条件として、台湾の安い米を買うことをもちかける。日本が買ってくれれば、米の価値が上がるからである(これは、Tさん一人にもちかけられた話しではないと思いますが)。
いずれにしても、日本のコシヒカリが、世界の貿易基準になっている(今のところは、ということではないでしょうか)。

こうした現状に対して、national security の観点からも、食料自給率というものは、100%に持っていく努力をしなければならないという、食料自給率絶対維持派とも言える、識者の主張に対して、日本が限りなく台湾化して行く(ことは避けられない)、100パーセントを達成するのは、大きなコストがかかる、という、自給率維持放棄派ともいうべき識者の意見が紹介されます。
更に、外貨で米を買い続けることが、いつまで続けられるか、現に米の作り手がいなくなりつつある、という指摘もなされます。

以上が、第一回の、概要です。

第一回は、攻める側、つまり日本にコシヒカリを売り込もうとする、米国、中国などの事情が、日本の米消費事情と共に、紹介され、第二回は、守る側、というより、後退を続ける、日本の農家の現況が報告されます。当然、攻める側の方が、威勢がよく、ドキュメントとしてもよく出来ていて、迫力もあります。

第二回では、受けて立つ、日本側の対応が報告されます。
「危機に立つ米農家」の見出しの通り、上のような、外国の攻勢に対して、既に守る姿勢も崩れている、農家の思惑も異なる、というか、結集して、コトに当たるということが困難な状況が紹介され、農家の取材自体が難しいのでしょうが、結論的に、台湾化が避けられないかどうか、までは、分かりませんが、かなり悲観的な状況であると言わざるを得ない現状と言えます。

勿論、国は、現状を手を拱いて見ているわけではなく、大規模農家を援助するという抜本的な対策に踏み切ります。
番組では、コシヒカリではなく、アキタコマチを作っている、秋田県美郷町のO地区の取り組みを紹介します。Hさんが、代表を任されます。

この地区では、農家の収入が減って、農家が半減したという状況です。

大規模化とは、20ヘクタール以上の広さを対象とするものですが、その広さにまとめるには、まず、家や墓を動かさなければならない、作り変えなければならない、という大きな問題が生じます。代々の家や墓を動かすのは、当然ながら、容易なことではありません。

国は、5年以内の大規模化を求めています。
農家は、賃金をもらうということにも違和感を持ちますが、そういう点は、これまでのやり方を変えるのだから、やむを得ないと納得しても、例えば、それぞれの農家に仕事を割り振ることも簡単なことではありません。
大型器械を使っての除草を一軒の農家に任せようとしても、酪農の仕事があるからと、断られる。

Hさんは、三ヶ月かけて、計画を練り直す。
例えば、水路を拡げて、家や墓を動かさないで済む方法を考えるが、反対が出る。工事費として、一軒100万円かかり、年間の収入を超える家もあるからで、計画の一部を修正。
だが、それでは、たんぼの面積が足りず、大規模化とはならない。

八月、O地区に思いも寄らない情報がもたらされる。米の価格が、去年より4割も安くなるという農協からの通告である。これでは器具代金も払えない。皆も集まって来て、口々に不満を言う。Hさんも、農業離れが進むと考える。大規模化を取りやめなければならないかもしれない。
そんな中、3台の新しいコンバインが届き、集落の負担は、一千万円を超えるという厳しい状況になる。

ここで、突然、取材陣の、「取材を続けてみて、大規模化を進めることは容易ではない」という結論的な感想が入ります。
単なる想像ですが、大規模化に取り組んでみようかという集落があるということで、密着取材を決めたのか、取材が、大規模化事業に有利になるという思惑も集落側にあったのか、この取材自体が、表面的である。

もう少し言えば、見ている者には、問題点のいくつかを羅列しただけ、その程度の意義しかなかった、という印象を拭えませんでした。やむを得ないのかも知れませんが。大規模化が順調に推移していれば、問題なかったのでしょうけど。
しかもコシヒカリ農家を取り上げたのではない。もう少し、全体を見渡した、現況、具体的な数字などを出さなければ、一集落の大規模化失敗(おそらく)例の、掘り下げの浅いドキュメントと言うか、軽い報告になってしまっています。

既述、三人の識者は、それぞれ、「一部の農家が離れることはやむを得ないことである」「後退した農家が、他の仕事に移ることも(考えられる)」と、大規模化促進を主張。
農業は代々引き継ぐもの、と国の大規模化方針に反対意見もあります。

国は、現場の混乱を承知しているが、大規模化しなければ、子供に伝えることもできない、現在の平均の15倍になる、一軒当たり、15ヘクタールを考えている。

しかし、現状は、厳しくなるばかりで、平成5年には、当時、国が米を保護して安定しており、1,200万円の収入がある農家もあったが、平成7年、輸入解禁、自由化となると、価格の下落が始まり、収入は大幅減。しかし、大型器械などの経費は変わらない。

直接販売を始めてみても、精米機などを購入しなければならない。販売先も思うようには集まらない。ある農家では、1,700万円の借金をすぐに農協に返さなければならない。

Sさんは、農協に行き、融資の継続を頼むが、2,500万円の負債があり、断られる。年収は150万円である。

海外では、例えば、既出、カリフォルニア、サクラメント・バレーでは、一軒の農家が、1,500ヘクタールを所有しており、アキタコマチの生産コストは、日本の三分の一である。

既述、O地区のWさんは、50ヘクタールを所有しており、他の農家からも米を買い取り、販売店も経営していたが、価格の最高時、10キロ当たり、7,500円で売れ、無洗米なども扱ったが、売り上げに翳りが見え始め、ピーク時、30万件あったのが、5万件に減る。
安い米が市場に出回ったこと、米離れが原因と考えられる。

店頭販売に力を入れ、東京の店舗にも人を送り込むが、どこでも美味しいお米を扱っていて、商談はなかなかまとまらない。
Wさんは、60キロ1万5千円で買い取ると農家に約束しているが、農家側は、米価格の下落を厳しく受け止めている。

既出の、米、或いは、食料自給率について、異なる考え方を持つ識者は、「競争すれば、日本の米も外国に立ち向かえるという考え方は間違っている」
「米は主食から野菜化していると考えればいい」(輸入推進、自給率放棄派)
「主食を他国に依存することはできない。米作りの社会的な意味を見直すべきである」

そして、取材陣は、農家の高齢化と、価格下落が追い撃ち、グローバル化も押し寄せ、日本でしか作れない(と思っていた)コシヒカリが、各国で作られていると知って驚いた、日本の米が食べられなくなるのではないか、米であっても、保護する必要があるのか、ないのか、という、(迷っている、結論を出せない)感想を述べます。

報道番組として、食い足りないというか、掘り下げが足りない面があったのは、事実ですが、コシヒカリがこのような現状に曝されている実態を知って、驚きました。

異常にコシヒカリが安くなっている、単に新米が出たからとは思えないと漠然と感じていましたが、とにかく消費者にとっては、安いことが一番、その点だけしか見ていません。
中国の有害食品問題は、そういう偏った消費者の見方に警鐘を鳴らすものでした。


わが家は、お米は、コシヒカリを食べたい方です。但し、食べる量は非常に少なく、夕食の時のみ、お米を炊きますが、2合だけです。量を多く炊いた方が美味しいに決まっていますが、とぎ方や水加減を厳密にしている所為か、大体いつも美味しく炊けます。

二人か三人か、その日によって人数が違うのですが、お菜によっては、2合半炊くこともあります。残ったご飯は、必ず、翌日のご飯の上にのせるか、多い場合は、冷凍します。
例外的に3合炊くのは、炊き込みご飯、丼もの、わが家風握り寿司やおむすび、などの時です。それがメインのメニューになり、お菜は、なしか、簡単なものにするからです。

パスタとか外食、出前をとることもあり、お米好きにしては、消費量は非常に少ない方だと思います。つまり、お米は不可欠でも、主食と言えないほど少量。多様化した食がわが家の現況です。 

コシヒカリも、殆ど新潟魚沼産、或いは、魚沼産とちょっと違って、さっぱり感に美味しさがある、北陸産も時々頂きます。
魚沼産コシヒカリは、ある時期まで、ハンで押したように、10キロ1万円前後の価格でした。それが、安くなり出したのは、いつ頃からか。値崩れが始まり、新米が出回りだすと、半値以下で売っているところもあります。

お中元やお歳暮に、カタログを贈るものがあり、うちでも利用することがあり、頂くこともあります。魚沼産コシヒカリは、今でも1万円のカタログで買えるのは、10キロで、非常に割高、他の商品にも影響があると思うのですが、いつ改められるのか。

わが家の事情を書いたのは、番組が問うているのは、例え消費量が非常に少なくても、主食はお米、それも美味しいお米が食べたいと思っている者が、外国産のコシヒカリに切り替えるか、という点がメインだからと思うからです。

わが家が、ここ数年、何事もなかったら、迷わず、外国産のコシヒカリは食べたくないと書いたと思います。

家族が、三年ほど前、食事のケアが難しい病気になり、二年間ほど、食事作りは、その家族中心で、流動食状、とにかく、口の中に入れたら、噛まないで済むもの、それも、その時その時の状態で、食べられると思っていたものが食べられなかったり、要するに、他の家族の(メインは私ですが)、食事まで手が廻らず、コンビニのおむすびを買ったり、お惣菜を買ったり、出前をとったり、という期間が結構続きました。

その時、コンビニのおむすびも、出前のご飯も、結構美味しいことを知りました。コシヒカリを使っていると明記してあるのもありましたが、そうでなくても、殆どが美味しい。輸入米を使っているものもあったでしょう。
お米は、外のものを食する場合は、とにかく美味しければいい、と思うようになりました。安全であることは、絶対条件ですが。
そう言えば、最近、例の有害中国食品のニュースがあまり言われなくなりましたね。

消費者は、時として、自分本位、気が変わりやすく、我侭です。
供給する者は、そういう面も見越して、時として利用もして、対応しているのだと思います。
しかし、米、特にコシヒカリに関しては、長く無警戒の安住状態が続いたのではないでしょうか。無農薬、化学薬品を使わないということだけが売りでは、いつまで続くか。

但し、食料自給率について、コシヒカリ事情、日本人の主食の選択範囲次第という現状には、危うさが感じられます。
子供の時、戦後の厳しい食糧難時代を経験した者としては、コシヒカリに頼るなどということは、いつでも、どこからでも崩されるガラスの城、砂上の楼閣に思えます。

輸入だけに頼るということは、戦争が起きなくても、いつでも途絶える可能性があるということです。戦争、それも負け戦になれば、まず制海権を失い、船による運送ができなくなります。
戦争はなくても、現代は、予想もしない状況が起きることも考えられます。
といって、米事情を建て直すことができないのであれば、米に頼らない、自給率のアップを、国や専門家に考えてもらって、私達消費者も、戦略の議論の輪に加わる努力をすることを考えるべきではないでしょうか。  《清水町ハナ》




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