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zoom RSS 思い出エッセイ〔458〕映画雑記帳224「【アンコール】感想」

<<   作成日時 : 2013/08/28 07:51   >>

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【アンコール】(テレンス・スタンプ、ヴァネッサ・レッドグレイヴ、ジェマ・アータートン、クリストファー・エクルストン、監督:ポール・アンドリュー・ウィリアムズ)。原題は“Song for Marion”と、邦題とは少々ニュアンスの違いがあります。

見たいと思っている新作映画も、諦めることが多い現状で、所謂大作ものを主に上映する近場の映画館のホームページを何気なく見たら、この【アンコール】が朝1回だけ上映されるとあります。すぐ見に行くことを決めました。
当たり前過ぎる言い方ですけど、見た後、しみじみと、よかったと思いました。

見ている時、すぐ【愛、アムール】を思い出しましたが、病気の妻を抱える、高齢の夫が主人公、外部、他、を排除しようとするタイプ、など、表面的なシチュエイションは似ていても、本質的に異なる、従って夫婦の運命も全く違う方向に行く・・・考えさせられました。


アーサー(テレンス・スタンプ)とマリオン(ヴァネッサ・レッドグレイヴ)は、性格は異なるが、仲がいい夫婦。
マリオンは、車椅子生活だが、積極的に外に出て、友達付き合いをし、今は合唱に参加することを一番の楽しみにしている。
アーサーは、マリオンの送り迎えをするが、仲間には加わらない。
彼にとって、孫娘は本当に可愛い存在だが、忙しい中、手伝ってくれる、息子のジェームズ(クリストファー・エクルストン)ともうまくいっていない。

合唱団は、陽気な明るい、高齢者ばかり。学校の音楽教師、エリザベス(ジェマ・アータートン)が指導しているが、ロックや、若者向けの曲を選び、参加者もそれを歓迎し、ノリノリである。

合唱団は、コンクールのオーディションを受けることになり、急遽、「年金ズ」と言う名前をつける。
そんな時、マリオンは、癌が再発する。それでも彼女は合唱の練習を続ける。
エリザベスは、そんなマリオンのために、ソロのパートを任せる。

マリオンに協力しても、アーサーは、相変わらず「年金ズ」が好きになれない。
マリオンを励ましに来てくれた仲間に罵声を浴びせる始末。

マリオンは、ソロを見事に歌い上げる。
しかし、マリオンの病状は、好転せず、ある朝、アーサーの横で、既にマリオンは息を引き取っていた。
悲しみにくれるアーサー。ジェームズとも一層の距離をとる。

教える立場とは言え、自分よりずっと年上の目上の者に、子供に対するような口の聞き方や態度が目立つエリザベスが、ある日訪ねて来て、合唱団員以外に親しい者もいない、と孤独を訴え、アーサーの気持ちにも少しずつ変化が起きる。
合唱団にも足を運ぶ。

オーディションの日、他の合唱団の力量は、ずっと上に見え、しかもスーツ着用が決められていたのに、「年金ズ」はラフな服装で、失格と言われる。

アーサーが、マリオンの代わりにソロを歌うシーンが近づく。


ザッとしたあら筋を書くと、上記のような、変哲もない文になってしまいます。
しかし、映画は、アーサー、マリオンの人そのものを鮮やかに浮かび上がらせ、それぞれのシーンやセリフも練り上げられ、巧まずしてごく自然な印象として心に残る。

テレンス・スタンプが、気難しい、プライドの高い、他には気を許さず、しかし妻のマリオンのことは本当に心から愛しているアーサーを、肌理細かく、しかし圧倒的に説得力がある、ある種の力を感じさせながら、演じ、夫とは正反対に、人が好きで、合唱に打ち込み、しかし、病気が悪化しても、弱みを見せず、意志を貫く強さもある、そして、一風変わったアーサーを心から愛している、マリオンを、嘗ての、気品のある、美人女優、ヴァネッサ・レッドグレイヴが演じる、品を保ち、優しい、感じのいい、老婦人の姿に、感慨を持ちましたが、この二人が、この映画の主な部分を作り上げている感じがしました。

合唱団員も、それぞれ、個性的で、主張が感じとられ、年をとったら、歌でも歌って、と、駆り出されて、などという、よくある印象を払拭しています。
だから、頑固なアーサーの態度にも、不快感を示すことなく、言わば、彼は彼と認めているのです。

実際、エリザベスの、ただ合唱の指導に留まらない、口うるさく、子供に対するような態度、接し方には、いささか面白くない気分を抱きましたが(自分は実は弱い人間であるという告白の場面があっても)、合唱団員は、それはエリザベスの個性、人柄と思っているのでしょう。

アーサーは、自分はこう生きたい、自分のやり方は変えることはできない、と言う、生来の人間性に従っているので、そのため、息子のジェームズのどこがいけないのか、観客も理解できないのに、自身の態度を変えようとしない、それが表面、少しずつ変わって行くのは、確かに周囲の影響もあるが、実は、この年まで、自分のスタイルを貫き通して来た人間が、そう簡単に変わるとは思えない(私見でもありますが)。

個人的な事情ですが、夫が元気な頃、高齢者と言われる年齢に達した時、ボランティア・グループと思われるところから一通のお誘いが来て(恐らくその年齢に達したら、行政が連絡をして、機械的に送付される「お誘い」のようですが)、ランチを楽しく食べながら、お話しましょう、お悩みのことがあったら、ご相談にのります、というような内容でした。
しかし当時夫はバリバリの?現役で、めずらしく、こっちが相談にのる、などと言っていました。
私も同じ年齢になった時、同じお誘いが来ました。まあ、私一人に来たわけではなし、高齢者にそういう風に声をかけることも大事と思ってみています。
ただ行政の高齢者の現況調査に、判で押したように、人と会って話していますか、とか友人の家を訪問していますか、などと言う質問項目があり(答えがNoだと減点)、高齢者の友人は高齢者が多く、家を訪問するのは、お互いに難しい状況の場合が多い、時々ランチ・デートなどをしていても、それも難しくなる状況が、どちらかに、或いは、両方に生じる、それでもメールや時折の電話で、連絡を取り合っている、それぞれ事情があるのに何故毎年同じ無神経な質問を、と思います。

脱線してしまいました。
アーサーは、真に妻を、マリオンを愛していたが、言わば無骨者の無骨な表現しかできない。いよいよマリオンの病状が悪くなると、「逝かないでくれ」と心の底から懇願する。

しかしマリオンは逝ってしまう。
次第に変わって行くように見えるアーサー。嫌いだった合唱団にも顔を出す。
エリザベスが心の内を明かしたことも彼を動かしたことは確かと思える。
遂にはソロを歌ってみようという気になる。
しかし、マリオンを失って、普通なら和解の方向へ向うと思われるのに、長男には一層心を閉ざす。

「アンコール」と言うタイトルには洒落た響きがあります。観客からアーサーに投げかけられる声とも思われます。
しかし、私には、アーサーが次第に変わり始めたことも、ソロを歌おうという気になったことも、またジェームズへの頑なな思いも融け始めたように見えることも、実はマリオンへの愛情が、今はいないマリオンを更に、少しでも多く、理解しようと思う気持ちがさせることではないかと思えました。
“Song for Marion”、彼は、マリオンのために歌った、マリオン一人に向かって歌ったのですから。(ひと晩経って、マリオンの代わりに、と言う意味もあるから、マリオン一人に向かって歌う、と言うのは訂正した方がいいかしらと思っていますが)  《清水町ハナ》

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