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zoom RSS 思い出エッセイ〔463〕映画雑記帳227「【大統領の料理人】感想」

<<   作成日時 : 2013/10/19 11:10   >>

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 【大統領の料理人】(カトリーヌ・フロ、ジャン・ドルメッソン、イポリット・ジラルド、アルチュール・デュポン、ブリス・フルニエ、監督:クリスチャン・ヴァンサン)。見たいけど見に行けないと思っていた映画が、思いがけずいつもの‘近場’にくるとあって、初日に行きました。朝1回だけの上映です。

何と言っても、フランス大統領お墨付きの料理人の料理が色々見られることを楽しみにしていました。それについては、充分満足しました。


すぐにエリゼ宮の調理場が映し出されると思いきや、冒頭の場面は、南極です。
主人公の女性料理人、オルタンス(カトリーヌ・フロ)は、南極フランス基地の料理人として登場します。

南極のシェフが大統領の料理人に抜擢されたのかと思っていたら、過去を思い出す形で、ストーリーは進行します。

オルタンスは、思いがけず、大統領の料理人として、大統領官邸、エリゼ宮に招かれる。
田舎で祖母や母から教わった、素朴な料理を作っているだけと思っているのに、大統領の料理人なんて、と戸惑う。推薦者はミシェル・ロブソンだと言われる。
そんなオルタンスに対して、主厨房の、男性はかりの料理人達は冷淡である。

大統領の好みも分からず、困惑するが、持ち前の腕と根性で、たった一人の助手、ニコラ(アルチュール・デュポン)と共に料理を作り始める。幸い大統領の口に合ったらしく、残さず食べてもらえた。

ある日、オルタンスは、大統領(ジャン・ドルメッソン)と会う機会を得、彼が、自身の出身地や家庭料理を思い起こすと言う理由で、オルタンスを呼んだことを知る。
数分の予定が、30分以上も話し、信頼を得たが、その間、大統領の予定が変わるため何人もがキリキリ舞いをさせられていた。

食材も最高のものを手配し、次々と大統領の好みに合うと思える料理をつくるが、ある日、内輪のパーティー料理の最後の一品が、料理ではない、デザートだ、取り下げろ、と、主厨房の、シェフパティシエが、怒鳴り込んでくる。
チーズを使っているから、と言うことが理由だったと思いますが、使い方や量に拠るのでしょうか。
デザートではない、料理(のシメ)だと言う、オルタンスの主張は退けられる。

大統領の体調の変化を考慮して、動物性脂、ソース他を制限するように指示が出たり、事務方の上司が代わって、オルタンスの特に仕入れの金額が大きい、仕入先の問題等が指摘されるなど、彼女にとって、風向きは必ずしもいいとは言えない。
それでも彼女は、信じる通り、大統領のために料理を作り続ける。

ある夜、オルタンスが調理場にいるところに、大統領が一人でフラリと言う感じで訪れる。
くつろいだ世間話を話すように、大統領職も大変なのだと、話し始める。
オルタンスは、手早く、パンをトーストして、バターを塗り、厚切りのトリュフを敷き詰めて、すすめる。ゆっくりと味わう大統領。
間もなくオルタンスは辞意をかためる。


男性ばかりの調理場に女性一人、それも名前も聞いたことがないのに、大統領の料理人、ともなれば、まずイジメだの意地悪だの無視だの、ツライ目に逢って、と考えますが、事実その通りなのですが、それを全く苦にしない、自分の思い通りのやり方を貫いて、大統領のための料理をつくる、オルタンスは、自分の主張を曲げない、料理については一切妥協しない、強い女性料理人として描かれているところが、この映画の特徴だし、新鮮味ともなっています。

主厨房とは、別の調理場と言うことが有利な?条件ですが、何よりも彼女の料理が最後まで大統領に支持されたことが、彼女の一番の拠り所と描かれていたかと思います。
最初の中は頼りなかった助手のニコラが見る見る腕を上げて、彼女の右腕となることもオルタンスにとって何より心強かったでしょう。

料理映画、と言うジャンルがあるのかどうか、最初に書いたように一番の楽しみは、美味しい料理が、それも美食家の大統領の料理が作られるところを見られることでした。
あわよくば、ウチのご馳走料理のヒントでも、と思ったりもするのですが、今回は到底テが出ないと早々に諦めました。
名前を知らない香草や調味料、食材がポンポン出て来ることもさることながら、食材の選び方も、調理そのものも、動き方も、それから仕入れとか付随してくる手続きなどと言ったものが、全くのプロ中のプロ、素人には無理と思わせられる、それだけ期待以上の見応えがあったとも言えます。

オルタンスを演じた人は、プロの料理人ではないか、でもそれだったら、こんな演技はできない、と迷ったりするほど、達者な演技でした。

途中で、こんなに本格的に調理をしては、お料理に興味がない、特に男性など、途中で飽きてしまうのではとチラと思ったりしたのですが、そこはシッカリ、バリバリのビジネスマンが見てもおそらく何らかのヒントが得られるストーリーに仕上がっています。
それでなくても、主婦がこれは作れない、と諦める料理なら、「食べる人」は逆に関心を持つのではとも思われます。

そして、もう一つ興味を惹かれるのが、オルタンスの強さ、並みでない、したたかさです。
彼女の背景について、祖母や母から田舎料理を習っただけ、という彼女自身の説明しかなく、しかし、推薦者は、かの有名なミシェル・ロブション。
農園を経営している、という、それを身内に任せたらしい、トリュフの栽培もしていると言ったと思います(今は豚や犬に掘らせるだけでなく、栽培も始められているようですが。ちょっと調べてみると、栽培には古い歴史もあり、一旦途絶えたものが近年復活しているようです)、農園経営と共に、小さなレストランをやっていて、それがロブションの目、ではなく口に叶ったのかも知れない。
とにかく、大統領官邸での、オルタンスの、料理だけではない、全ての仕切りが、とても小さなレストランだけをやっていた調理人とは思えません。
仕入れる食材も仕入先も妥協しない。確か姪に任せたと言っていた農園も仕入先の一つということが若干気になりましたけど。

大統領向けのメニューの中でも、これならと思えるのが一つ二つあります。
「サーモンのファルシー」と簡単に名づけられていましたが、大きなロールキャベツのようなもので、さっと茹でたキャベツの葉を広げて、挽き肉ならぬ薄く切った鮭を並べ、またキャベツの葉、鮭、と交互に重ねて行き、それを大きくまとめて、茹でてソースをかける、シンプルなお料理です。半分に切って、切り口を見せていましたが、日本人には、4分の1の方がいいかも知れません。
一夜干しと言う、塩味もごく薄い鮭などどうかしらと思いました。
ソースは、茹で汁を使って、お好みでいいのでは。ホワイトソース系も合うように見えましたが。

ミッテラン大統領がモデルと言われていますが、ミッテランと言うと、固い表情を崩さない、コワモテの感じでしたが、と言って、長年の愛人に子供がいることを隠さなかったり・・・(余計なことでした)。
映画の俳優(作家、哲学者で、この映画のオーディションを受けたそうですが)は、小柄で、優しい感じの、とても政治家には見えない人ですが、確かにミッテランタイプの俳優だと、オルランスのことを理解する、最後のトリュフ・パンを、思いを込めて、口にする場面などシックリこないかも知れません。

とにかくフランスは、大統領から庶民に至るまで、食に大きな関心を持つ国と言うことは確かと言えそうです。
ミッテランの後の大統領で、他国について、こんな不味いものを食べているなんて、(そこの人々が)信頼できない、と言う意味の発言をして、物議をかもしたことがありましたっけ。
年を取ったら、一ヶ月か二ヶ月、パリに滞在して、美術館巡りをして、あのお惣菜店の、テリヌだけでも20とか30種類あるのを、順番に買って、ホテルに持ち帰り、ワインと頂く、そんなことを実現可能なプランと考えていたのに、夢のまた夢になってしまった、やりたいことは、そう思った時に実行する、それが鉄則、と気づいた時は遅い。

脱線してしまいました。
大統領が、一人で、わざわざ、オルタンスのところに来て、大統領職も大変なのだ、と言う場面、一見、ホッとさせる、少々センチメンタルなシーンにも見えますが、実はオルタンスはすぐに悟った、とも考えられます。
強く印象に残る、トリュフ山盛りの、ひと切れのトースト、オルタンスにとって一番の料理、アイデンティティと言ったら、言い過ぎかも知れませんが、彼女の、象徴的な料理と言えるかも知れません。そしてさり気ない売り込みにも思えます。

大統領の料理人を辞めて、次に1年間、南極の料理人になる。
思いがけず?超美味しい料理の毎日ですから、チームの男性達は大喜び、彼女が去る時、盛大な送別会を催し、心から彼女に感謝し、別れがたい思いを爆発させる。オルタンスもそこまで感謝されて、笑顔を絶やさない。

彼女に密着取材を申し込み、適当にあしらわれながらも、南極を去った後も彼女に付いてまわる、オーストラリアの女性記者がいるのですが、大統領の料理人が、どうして南極にと聞かれて、オルタンスがサラッと答えます。
ニュージーランドにトリュフ栽培に適した地を確保した、南極と近いし、それに南極の料理人はいい報酬が得られるから、と。

所謂ネタバレになるかも知れませんが、と言うのは、これが彼女の真骨頂ではないかと考えた場合ですが。そうは思わない方もいると思え、付けたしと言う感じで書いてみました。
オルタンスは優れた料理人であると同時に、実業も重んじる、利を見るに敏い、情に流されることもない、何事も適確に判断する、しかし、与えられた、またしなければならないことは完璧にやってのける、真のプロフェッショナルである、

何だか理屈っぽいことを書いてしまいましたが、料理は勿論、色々な意味で興味深い映画でした。
根っから料理にも、食べることにも関心がないと言う方には少々退屈かも知れません。
それでも采配、仕切り、仕事ぶり、そして意外にも野心的な実業人、として見れば、結構面白いのでは、と私が言っても、説得力がありませんが、見終わってから、色々思い出したり、見たことを発展させて考えたり、まだ書くことがある、そんな風に思うのは、久しぶりです。とりあえず、見て、元気になれました。  《清水町ハナ》

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