時事雑記帳6「敬老の日、若い人の‘生きかた’を見て、過ごす」思い出エッセイ〔79〕

 以前、「敬老の日」は、私の父の誕生日でした。父は、必ず地域の老人会の催しに出席するので、誕生祝いは、いつも祝い延ばしとして、父の好物を料理して、届けるのを常としていました。今は、殆ど関心を持たない日になってしまいました。市から、夫に、「敬老の日」の集いの案内が来ていましたが、付き添い不可、というか、お断りすることがあると書いてありました。元気でない老人は外出も控えなさいということでしょうか。

 いかに関心がないか、上記、‘敬老’を、全部、「老人」と書いてしまっていました。テレビの老人向けの番組を特に見ることもありません。意図せず見た番組が、若い人の生き方をテーマとしているものが多かったのは、偶然でしょうか。

NHKスペシャル「にっぽん家族の肖像4」で書くつもりにしていましたが、阪神・淡路大震災で孤児となられた方の姿が、いたましく、私の、メモをとって書くスタイルも適当ではないと思い、たまたま、見るともなく見ていた、他のいくつかの番組の中の一つとして、感想を書くことにしました。
(私の神戸への思い、関わりは、通しナンバー〔19〕に書いています)

最初に、他の番組から。
うとうとしていて、スイスの地下何メートルと言ったか、深い所で、何かを作って、何かを衝突させるという、理解不能のナレーションが聞こえて来て、目を覚ましました。四次元とか異次元の話で、宇宙物理学(かな?)がテーマのようで、ハーバード大学教授の~さんが、若い美人の女性であることにも驚きました。その教授を迎えて、大学院生でしょう、要するに、物理学専攻の、若い秀才達が、確かに頭がよさそうに見えますが、ごく普通の若者の雰囲気も持ち合わせていて、自然体で、その教授と話し合っていました。
それも、ごく狭い畳の部屋で、到底ご馳走には見えない(ビールは結構本数があったように見えましたが)、質素な食事をとりながら、真剣に討論する姿を見て、自分は全く縁がなかったけど、本当に羨ましい風景と感じ入りました。

子供の頃、従兄がとっていた、「子供の科学」を見せてもらって(子供の、と銘打ってあっても、結構レベルが高い雑誌でした)、自分に理解できる記事を拾い読みしていましたが、今でも覚えているのは、宇宙についての特集記事の一つに、「宇宙の果て(涯という字が使われていたように思いますが)は、奈落の底である」という書き出しです。
そうか、奈落の底か、そこまで行ったら、ずーっと、永遠に落ち続けるんだな、などと、一人で空想していました。
それが今から数十年前の、「宇宙」についての認識です。火星には蛸のような生物が住んでいるという想像が、半ば定着していました。

特に子供の頃、戦中、戦後、ひどい目にも遭ったけど、一つ、科学だけでなく、全ての分野が、飛躍的な進歩・発展をした時期に生きたという幸運は確かだと思います。

例えば、コピーなどというものも、ついこの間出現したという感覚があり、恩師が、図書館で、片方に専門書、もう一方に、カードの山を積み上げ、凄まじいスピードで、カードを取って行かれる伝説的な事実など、この間のことか、遥か昔のことか、分からなくなってしまいました。

次は、「ロボコン」こと、ロボット・コンテストです。NHKで、始まった当初から、ファンで、せっせと見ていましたが、中だるみというか、暫く、熱が醒めた時期があります。相変わらず盛んで、裾野が大きく広がったというか、最初は、海外の超有名大学の学生などが参加していたのですが、今や、大学としての有名度は、関係ないようです。
難しいことは分からないのですが、コンピューターの進歩が関係あるのか、ロボットも、当初より、複雑なものになっているように見えました。優勝して、日本代表となったチームが、「ものつくり大学」という、原点回帰の雰囲気を持つ校名の大学というのも、興味深いことです。

そして、海外で、‘ものつくり’そのものに取り組んでいる、若い人達の番組を続けて見ました。
通して見ていないのですが、初めは、イタリアのパルマで、プロシュート、つまり生ハム作りの修行をしている方です。お名前を控えていないので、Tさんとしておきます。Tさんは、動物好きだったので、獣医大学に入ったのですが、専攻の講義に関心が持てず、ある日、食品関係の講義で、試食した、プロシュートの美味しさに魅入られ、遂にイタリア、パルマに行き、徒に日々が過ぎて、焦る毎日だったのが、遂にある製造工場に雇ってもらいます。

生ハムは、かなり前のことになりますが、日本で、輸入の生ハムから、有害細菌が発見されたからだと思いましたが、輸入禁止になり、イメージも落ちて、また人気が出てきたのは、割りに最近だと思います。

わが家は、結構無頓着なので、輸入再開となった時点で、また時々食卓に出していましたが、非常に好きというほどでもありません。ですから、生と言って、どう生なのか、知らなかったわけです。最近、生の豚肉を一年寝かせるという事実だけ知って、エーっと思いました。ですから、Tさんの修行は、最初から、興味深く見ました。

豚の腿を、そのままの形で、まず塩打ち。とにかく、多量の塩を手にいっぱい握っては、少し離れた所から、叩きつける、並みの塩の量ではありません。スゴイ量と言っていいと思います。家族が、こんな沢山の塩、全部吸収されるのだから、(高血圧症の)私は、以後、絶対食べない方がいいと、マジメな顔で言いました。普段はこんな風に気を遣ってくれることなど、マレなのですが、その塩の量には、流石に驚かされました。

一個が20キロ以上と言ったと思います。それを、高い棚に積んで行くのです。それも大変きつい労働です。
名前を忘れましたが、スイスの大きな円盤のような、銀行の担保物件にもなると言われるチーズを思い出しました。

ただ、塩振りだけで、日々が過ぎて行く中、親しくなった仲間が、このままでは、一生、他の仕事を覚えさせてもらえないと、他の場所で、別の工程を指南してくれます。因みにパルマでは、中学を卒業して、徒弟のような形で、修行をし、Tさんのような学歴の持ち主が、生ハム作りを志すなど、考えられないことだそうです。

Tさんも、アピールの必要性を感じ、密かにマスターした、肉切りを、関係者の上級職人の前で披露してみせます。熟成した、大きな丸ごとの、生ハムを、端から端まで、スーッと、薄く、均等に切り、上級職人以上の腕を見せます。

そして、(日本で、工場を起こすか、イタリアにこのまま住むか、迷っているというTさんの言葉から類推して)、生ハム作りの全工程に関われるようになるのですが、惜しむらくは、企業秘密というものの所為でしょう、非常に単純な工程しか紹介されません。
Tさんは、生ハム職人より、獣医さんの風貌で(と書いても、職人の方に失礼にならないと思いますが)、奥様は獣医大学の先輩だそうです。

Tさん達は、パイ状のパンと一緒に生ハムを召し上がっていましたが、日本ではご存知のように、パイナップルなどと出されます。我が家では、貝割れ菜とか、芽ネギ、最近出てきた、ブロッコリーの芽など、そう言った種類の小さい野菜をくるんで頂いたりします。

一度にそんなにたくさん食べられるものではありませんが、手頃な値段のランチで食べられる所として、東急デパート本店のイタリア・レストランがあります。
Bunkamuraの、映画、美術展他を観る時、時間がない時は、レストランと直結している長いエスカレーターを駆け登るようにして、中華ソバとか、日本蕎麦などをかきこみますが、逆に時間がある時、友人と一緒の時など、そこのレストランで、前菜、パスタ、デザート、飲み物とバッチリ揃ったランチ・コースが1500円であり、前菜から、プロシュートが選べます。パイナップル、マンゴーなどの果物の他に、モッツァレラ・チーズなども添えてあって、量も結構タップリあります。100円か200円増しだと思いました。

実はこの後も、インド舞踊に打ち込む女性、パリで、日本風の素材や味も取り入れたケーキで有名になった、パティシェなどの紹介番組もあったのですが、「スペシャル」の分がなくなってしまうので、次の機会に譲り、一つだけ、アメリカの若者の状況を紹介したものを簡単に書きます。高校で、軍からの訓練を受けるコースを取り入れると、かなりな額の補助金が下りるために、受け容れている高校での、訓練風景がまず映し出されます。黒人学生の比率が高い高校が多いようです。

大学進学者は、対象外ですが、高校を出たら、就職と考えている学生には、入隊するように強引な勧誘がなされます。家族の生活を助けようと、或いは、戦闘に関係のない職種を選べば、だいじょうぶかと軽い気持ちで、入隊すると、いきなりイラク行きとなるケースが多いそうです。高校で、少々の訓練を受けただけで、州兵となり、ある日、戦場に放り出されるのです。高校で就職するどの職場より、有利な条件があるのでしょうが、まさかこんなケースにはならないだろうと、簡単に思っていたのが、取り交わした契約をよく読んでみると、何でもありに等しいことが分かるのです。

上記は全て、9月17日、「敬老の日」のNHK衛星放送の再放送番組です。苦労はあると言っても、自分の好きな道を選んだ、或いは、最初から選ばれた秀才であるという日本に比べて、当日最後の番組だった、「米軍過熱する新兵勧誘」に描かれている状況は、格差社会という観点からも、米国には、日本より遥かに厳しい若者事情があるということを示しています。

最後に、NHKスペシャル「にっぽん家族の肖像4 明日へのいのち」について、簡単に紹介、感想を短く書きます。

二組の若いご夫婦、ご家族を紹介しています。仮にXさん、Zさんとお呼びします。
Xさんご夫婦は、奥さんは、阪神・淡路大震災で、ご両親を亡くされ、ご主人は、お父さんが、おそらく過労などで、震災の二日後、突然、亡くなられました。
奥さんを仮にY子さんとお呼びします。Y子さんが、12歳の時、震災が起き、ご両親は、隣りの部屋で亡くなられ、Y子さん姉妹は、助かりますが、ご親族は、ご両親の遺体を姉妹に見せないように気を遣われたということです。

家族四人の写真には、本当に幸せそうなとしか言いようのない、美男美女のご両親と姉妹が写っています。Y子さんは、12歳までのことが殆ど思い出せないそうです。
番組は、Y子さんが、結婚をして、赤ちゃんを身ごもっている場面から始まります。
大震災と、ご両親を喪ったトラウマから逃れられない、「パパとママに会いたい」とパニック状態で叫ぶ、パパとママの所に行きたいとも言う、Y子さんをいつも気遣う、ご主人の優しさに、まず心打たれます。お父さんが亡くなられたので、生活面でも苦労されたと思いますが、忙しい仕事の中、家事を手伝い、おなかの赤ちゃんに話しかけ、全身でY子さんのことを思う姿が画面から伝わります。

勤め先からの帰り道、突然Y子さんからメールが入り、「赤ちゃん、捨てる?」と書かれています。どうして、こんなことを書いて来るの、と、不安を抑えて、しかし、Y子さんが陥っているパニックに冷静に対処するため、落ち着かせることがまず第一と考えているような、言い聞かせるように話しかけます。

Y子さんの、出産が遅れ、手術をすることになります。
無事、女の赤ちゃんが生まれます。しかし、その時、Y子さんの、あの叫び、「パパとママに会いたい」が、手術室の外にも響きます。ご主人だけでなく、見ている者も、言いようのない不安に駆られます。心の奥底からの叫びと聞こえます。根源から揺さぶられる響きです。ご主人も、初めて見る不安の表情になります。

新しい命の誕生が、瞬間的に死んだ父と母を思い出させた、生と死が紙一重という、最も愛する者を突然喪った者でなければ分からない思いというより、感覚がそう叫ばせたのかも知れません。
そして、二ヵ月後、赤ちゃんを抱くY子さんと、穏やかな表情を取り戻したご主人が映し出されます。

Zさんは、お母さんと兄弟を喪い、お父さんと二人きりになってしまいます。お父さんは、その後、酒浸りとなり、ある日Zさんを置いて出て行ってしまいます。
Y子さんと異なり、生き残ったが故に、今までとガラッと変わった人間になってしまい、たった一人の子を、置いて、家出してしまう父。

Zさんは、そんなお父さんを許せません。勝手な言い分かも知れませんが、愛する者を突然に喪うより、愛する者に裏切られ、憎しみの感情を持つ方が、精神的には、ポジティブでいられるように思うのですが。どれ程愛していたかは別として、私も身近な存在に裏切られたことがあります。おそらくブログに書くことはないでしょうけど。

この場合の裏切りというのは、あることについて、とか、精神的に、というようなことではありません。その裏切りによって、生命まで脅かされかねないという種類のものです。

知り合いの引揚げ経験のある人が、親でも信じられないと思ったことがあると、ある経験を語ったことがありますが、そういう種類のものです。

Zさんは、神戸にボランティアに来た今の奥さんと知り合って、結婚し、子供さんもいて、幸せで、安定した家庭を築いています。
奥さんが、大人で、ご主人とお父さんを仲直りさせ、再会させたいと思っています。そんな奥さんに、お父さんから、関西の人には、お馴染みの季節もの、イカナゴ(コウナゴ)のクギ煮が送られて来ます。Zさんも、お父さんに会おうと思うようになるというところで、終わっています。

Xさん夫妻も、Zさん夫妻も、若い方です。戦争のことなど完全に忘れられた時に起きた大災害で、最愛の肉親を亡くされ、その喪失感は、終生忘れられないものでしょう。
戦争の時、どれ程の人が、愛する人を様々な形で喪ったかなどということを語っても、共感は得られないでしょう。
ただ、それほど愛した人が身近にいたということ、比べようがないほど、愛されたということは、間違いなく、幸せの、確実な体験、思い出だと思うのですが。

「敬老の日」にしては、若い人向けの番組が多かった、と言うより、年齢はあまり関係なく、自分なりのスタイルで、淡々と生きている人、急がず、しかし、遠い目標をしっかり見据えて生きている人、困難を、必死にならず、自分達のペースで、徐々に乗り越えようとしている人・・・そういう人達の、生き方の紹介といったら、いいと思います。
ゆったりとした気分になれ、楽しみもし、色々教えていただきました。  《清水町ハナ》

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