映画雑記帳20「パーフェクト・ストレンジャー」感想」思い出エッセイ〔81〕

 「パーフェクト・ストレンジャー」(ハル・ベリー、ブルース・ウイリス。ジェイムズ・フォーリー監督)。久しぶりに、近くの繁華街の映画館でゆっくり観ることができました。と言って、それは、比較的時間の余裕があり、封切り直後にしては、空いていたし、という私的な意味で、映画そのものは、テンポは速いは、登場人物の名前を覚えるのに四苦八苦。それに、おそろしい映画でした。新聞広告程度の情報しか持っていませんでしたし。

例によって、最初から映画を楽しみたい方は、お読みにならないでください
原題も同じく“Perfect Stranger ”、きまっている感じのタイトルです。ストレンジャーにちょっとしたのと、完全なのと、区別があるのかなと思ってしまいましたが、この場合のstrangerは、事件に無関係な人という意味のようです。

美女、ハル・ベリーが、素顔に近い、ちょっときつい感じのメークで、ロウイーナ・プライスという辣腕の新聞記者を演じます。パーティに出席する時は、ドレス・アップして、見とれる美女ぶりを披露していますから、お楽しみに。

舞台はニューヨークです。主人公だけでなく、全てがスピーディーにバリバリに動いて行く。誰もが、ひと癖もふた癖もあって、いい人などいない。現役の仕事場の雰囲気バッチリ、というか、到底ついて行けないと思ってしまいます。アメリカだって、こういう面ばかりではないでしょうけど。

本題と関係ないけど、プロットの運びがスピーディーなサスペンス映画、特に洋画は、人と名前が一致しないまま、あららという中に話が進行してしまいがちです(私の場合ですが)。邦画だと、田中さんと出て来ても、ああ、あの人と分かるのですが、洋画で、トムだ、ジャックだと言われても、どれがジャックだったか思い出せないことが、ままあります。

以前の映画だと、「L.A.コンフィデンシャル」などがそういう映画でしたが、あそこまで複雑ではありません。
最初からブログに書こうと思っている場合は、これがジャック、と頭に叩き込むことにしています。

さて、映画に戻ります。
ロウイーナは、上院議員の取材に行き、ノート・パソコンで、議員のくつろいだ写真を見せながら、タイトルを打ち込んで行き、突然、彼がホモ・セクシュアルであることを示す、問題の写真を見せます。音声も気づかれないように、録音できるようになっていて、取材のためには、手段を選ばない、いささかアクの強い記者です。
しかし、新聞社側は、影響が大きいと、記事を没にし、怒ったロウイーナは、社を辞めてしまいます。
男性名前で記事を書いていたのが、本名もバレてしまいます。

友人のグレースと偶然出会って、大手広告会社の社長、ハリソン・ヒル(ブルース・ウイルス)と、出会い系のチャットで知り合い、付き合っていたが、棄てられたと告白される。事実をロウイーナに新聞で暴いてもらって、復讐したいと言う。食事でも一緒にと誘われるが、忙しいからと断るロウイーナに、グレースは、残念そうな様子で、「(彼が)やったことは、一生消えることはない、お母さんによろしく」と言います。二人は幼馴染です。

数日して、グレースの母親から電話がかかり、グレースが、帰って来ない、警察から、水死体が彼女ではないかと連絡があった、確かめに行ってもらえないかと、頼まれる。
無残な遺体は、グレースだった。妊娠していることも分かる。

ロウイーナは、同僚で、コンピューターの専門家、マイルスに協力してもらって、別名で、グレースのところに来た、大量のメールの送り主が、ハリソンではないかと、証拠を集めることにする。

ロウイーナは、派遣社員として、ハリソンの会社で働くことになる。
映画から離れますが、ブルース・ウイルスの、スーツを着た社長が、はまり役です。
実をいうと、彼の映画というのは、テレビでちょっと見たり、予告編位しか見たことがないのですが、いつも、ヨレヨレのTシャツに汚れた顔という感じで、こういうスーツをバリッと着た姿を見たことがなかったわけです。

こんなにスマートで、貫禄のある人なのかと感心しました。会社内のスパイを突然、デスクから放り投げて、罵声を浴びせ、すぐ後任をそのデスクに座らせるという場面が、唯一のアクション演技でした。
お年でもあるし、今後この路線もいいのでは。

会社もお金も妻が握っていて、ハリソンの浮気も厳しく見張っていますが、それでも監視網をかいくぐって、隙あらばという男です。
派遣社員のロウイーナの美貌にも、すぐ目をつけますが、彼女は、別名で、ハリソンとチャットをしていて、その最中、写真を送ってくれと言われます。
組んでいるマイルスに、すぐ誰かの適当な写真を送ってと連絡し、マイルスは、パソコンに入っている女性の写真を片端から出しますが、どれも魅力の点で今一つ、もう時間切れという時に、これなら合格という写真を見つけ、送ります。この場面位だったかな、ちょっと笑ったのは。

ハリソンが席を立って、ロウイーナの席に近づいて来て、まだ、その女性の写真が、パソコンに残ったまま、消せない。電源もなかなか切れず、焦りまくるなどというのは、ついこの間まで、あり得ない場面ですね。

というか、チャットで、本名も身元も全て偽り、書くことも、その場限りのデマカセ、全てが、土台のない、砂上の楼閣のような関係。真実の愛など程遠いものがあります。
それも考える間もなく、思いつきだけで、機関銃のように、言葉が放たれて行く。
受け取る相手は、自分も同じことをしていながら、案外相手の言葉は信じてしまう。
瞬間の閃きが、コンピューター社会の愛を制するようにも思えます。

殺されたグレースは、ベラドンナという毒物を目から入れられるという残酷な殺し方で、殺されたことが分かり、ハリソンが、その毒物を入手可能なことも判明します。

ロウイーナは、首尾よく、ハリソンからデートに誘われますが、席を外した間にマイルスからのメールを読まれてしまい、ハリソンのコンピューターのデータをとろうとして、見つかり(このエピソードはあまりにもありふれている)、クビになる。

彼女に代わって、マイルスがコンピューターの修理を装って、ハリソンの会社に入り込みますが・・・

ロウイーナのボーイフレンドが、グレースと、殺される直前まで関係があって、おなかの子について、DNA鑑定を言い渡されていることを知り、怒り狂い、絶交するロウイーナ。

更に、お互い、家の中へ出入りするほど親しいマイルスですが(といって、鍵の置き場所を初めて聞くようなシーンがあったので、鍵の交換はしていないようです)、留守なので、家の中へ入ると、不気味な声が聞こえて来ます。暗い室内をその音の方向へおそるおそる近づいて行く。ここは、怖い場面です。ひどい殺され方をした死体があるのではと思ってしまうからです。

突然場面が変わって、壁中に貼られた大きな写真やその他、異常なもので満ちた一室が映し出されます。その中には、マイルスもグレースと関係があったことを示す写真、ロウイーナの首から下にヌードを貼り付けた等身大の写真などもあり、信じられない異様なものばかりです。
そこへマイルスが戻って来て、激しく非難する彼女に、反論します。

マイルスは、コンピューターに非常に詳しいし、オタクっぽい容貌で、そこが、ロウイーナが無条件に信用してしまっている根拠にもなっているのでしょうけど、そして、事実、頼り甲斐のある、所謂‘いい奴’に見えるだけに一層、この一室の風景は並みではなく、実際にコワイ感じがします。

ハリソンは逮捕され、証拠も揃って、有罪となります。
でも、それでは簡単過ぎる。大方の観客も私も納得できません。

もう少し話しがあります。エーっという感じで、ジ・エンドとなります。推理もの、サスペンスものとして、ルール違反という感じがしないでもありません。
偶然、前回のブログで、旧い名作、「情婦」を取り上げましたが、この二作は、まさに対極に立つ作品です。

「情婦」の懐かしさ。人間が含蓄があって、所謂味のある人間性・・・
この映画には、一切そういうところはありません。仕方がないですね。そういうご時世ですから。
何故か、「ボルベール」の明るさを思い出しました。
おそろしい、殺伐とした映画です。  《清水町ハナ》

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